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CINEMORE magazine|『トランスフォーマー/ONE』 ジョシュ・クーリー監督【Director’s Interview】

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今回は、人気シリーズの新機軸として全編リアルCGで作られた『トランスフォーマー/ONE』の監督、ジョシュ・クーリー氏に単独インタビューを行いました。


1980年代、変形ロボットのおもちゃから、アニメ、コミックなどで人気が拡大していった「トランスフォーマー」。2007年にはスティーヴン・スピルバーグらが製作総指揮を務め、マイケル・ベイ監督による実写映画が誕生した。『バンブルビー』(18)も含めると、2023年の『トランスフォーマー/ビースト覚醒』まで計7本が製作された。その人気シリーズの新機軸として、全編リアルCGで作られたのが『トランスフォーマー/ONE』。これまでの実写作品では、トランスフォーマーと地球の人間たちのドラマが描かれてきたが、この新作はトランスフォーマーたちの故郷サイバトロン星で、おなじみのキャラクターの“若き日”が描かれる。

監督を任されたのは、ジョシュ・クーリー。これまではピクサーに所属し、『インサイド・ヘッド』(15)で脚本、『トイ・ストーリー4』(19)では監督を務めた。ピクサーを代表するクリエイターとなったクーリーが、新たな活躍の場を求めて「トランスフォーマー」の世界に加わったのだ。どのような思いで、オファーを受けたのか。そして『トランスフォーマー/ONE』で、どんな世界観を描きたかったのか。ジョシュ・クーリーに単独インタビューを行った。

ピクサーの外の世界を見てみたいという野心


Q:ピクサーに在籍していた時に、この『トランスフォーマー/ONE』への誘いがあったのですね?

クーリー:そうなんです。私は約20年間、ピクサーでさまざまな作品に関わってきました。『トイ・ストーリー4』で監督を務めた時は、ピクサーがそのテクノロジーを開発し続けた3Dアニメーションで、自分の力を発揮できることに大きな喜びを感じていました。そして今回の話をもらったのです。

Q:オファーを受ければ、ピクサーを離れることになるわけで、そこは迷いはなかったのですか?

クーリー:『トイ・ストーリー4』の成功によって、私にはさらに野心が芽生えていた気がします。もっと外の世界に目を向けて、他に何ができるのかという感覚があったのは事実ですね。そんな私の次のステップとして、『トランスフォーマー』の新作での監督は完璧なチャンスだったと思います。

Q:オファーの際に、すでに基本設定は出来上がっていたんですね?

クーリー:最初に脚本を受け取りました。でもその段階では、本当に映画が製作されるかどうか決まっていなかったんです。実際に読む前は、「これまでトランスフォーマーはいくつも映画が作られてきた。今回はどう違うんだろう?」と、やや半信半疑ではありました(笑)。

『トランスフォーマー/ONE』Ⓒ2024 PARAMOUNT ANIMATION. A DIVISION OF PARAMOUNT PICTURES HASBRO. TRANSFORMERS AND ALL RELATED CHARACTERS ARE TRADEMARKS OF HASBRO. Ⓒ2024 HASBRO


Q:実際に読んでみて、その考えは変わりましたか?

クーリー:オリジナルのストーリーだったので驚きました。トランスフォーマーの故郷の星が舞台になっていて、人間は一切登場しません。これまでトランスフォーマーに親しんだ人にとって、おなじみのキャラクター同士の関係が書かれており、「まったく違う映画になる」と興奮したのを覚えています。私自身、観てみたい物語でしたし、ぜひ自分で作らなければならないという使命感も生まれました。その瞬間、スタジオ側が私に声をかけてくれたことに感謝しましたね。

Q:そもそもトランスフォーマーの世界に興味はあったのですか?

クーリー:1980年代の子供の頃から、アニメーション作品を観て夢中になっていました。もちろん実写のシリーズもリアルタイムで鑑賞し、彼らの世界を自分で拡張できることに興奮が高まったわけです。これまでスクリーンで届けられなかったキャラクターの新たな側面を表現できるわけですから。

『十戒』や『ベン・ハー』を意識したドラマ作り


Q:人間に比べると、トランスフォーマーの歴史はいくらでも拡張できそうですよね。

クーリー:彼らは何百万年も生きることだって可能です。ゆっくりとした時間の流れなので、いろいろ描けますよね(笑)。

Q:あなたがプロジェクトに入って、ストーリーや作品のムードが変わったりしたのでしょうか。

クーリー:最初に読んだ脚本はややコメディ調で、多少の違和感もありました。ただ、オプティマスプライムとメガトロンが固い友情で結ばれ、最終的に別々の道を進んで私たちの知っているキャラクターになるという、はっきりしたアーク(成長曲線)は存在していたのです。その部分を遵守すれば、力強い物語が完成できるという自信がありました。そこで『十戒』(56)や『ベン・ハー』(59)といった古典的名作から、『X-メン』(00)のようなヒーロー映画まで、同じアークに則ったものを参考にしたのです。結果的に彼らの強い関係性が、ストーリー構築のうえで大きな役割を果たしました。

『トランスフォーマー/ONE』Ⓒ2024 PARAMOUNT ANIMATION. A DIVISION OF PARAMOUNT PICTURES HASBRO. TRANSFORMERS AND ALL RELATED CHARACTERS ARE TRADEMARKS OF HASBRO. Ⓒ2024 HASBRO

Q:『X-メン』は何となくわかりますが、『十戒』や『ベン・ハー』というのは意外ですね。

クーリー:壮大な叙事詩を描く意識がありました。トランスフォーマーたちは現実には存在しない、伝説的なキャラクターであり、地球に来た時もどこか神のような存在感を放っています。ですから私は彼らの“大きさ”を頭に入れながら、地球とは何もかもサイズの異なる惑星の風景を表現しようとしました。その“感覚”だけでも映像で伝えられたらと……。スケール感という意味では『アラビアのロレンス』(62)や、(何度か映画化されたフランク・ハンバートの)「デューン」の世界に近づけたかったのです。

Q:そのような世界観に従って、監督として脚本を修正していったのですね。

クーリー:監督の立場から脚本を積極的に変更していく姿勢は、これまでのアニメーション作品でも意識してきたことです。単に脚本どおりの作品を目指すのではなく、つねに冷静に俯瞰し、どうすればもっとうまくいくかを考え、時には不要なパートを削るなどして脚本を書き直すわけです。これは多くの監督がやっていること。今回、このプロセスで留意したのは、いかにしてトランスフォーマー作品らしく仕上げるか。ですから脚本を手直しするのは、子供時代にアニメを観て、おもちゃで遊んだ感覚と似ていました。


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▶︎オプティマスの声も思い切って変更


監督:ジョシュ・クーリー

映画監督、脚本家、声優として活躍するクリエイター。2015年のピクサー製作のアニメ映画『インサイド・ヘッド』の脚本を担当し、アカデミー賞の脚本賞にノミネートされる。2020年には、初の長編監督作品となる『トイ・ストーリー4』でアカデミー賞の長編アニメーション賞を受賞。


『トランスフォーマー/ONE』

9月20日(金) 日米同時公開
配給:東和ピクチャーズ オンライン
Ⓒ2024 PARAMOUNT ANIMATION. A DIVISION OF PARAMOUNT PICTURES HASBRO. TRANSFORMERS AND ALL RELATED CHARACTERS ARE TRADEMARKS OF HASBRO. Ⓒ2024 HASBRO

取材・文:斉藤博昭
1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。クリティックス・チョイス・アワードに投票する同協会(CCA)会員。


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