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(番外)高校入試確率問題の難易とは

 高校入試の確率問題において、基礎編で扱った問題から難易度を上げる方向性として、主に次の5つを挙げることができます。

 本編で扱っていない私立高校の入試問題をタネに、この5つの方向を探ってみようと思います。

(1)サイコロとか玉とかに仕掛けをする

 一つめは,偶然を発生させる装置そのものの仕掛けを複雑にすることです。偶然を発生させる装置とは「さいころ」や「カード」や「袋や箱の中の玉(カード)」などを指します。さいころの目がノーマルのものではなかったり、重複するカードや玉を入れたり,玉に色と数字の組合せをつけたり、といったことが考えられます。

6つの面に書かれた数が2,3,5,7,11,13である大小2つのさいころを同時に投げたとき,出た目の数の和が素数となる確率を求めなさい。ただし,どの面が出るのも同様に確からしいものとします。(東京電機大学高2019)

 袋Aには1から6までの異なる自然数が書かれたカードが6枚入っている。袋Bには13以下の異なる素数が1つずつ書かれたカードが6枚入っている。この袋A,Bからそれぞれカードを1枚ずつ取り出すとき,次の確率を求めよ。(同志社2017)
(1)2枚のカードに書かれた積が素数である確率
(2)2枚のカードに書かれた和が素数である確率

袋の中に1から3の数字が1つずつ書かれたカードが2枚ずつ合計6枚入っている。この袋から3枚のカードを同時に取り出す。このとき1,2,3のカードが1枚ずつ選ばれる確率は[ア]である。3枚のカードに書かれている数字の合計が異なる確率は[イ]であり、合計が偶数となる確率は[ウ]である。[ア][イ][ウ]に当てはまる値をそれぞれ求めよ。(西大和学園2019)

 1から6までの整数が書かれたカードがそれぞれ1枚ずつある。これら6枚のカードを3枚ずつ2つのグループに分ける。そして、それぞれのグループの中で書かれた数が最大であるカードを1枚ずつ取り出す。このとき、5が書かれたカードが取り出される確率は[ ]、4が書かれたカードが取り出される確率は[ ]である。(灘2020)

 右の図のように7,8,9の書かれた縦長の長方形のカードが1枚ずつ計3枚ある。これらをすべて裏返しにし,よくかきまぜてからカードを選び,長い辺が縦になるように置いてから,カードをおもてにして数字を読む。ただし,数字が上下逆になったとき,7は数字として扱わず,8は8として扱い,9は6として扱うものとする。以下の問いに答えなさい。(慶應義塾女子2018)
(1)カードを1枚だけ選んで,それをおもてにしたとき6である確率と8である確率をそれぞれ求めなさい。
(2)カードを2枚選んで横に並べて,おもてにしたとき2桁の整数が作れる確率を求めなさい。

Microsoft Word - 文書 1

(2)判定条件を難しくする

数字の書かれた4枚のカード1,2,3,4から1枚ずつ引いて,引いた順にカードを並べて3桁の整数をつくる。このとき,4の倍数になる確率を求めよ。(和洋国府台女子2019)

 大小2つのさいころを振り,出た目をそれぞれ$${a}$$,$${b}$$とします。このとき$${11a+8b}$$の値が7の倍数となる確率を求めなさい。(豊島岡女子学園2020)

 列挙しても解けるけれども,ショートカット(別解)があるような問題を出すような学校は、その学校が問いたい「数学センス」みたいなものが見えてくるような気もします。4の倍数ということは十の位・一の位だけ考えればよいですし、$${11a+8b=7(a+b)+4a+b}$$ですから,$${11a+8b}$$の値が7の倍数⇒$${4a+b}$$の値が7の倍数となる場合を考えてもよいわけです(その方が計算は楽です)。

 袋Aには赤球3個,白球2個,袋Bには赤球5個,白球5個が入っている。2つの袋から同時に1個ずつ球を取り出し,袋Aから取り出した球を袋Bに,袋Bから取り出した球を袋Aに入れたとき,もとの状態と変わらない確率を求めよ。(早稲田大学系属早稲田実業学校高等部2018)

 これなんかは読解力・読みかえ力がためされます。よく読めば、つまりは同じ色の玉を取り出す確率、ということなのですけどね。

(3)別の装置を操作(※数学の他領域の知識は不要)

