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【やさしいSocial Capital(2)】Social Capitalの定義って?

私の記事は、初めてSocial Capitalという言葉を目にした方やちょっとだけSocial Capitalに関心を持っている方に楽しく読んでいただけることを意識して、できるだけ身近なところのお話を書いていくつもりです。
すでにSocial Capital研究を行っている方には特に目新しいこともないでしょう。ですから、初心者がこんなことを考えているんだな、くらいのゆる~い感じで読んでください。


Social Capitalは身近なもの

Social Capitalは難解な学問分野であると思われがちですが、実際には我々の生活にすでに浸透している、社会の中で普通に存在しているものです。
今までSocial Capitalのことなど微塵も考えたことがなかったという人でも、ちょっと視点を変えてみると、私たちが日ごろから、特に意識して行動することがなかったとしてもSocial Capitalに関わっているのだということがおわかりいただけるようになると思います。Social Capitalを意識するようになれば自分の関わる人や社会との関係をより円滑にすることができるようになるかもしれません。

Social Capitalの定義を考える意義

「Social Capitalという言葉があることはわかっておる。で、それっていったい何なんじゃ?回りくどい説明はいらん。一言で言ってくれたまえ!」とおっしゃる方のために、Social Capitalを、まさに一言で説明できるようになっておきたいものです。そして、一言で説明するためにはSocialCapitalの定義を決めておくことが非常に有効なものとなるでしょう。先に定義を整理した上で、後に具体的な事例などで確認することも意味があることだと思います。
しかし、実際にはSocial Capitalの定義として完全に確立されたものはございません。というのも、Social Capitalは現代社会の移り変わりの中で常に変化をしながら成長を続けている学問であって、世界中にいる大勢の学者の方々がそれぞれの立場で定義しているというのが正直なところです。そこで、過去の文献などで「Social Capitalの定義とはこういうものだ」と書いてくださっている学者の皆様のお言葉の、そのいくつかをピックアップしてご紹介しながら、改めて整理するという流れにしてまいります。
また、英語でも書いていますけれど、日本語のみを読んでいただくだけでもいいのかなとも思います。お気軽に読み進めていただければと思います。

世界の学者さんたちが考えるSocial Capitalの定義いろいろ

私がわかる範囲でご紹介していきます。まずはフランスの社会学者であるブルデュー(Pierre Bourdieu)さんによる定義。おそらく1986年の論文 "The Forms of Capital" (資本の形態)からの一節。
"the aggregate of the actual or potential resources which are linked to possession of a durable network of more or less institutionalized relationships of mutual acquaintance or recognition"
「相互の知り合いと認識の、多かれ少なかれ制度化された関係の永続的なネットワークの所有に関係する、実際のまたは潜在的な資源の集合体」
・・・う~ん、日本語にするとよくわからんぞ。。。

続いては、イギリス・オックスフォード大学の名誉フェローであるナハピエト(Janine Nahapiet)さんとインド出身の経済学者、ゴーシャル(Sumantra Ghoshal)さんによる1998年の共著 "Social Capital, Intellectual Capital, and the Organizational Advantage" (ソーシャル・キャピタル、知的資本、組織優位性)の一節から。
"the sum of the actual and potential resources embedded with, available through, and derived from the network of relationships possessed by an individual or social unit"
「個人または社会単位が持つ関係のネットワークに組み込まれ、ネットワークを通じて利用可能となり、ネットワークから派生する実際の資源と潜在的な資源の合計」
・・・これも日本語にするとなかなか理解できず。かといって、英語だともっと理解できないけど。

さらに、中国出身でアメリカ・デューク大学の社会学者、リン(Nan Lin)さんの定義。2008年の論文 "A Network Theory of Social Capital"から引用。
"resources embedded in one’s social networks, resources that can be accessed or mobilized through ties in the networks"
「自分の社会的ネットワークに埋め込まれた資源、ネットワーク内の繋がりを通じてアクセス(接近・接続)または動員(結集)できる資源」
・・・何となくわかってきたような気がするような、そうでもないような。。。

アメリカの政治学者、パットナム(Robert Putnam)さんの定義。2000年に著した書籍(たぶん"Bowling Alone")からの一節。
"features of social organization—networks, norms and trust—that enable people to act together more effectively to pursue shared objectives"
「共通の目的を追求するために人々がより効果的に協力することを可能にする社会的組織-ネットワーク、規範、信頼-の特徴」
・・・ちょっとわかりやすくなってきたぞ。

日本の経済学者、稲葉陽二さんはSocial Capitalを「心の外部性を伴った社会における信頼・規範・ネットワーク」と定義しているようですね。
「心の外部性」というのは、外側の心、つまり自分以外の人々の心に働きかけるという意味合いであるように思いますが、いかがでしょうね。

ここまで見ていると、ネットワーク(networks)、規範(norms)、信頼(trust)、関係(relationships)、resources(資源)という単語が多く出てきますね。またsocial(社会の)とindividual(個人の)がどのように関係しているかということにも注目する必要がありそうです。

私なりにSocial Capitalの定義を考えてみました。

結局回りくどい話になってしまいましたけれど、私なりにSocial Capitalの定義を考えてみました。
「人間関係、(互いの)信頼、(守るべき)規範、(人や団体の)ネットワークなど、個人や社会が他との関係を構築する上で必要不可欠な資源とその仕組みの総称」というところでしょうかね。資源だけではなく、そのあり方、その仕組みも合わせてSocial Capitalと考えております。

もっとも、前述したように、Social Capitalについてはいろいろな考え方がありますし、私はいろいろな考え方があっても良い、むしろあるべきだと思っております。
たくさんの方々がSocial Capitalに関心を持ち、皆さんがSocial Capitalにつぃいての議論を重ねていただくことによって、Social Capital研究がさらに発展すると嬉しく思います。

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