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(資料)平成10年 1998年 中学学習指導要領 および解説 確率部分

※3割減、「円周率を3とする」に象徴された「ゆとり教育」の象徴とされる指導要領。中学数学で言えば「二次方程式の解の公式」が高校の数学Ⅰに送られたことも話題に。誰か高名な作家が人生で一度も使わなかったと発言したことから、義務教育から高校数Ⅰに送られたとか。ゆとり世代教員の攻撃にこれが使われるのは的外れだった。この世代にとっては習うのがたかだか1年違うだけで、しかも高学力層むけの参考書や塾では中学生に教えていたり、私立ではどうせ中3に数Ⅰを教えていたわけでしょ。で、確率は中3→中2に下されているのですよ。(余事象は数Ⅰに)

「簡単な場合」とは:::起こり得るすべての場合を樹形図などを利用して簡単に求めることができる程度の事象(内取)
本文中には場合の数を求めるときに「二次元表」の表現も。

C 数量関係
[第2学年]

(2) 具体的な事象についての観察や実験を通して,確率について理解する。
ア 起こり得る場合を順序よく整理することができること。
イ 不確定な事象が起こり得る程度を表す確率の意味を理解し,簡単な場合について確率を求めることができること。

[内容の取扱い]

(5) 内容の「C数量関係」の(2)のイについては,起こり得るすべての場合を樹形図などを利用して簡単に求めることができる程度の事象を取り上げるものとする。
(6) 内容の「C数量関係」の(2)のイについては.確率を余事象の考えによって求めることは取り扱わないものとする。


第2章 目標及び内容
第2節 内容
2 各領域の内容の概観
C数量関係
(1)「数量関係」指導の意義
② 確率について
 自然現象や社会現象に多くある不確定な事象の考察においては,それらの考察の対象となる事象の起こる程度に着目しそれらを確率という形で把握し表現することが有効である。
 確率は,不確定な事象について,事象の起こる程度を0から1までの間の数値で表現し処理しようとするものである。
 中学校では,小学校での資料を分類整理することや百分率の学習をもとにしながら確率的な見方や考え方を養う。
 中学校における確指導の意義については,次の二つの面が考えられる。
・自然現象や社会現象における不確定な事象を考察したり理解したりするためには,確率的な見方や考え方を必要とする場面が多い。
・確率の理解及び確率の学習を通して養われる確率的な見方や考え方は,将来学習する確率・統計分野の数学の内容の理解に重要な役割を果たす基礎的な内容である.
 そこで,中学校においては,次のア,イを目標として指導が行われる。
ア 起こり得る場合を順序良く整理する能力を育てる
 起こり得る場合の数については形式的に求めるのではなく,樹形図を使うことなどによって,落ちゃもれがないように調べられることを理解する。また,それらを用いて能率的に順序よく整理して調べる能力を育てる。
イ 確率の意味を理解し,確第的な見方や考え方の基礎を培う
 具体的な事象についての観察や実験を通して,統計的確率については,多数の試行回数で,ある事象の起こる回数の割合がある安定した値をとる傾向がみられることを理解できるようにする必要がある。
 また,観察や実測の結果から,起こり得るすべての場合についてそれぞれの割合がほは等しく,どの場合に対しても等しい確率を与えてよいをすなわち「同様に確からしい」ということを使って数学的確率の意味を理解する。
 このように事象を大量に観察するときに現れる規則性に気付くようにする学習を通して確率的な見方や考え方の基礎が培われる。

(2)指導内容の概観
② 確率について
_小学校における取扱い_
 小学校では,確率に関係する内容として,資料を分類整理することや確定的な事象の割合を表すものとしての百分率を次のように学習している。
ア 第3学年 ・資料を表やグラフで表したり,よんだりする
イ 第4学年 ・資料を集め,分類整理したり,特徴を調べたりする
         二つの事柄に関して起こる場合
         資料の落ちや重なりについて調べること
ウ 第5学年 ・百分率の意味について理解しそれを用いることができる
       ・資料を分類整理する
_中学校における取扱い_
 中学校では,観察や実験,操作など具体的な活動を通して,起こり得る場合を順序よく整理する能力を育て,確率の基本的な意味を理解する。
 ア 第2学年  ・起こり得る場合を順序よく整理する
         ・確率の意味を理解し,簡単な場合について確率を求める

 従来,起こり得る場合を順序よく整理することは小学校第6学年で,確率は中学校第3学年で学習していたが,今回の改訂では,この起こりうる場合と,確率の基本的な内容が中学校第2学年に移行統合された。
 第2学年では,樹形図などを使うと起こりうる場合を順序よく整理できることを学習する。そして観察,実験,操作など具体的な活動を通して,統計的確率と数学的確率の両者の意味について理解する。
 なお,従前,第2学年で学習していた統計的な内容,第3学年で学習していた標本調査は今回の改訂で高等学校に移行された。また,余事象の確率は高等学校で扱う。

