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縋る

毎度おなじみ、2000文字日記のお時間である。今日はいつもよりも早い時間から書き始めている。別に他意はない。しかしもうパソコンを開いてタイピングすることが前よりも苦ではなくなったようである。日記を書き始めた頃は、毎日書き続けることへの限界を感じていて、後回しにすることが多かった。毎日毎日同じことの繰り返し、いつかどこかで狂ってしまいそうなのが怖くて仕方なかった。しかしそんな感覚も続けていく習慣の中で当たり前のように消えてなくなった。そしてもう淡々と文章を綴ることができるようになってきた。これは一つの成長といえよう。


しかし札幌での新生活が始まって、孤高に生きる存在として早三ヶ月。今日こそは気が狂ったのではないかと思う時が来ていた。昼間、いつものように一人で民泊の清掃をしていると、なんだか妙な気持ちになってきた。コミュニケーションの存在しない世界、自我を保つことでしか自分を確認することのない空間、そこで自分はついに、自分への愛をつかしたのであった。それははっきりと認識できることであった。自分の中に、自己愛というものがごっそり抜け落ちていたのだ。自己愛、というと偉く高尚な言葉であるが、自分を認めるのを辞めてしまった状態といえるだろうか。そんな感覚であった。全くもって自分を認めてやることができなくなっていた。自分の全てが否定に感じる。なんだこれ、それはとても不思議な感覚で、とにかく苦しいものであった。


そして自分はひとりでに焦っていた。このままだと冗談抜きでおかしくなると本能が告げていた。今まで、自分はわりとタフな方だと開き直って、人との馴れ合いを粗末に扱ってきた人間である。しかしここ三ヶ月の間でまともに会話することも極端に減ると、どんなに屈強な生き物でも異常をきたすのは目に見えている。頭痛がした。心臓が激しく稼働しているのがわかった。自分のエネルギーが全く体外に放出されていないのだ。自分が世界に関与している実感を失うだけで、ここまでおかしくなるものだろうか。おかげで仕事の能率は極端に落ち、ぜえぜえはあはあ言いながら仕事をしていた。少しでも気を抜くとぼーっとしてしまう。やばい、とすぐに頭を切り替え、また作業に戻る。その繰り返しだった。もうこれは焦るしかない。


そして自分は、どんなものでもいいから外界との接続しているという実感がなければいけないと判断して、あろうことかマッチングアプリを始めたのだった。仕事中にも関わらず、急な思いつきであった。恋人探しというよりも、命懸けで始めた苦肉の策であった。しかし四の五の言ってられない。自分は大真面目である。恋人が必要かもしれないし、友達が必要かもしれない。普通に誰かに電話なりラインなりすればいいのかもしれない。でも電話して、何を話せというのだろうか。どうやってこの状況を説明すればいいのだろう。自分には勇気が出なかった。情けないやつだ。


ほんとうにおかしくなってしまったのだろうか。今の自分はわりと落ち着いている。気怠い感覚はありつつも、正常である。しかし淋しさもある。徒労感もある。だから何もしたくない。noteを書くのは普通にできそうなので、ただ続けている。


ある意味明日の仕事が怖い。また同じような苦しみが仕事中に襲いかかってくるかもしれない。そう思うと油断ならない。しかし苦肉の策で始めたwithというマッチングアプリをしている時、胸の奥の苦しみが少しだけ消えていくのがわかった。もしかしたら外界への接続を感じたのかもしれない。ただ新しい刺激を得られた喜びなのかもしれないが。


息を吐く。大丈夫だ。歩いていけると思う。とりあえずは、今はちゃんと息をしている。自分のやりたいこととはなんだ。やりたいこと、そんなことを聞かれるだけで吐き気がする。そんな愚問だ。やりたいことはたくさんある。それは誰もが同じことだ。わざわざ自分だけが聞かれる筋合いはない。それでも確認しなければ、今日みたいな現象が再び襲ってくると思う。だからあえて問う。自分んやりたいこととはなんだ。


本を書きたいと思っている。それがあって、一人で生きている。でも一人で生きていると、何もかもが色褪せて、したいこともまるで見えなくなっていく。これほどまでに自分は弱いのかと気付かされる。それでも立ち上がる。それでも頑張ると決めたから。ただそれだけの繰り返し。どれだけ苦しくても、辛くても、自分は立ち上がると思う。変な話だ。
一体なんのための、やりたいことなのだろうか。どうして自分はしたいことを持って生まれ落ちたのだろうか。何も考えずに生きていけたら、どれほど楽だろうか。何も考えないで、何も心配しないで、どこにも行かないで、誰とも話さないで。それで世界が成り立てばいいのに。それだけで自分があればいいのに。もう今更、誰と一緒に生きていくでもない。だから自分は自分のやりたいことに縋るだけだ。

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