見出し画像

奈良県|公立高校入試確率問題2021

 花子さんは,ある博物館で入館料の割引キャンペーンが行われることを知り,花子さんを入れて3人グループで訪れた。
 特別割引の日には,入館する子どもにスクラッチカードが配られ,記念品として「クリアファイル」か「ポストカード」のいずれかが必ずプレゼントされる。次の[   ]内は,スクラッチカードとその説明である。花子さんのグループの子ども3人のうち,少なくとも1人は「クリアファイル」がプレゼントされる確率を求めよ。(改題)

 3つの●には,Aの記号が1つ,Bの記号が2つ隠されています。●を1つだけ削り,Aが出れば「クリアファイル」,Bが出れば「ポストカード」がプレゼントされます。ただし,記号の並び方はカードごとにばらばらです。

樹形図だけど・・・

 偶然は3人が起こします。でも、ちょっとどう図を書けばよいか、迷った人もいるかもしれません。スクラッチをみてしまうと、スクラッチの右側にAがある場合、真ん中にAがある場合、一番右側にAがある場合があって、花子さんと残り2人がどんな順番でひいて、1番目の人にどれを選んで、2番目にどれを選んで,3番目にどれを選んで、・・・と場合を分けるところが多く目についてしまうかもしれません。

 これはスクラッチ、という形に惑わされているところもあります。

 こう考えてみましょう。スクラッチに「A・B1・B2」の3つがそれぞれ1つずつ書いてあってそこから1つ選ぶのは、箱の中にAやB1やB2が入っていて、その箱から1個取り出すのと一緒です。箱の中にAやB1やB2がどのように置かれているかは関係がありません。
 同じように、スクラッチがどのような配置になっているかに関係なく、「Aをひくこと」「B1をひくこと」「B2をひくこと」は同様に確からしいので、玉やカードを箱や袋から取り出すことと同じように考えればよいでしょう。

 順番はどちらにしても「Aをひくこと」「B1をひくこと」「B2をひくこと」は同様に確からしいし、それは1番の人も2番の人も3番の人も同じです。

 混乱していませんか? 結局何が「同様に確からしい」のかがわかれば、樹形図は書けます。グループ3人の名前を、花子さんの他にさくらさんと菊代さんとして、図をかいてみましょう。この3人をこの順番で書きましたが,それぞれのスクラッチの結果は,別の人のスクラッチの結果に全く影響しませんので、スクラッチを削る順番は全く関係ないのです(仲良しグループなら,いっせーの、で同時に削るかも知れませんね)

 そして、「少なくとも1」なので、「じゃない方」を考えてみます。少なくとも1人は「クリアファイル」がプレゼントされるじゃない、のは「3人ともポストカード(Bが出る)」ことを考えればよいのですね。図の×の8通りなので、その確率は$${\dfrac{8}{27}}$$。

 これを1から引くと、求めたい確率が出てきますので、答は$${1-\dfrac{8}{27}=\bm{\dfrac{19}{27}}}$$。

答え

$${\bm{\dfrac{19}{27}}}$$

問題を解いた後で・・・

積の法則を使いたくなる問題

 この問題は、高校まで学習を進めれば、こんな解き方はしないだろうと思います。高校の学習内容のことばを使ってしまうと「独立試行の余事象を使う」典型問題。花子さん・さくらさん・菊代さんがAをひくのがそれぞれ$${\dfrac{1}{3}}$$で、確率の積の法則を使って、答えは$${1-\left( 1-\dfrac{1}{3} \right) ^3}$$で計算させるわけです。
 「同様に確からしい」の束が、たとえばスクラッチのどこにAがあるか、3人グループの順番など、この問題にはいくつも埋め込んであり,丁寧な子ほど、イチイチ確認をしなければならなくなります。出題する方はたぶん呑気に出題してしまったのかも知れません。そして、もしかしたら積の法則を使うんだよ,ぐらいのイメージでこの問題を出題してしまっていたら・・・ということをちょっと心配してしまいますし、出題者の意図はそうでなかったとしても、多くの指導者はその方法で解くんだよ、と指導してしまいそうな問題かな、と思います。
 そういう意味では、中学レベルで出す入試問題としては、あまりこなれていないような気がします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?