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きみの眼鏡

やあ。
僕はきみのメガネ。

きみは「メガネ」をかけてるかい?
えっ、かけてないって?
裸眼だって?

ちっちっち。

ちがうんだな、それが。

きみは知らないうちにかけている。

透明のメガネを。
サングラスを。
色眼鏡を。

えっ、「なんのために」?

目の前見やすいじゃん。
手元が見やすいじゃん。
太陽って眩しいじゃん。

……。

あーーっと、待ったまった!
ちょっと待って!止まって!

そんなに引っ張らないでよ!
痛いって!痛いってば!そんなことしたってハズレないよぉ!
無理やり外そうとするの、禁止ーっ!

……。

ふふふ……。

それにさあ、いいの?
僕を外しちゃって。

そんなことしたって、引っ張られた耳が痛いだけだよ……?
そんなことしたって、霞んで疲れて眼が痛いだけだよ……?
そんなことしたって、波に襲われて頭が痛いだけだよ……?

いいのかい、ほんとうに。
それはきみの選択?
本当に。

……。

そう。わかったよ。
じゃあね。ハズレてみるかな。
眼鏡オフ!

ぱりーん!


……。

どうだい?
世界の様子は。
痛くない?

耳も?眼も?頭も?

そう?
なら、よかったね。

でも本当に、きみは世界が見えてるんだろうか?
あっ、ほら!手元が危ないよ!
足もとすくわれちゃうよっ!
遠くのものは見えてる?
きみの眼の前、ぼ~んやりしてるんじゃないかい?

言ったじゃないか。
痛くなるって。

心が痛くなるだけだって、ね。

だってさ。
僕には「度」が入っているんだもん。
きみの度は強め。あなたは弱め。
僕の姿はちょっぴりオチャメ!

そう。だから言ったんだよ。
無理やり外そうとしたって、ハズレないって。
どう?僕が言ったことアタリだったでしょ?

ふっふっふ。

それにね、
あとひとつだけ言わせて。

僕はきみの眼の前にいる「鏡」だったんだよ。


(おわり)



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