 このnoteでは応用編として分類して扱っているタイプの問題です。さらに、移動(すごろく型・循環型)、裏返す、取り除く、並べ替える,並べる,やりとりする、のように分類してあります。

 表が黒色,裏が白色のカードが6枚ある。はじめに,これらを図のように,表,裏が交互になるように横一列に並べ,次の操作を行う。
   (図)   ■ □ ■ □ ■ □
操作「1個のサイコロを投げて出た目が$${a}$$のとき左から$${a}$$番めのカードを裏返す。」
 この操作を2回くり返すとき、カードの並びが次のようになる確率を求めよ。
(1)両端が黒色となる確率
(2)黒色が3枚、白色が3枚となる確率
(3)2枚以上連続して並ぶ確率。(青雲高校2017)

(4)数学の他分野(他領域)との融合問題

 このnoteでは融合問題編として分類している問題です。中学分野でいうと、数式・純粋な図形分野・図形を使わない関数分野・座標平面上の図形の4つに分類してあります。

 大小2個のさいころを同時に投げる。大きいさいころの目を$${a}$$,小さいさいころの目を$${b}$$として、2次方程式$${x^2-ax+b=0}$$…①をつくる。
(1)2次方程式①が,$${x}$$ = 1を解に持つ確率を求めよ。
(2)2次方程式①の解がすべて整数となる確率を求めよ。(青山学院高等部2018)

大小2個のさいころを同時に投げて、大きいさいころの目を$${x}$$座標,小さいさいころの目を$${y}$$座標として点Pの座標を定めます。点Pが反比例$${y=\dfrac{12}{x}}$$のグラフより下側にあり,比例$${y=\dfrac{1}{3}x}$$のグラフより上側にある確率を求めなさい。(中央大学杉並2017)

大きいサイコロの出た目を$${x}$$座標,小さいサイコロの出た目を$${y}$$座標とし,座標平面上に点Pをとる。この点Pが$${y =\dfrac{6}{x}}$$,$${y = \dfrac{x}{6}}$$,$${y = 6x}$$に囲まれる部分の内部および周上の点となる確率を求めよ。(城北2019)

 2つのさいころA,Bを同時に投げ,出た目の数をそれぞれ$${a,b}$$とする。このとき($${a,b}$$)を座標にもつ点が,原点を中心とする半径6の円の内部にある確率を求めよ。(桐朋2018)

 融合問題編で取り扱うように、もちろん公立入試でも融合問題は出てきます。融合させることにエネルギーをさいている問題を見るとゾクゾクします。

 大小2つのさいころを投げて,出た目をそれぞれ$${a,b}$$とする。$${\sqrt{a^b}}$$が整数となる確率を求めよ。(明治学院高2019)

 36マス全部埋めても解けますが、√の中が平方数、というところに気づくかどうか、たとえば$${b}$$が偶数だけを列挙すればOK、というワナにハマらないかどうか($${4^3}$$や$${4^5}$$も平方数!)。
 しかも全体の時間配分としてはこの問題にはそんなに時間をかけられません。すぐに判断ができるかどうか、というところも試験で点数を取るためのポイントになります(実はゴチャゴチャ場合分けを考えるぐらいなら、36マス計算力でゴリゴリやった方がはやくて正確,という可能性もあります)。

 大小2つのさいころを同時に投げる。大きいさいころの出た目の数を$${a}$$,小さいさいころの出た目の数を$${b}$$とする。十の位の数を$${a}$$,一の位の数を$${b}$$とする2桁の整数を$${n}$$とするとき。$${n = ab+8a+2}$$となる確率は[ ]である。(明治大学付属明治2019)

 これなど、一見単純そうに見えますし、36通り確かめてもいいけれど、実は因数分解を利用すると早い問題。わざわざ$${n}$$とか文字を置いているところが、なかなかその発想にたどり着かないように惑わしている感じです。
 $${n =10a+b}$$だから $${10a+b=ab+8a+2}$$を等式変形して$${ab-2a-b+2=0}$$から$${(a-1)(b-2)=0}$$で、$${a}$$=1または$${b}$$=2ともっていけるかどうか、アンテナにひっかかるかを問う問題でもあります。

(5)高校で習うことを入試で出しちゃう(場合の数の公式を使う、確率の積の法則)

 実はこの問題がいちばん厄介なのです。出題者が認識していないと,余計に辛い。というわけで、別に稿をあらためることにします。

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