C 数量関係

(2) 具体的な事象についての観察や実験を通して,確率について理解する。
ア 起こり得る場合を順序よく整理することができること。
イ 不確定な事象が起こり得る程度を表す確率の意味を理解し簡単な場合について確率を求めることができること。

[内容の取扱い]

(5) 内容の「C数量関係」の(2)のイについては,起こり得るすべての場合を樹形図などを利用して簡単に求めることができる程度の事象を取り上げるものとする。
(6) 内容の「C数量関係」の(2)のイについては.確率を余事象の考えによって求めることは取り扱わないものとする。

 数は確定した事象を表すのに用いられるだけでなく,さいころの目の出方など不確定な事象の起こる程度を表すこともできることを知ることを通して,確率的な見方や考え方の基礎を培う。なお,小学校及び中学校第1学年では,確率は学習していない。
確率の意味
 
さいころを振った場合,どの目が出るかを予言することはできない。しかし,多数回の試行の結果をそれぞれの目について整理してみると,全体の試行の回数に対するある目の出る回数の割合は,ある安定した値をとるという傾向が見られる。このような「大数の法則」を基にして,事象の起こる程度を表すのに確率が用いられることを理解する。例えば,さいころを振る回数を多くし,1の目が出る場合の数$${r}$$を求めて,$${\dfrac{r}{n}}$$を計算してみる。$${n}$$をしだいに大きくしていくと,それに伴って$${r}$$も大きくなるが,$${\dfrac{r}{n}}$$の値はしだいにある値に近づいていく様子を観察することができる。
 さいころを振ることを多数回行い,全体の試行回数に対する1の目が出る回数の割合が近づく一定の値が,さいころを振って1の目が出る確率である。この場合,正しくできたさいころを正しく振るならば,どの目が出ることも同様に期待されるから,多数回の試行を行えば,それぞれの目の出る回数の割合は,どの目についても$${\dfrac{1}{6}}$$に安定すると考えられる。それによって,さいころを振ってある目が出る確率は$${\dfrac{1}{6}}$$であると考えることができる。
 このように,起こり得るどの場合も同様に期待されるとき,つまり「同様に確からしい」ときには,起こり得る場合の数を数えることによって確率をめることができる。
起こり得る場合の数
 
起こり得る場合の数をもとにして確率を求めるには,同様に確からしいと考えられる起こり得るすべての場合が正しく求められる必要がある。したがって,確率の学習を進めるにあたって,起こり得る場合を順序よく整理し,正しく数え上げることを学ぶ。ただし,その程度については,樹形図や二次元の表などを利用して,起こり得るすべての場合を簡単に求めることができる程度の事象を取り上げることにする。
 例えば,2個の硬貨を投げたときの表・裏の出方のすべての場合が,(表,表)(表,裏)(裏,表)(裏,裏)の4通りであることや,二個のさいころを振ったときの目の出方の場合を調べる程度とする。
簡単な場合について確率を求めること
 確率を求める場合,内容の取扱いに示されているように,樹形図などを利用して,起こり得るすべての場合を簡単に求めることができる程度の事象を扱う。なお,指導の深入りを避ける意味から,余事象の考えによって確率を求めることは取り扱わない。
 簡単な場合の例として,2個の硬貨を投げて2個とも表になる確率について考えてみる。前述のように,2個の硬貨の表・裏の出方のすべての場合は4通りであり,それぞれの場合が起こることは同様に確からしいと考えられる。2個とも表になる場合は,同様に確からしい4通りの場合のうちの一つであるから,その確率は$${\dfrac{1}{4}}$$になる。
 この確率が$${\dfrac{1}{4}}$$というとき,それは,先にも述べたように2個の硬貨を4回投げれば,いつもそのうちの1回は必ず二つとも表が出るという確定的なことを表す数ではないことに注意する必要がある。しかし,硬貨を投げる回数$${n}$$を多くし,2個とも表が出る場合の数$${r}$$を求めて,$${\dfrac{r}{n}}$$を計算し,この$${n}$$を次第に大きくしていくと,それに伴って$${r}$$も大きくなるが,$${\dfrac{r}{n}}$$の値は次第に上で求めた確率に近づいていくことを見いだすことができる。
 このことから,確率を求める方法としては,同様に確からしいということに基づいて求める方法と,多数回の試行によって求める方法とが考えられる。この二つの方法について,後者の方法で求めた確率が前者の方法で求めた確率と比べて差が大きいときには,同様に確からしいとしたことに誤りがあるか,試行の仕方に偏りがあるかのいずれかであることに気付くようにすることも必要である。


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