基礎編5 「サイコロ2回の分母③」(区別のつかない)さいころ2個
問題を解く前に・・・
「大小2つのさいころ」「1つのさいころを2回」に続いて,問題を良く読んでみましょう。単に「2つのさいころ」とあります。
形・大きさ,まったく同じさいころかもしれない。2つのさいころを同時に投げてしまったら、2つのさいころがドッチがドッチだったか、混ざってしまってわからなくなってしまうじゃないか! 今までの問題と考え方が違ってくるの?
・・・と思った人もいるかもしれません。
ご安心を。今までと同じように考えることができます。
ここで、また「太郎君」と「花子さん」に登場してもらいましょう。
偶然を1人1つに分担
2個あるさいころを,1人で両手で同時に投げても,片手ずつにして同時に投げても,偶然の起こり方は変わりませんね。
右手にあったのを太郎さんに渡して,左手にあったのを花子さんに渡して,2人で分担して同時に「せーの」で投げても,さいころが2つ投げられることには,これまでと変わりませんね。
太郎さんと花子さんにソーシャルディスタンスを取ってもらって,2つのさいころが混ざらないようにしたら・・・? 2つのさいころはちゃんと区別がつきます。
このような操作はもちろん問題文には書いていません。問題を解こうとする人が頭の中で読みかえて,「太郎さん」「花子さん」を頭の中で登場させて考える必要があります。
そして,そのおかげでめでたく,「(区別のつく)大小2つのさいころ」の問題と「(区別のつかない)2つのさいころ」は、おんなじ解き方で考えることができるのです。
分母は・・・
「右手・太郎さんのふる方のさいころ」「左手・花子さんのふる方のさいころ」の偶然2つ→表で考える
表はもう大丈夫かな? 次のようになります。
やっぱり6×6=36
分子は・・・
「同じ目が出る場合」を表の中に印をつけましょう。下の表のように6つ。
答えは・・・
6/36 = 1/6
問題を解いた後に・・・
入試問題では大小2つのさいころとか赤白2つのさいころと、問題で用意するさいころをあらかじめ区別できるようにしてある問題を出すところと、単に2つのさいころとしてしか書いていないところがあります。
しかし、上のように考えると「さいころによって偶然が2つ起こる」と言うことは全く変わらないので、解き方は全く同じです。
それでも高校入試では、見た目に区別のある「大小2つのさいころ」とか「赤と白の2つのさいころ」という問題を出すところが多数派です。
これは「2つのさいころ」といったときに,上に書いた【2つのさいころを区別する】という作業がもうひとつ必要になります。
見た目に区別のある「大小2つのさいころ」とか「赤と白の2つのさいころ」という問題は、出題者の配慮として、問題文の中でつまづくところはちょっとは軽減してあげようと考えたのかもしれません。そのおかげで,さいころは最初からだれがどうやってどういうタイミングでふっても区別がつくようにしてあるわけです。
逆に、区別のつかない「2つのさいころ」という問題が出されたときに,ちゃんと【2つのさいころを区別する】ことができているのか?ということが試されている問題でもある、というわけです。
教科書には「コイン2つを同時に投げるとき、1枚は表で1枚は裏となる確率」の問題がどれにも載っていて、2つのコインを区別して考える、という考え方をしなさい、となっています。
でも、「どうして区別するの?」「どうやって区別するの?」と、私が満足できる形で説明したものがありません。特にさいころのときには、そうした説明をしているのはどこにもなかったので、ここではあえて一つ一つ詳しく、詳しすぎるぐらいにくどくどと説明してみました。
まとめ?
複数の偶然で構成されるとき、確率を計算するためには「同様に確からしい」すべての場合をならべて、ひとつひとつの「くじ」に置き換えます。
そしてこのように同様に確からしいすべての場合を並べるとき、中学の領域では「表や図をつかって」ということになっています。
図や表を作るために、まずは複数の偶然を区別・分解して考える必要があります。
見た目に同じ偶然が起こっても、工夫をすると「違う偶然」とカウントできるものは、違う偶然として処理をしないと、「同様に確からしい」場合とはならないからです。
どうして区別するの?ではなく、区別できるからp=a/nで確率が計算できる! というわけです。p=a/nの公式は、「神のくじ」が手に入ったので、それで確率を計算をするということになります。
このとき、区別・分解する方法として、
偶然を1人1つに分担
という「擬人化」の発想法を身につけるといいのでは、と思います。(もちろん難関校受験や、高校での学習で計算・公式を使うときも、偶然を区別・分割する必要がありますので、後々まで使える発想法でもあります)
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