【「A24」創業者紹介③】コンサルを辞めて映画業界の伝説的傭兵に転身「ジョン・ホッジス」
インディペンデント系映画スタジオ・A24の創業者の紹介シリーズですが、今回で最後になります。
最後に紹介するのがジョン・ホッジス。後述しますが、彼は既にA24を去っており新しい挑戦をしています。
彼のA24創業にいたるまでのキャリアと、A24を辞めた後の現在について紹介します。
▼これまでの創業者紹介記事はこちらから
【「A24」創業者紹介①】才能を見つけ出す天才「ダニエル・カッツ」|村田泰祐 (note.com)
【「A24」創業者紹介②】熟練マーケター!"独立系映画業界の王"の弟子「デヴィッド・フェンケル」|村田泰祐 (note.com)
ジョン・ホッジスのプロフィール
ジョン・ホッジスは1996年に、ワシントンD.Cにある私立名門大学のジョージタウン大学に入学します。ジョージタウン大学は 政治や国際関係などの学問では世界最高峰の大学。
ホッジスは政治の名門大学でアメリカ政府と政治の学問を勉強、American Government & Politics(United States)の学位を取得、2000年に卒業します。
大学卒業後、彼は政府コンサルティング会社のブーズ・アレン・ハミルトンに入社します。コンサルタントとして働いたようですが、わずか1年で辞めてしまいます。
一見すると名門大学で政治の勉強をしてコンサルティング会社に入社というエリート街道なキャリアに見えますが、ホッジス自身の中では何か違ったのかもしれません。
次に彼が入社したのがUSA Films(現・フォーカス・フィーチャーズ)という映画製作・配給会社。現在はユニバーサル・ピクチャーズ傘下になっています。フォーカス・フィーチャーズは「戦場のピアニスト」や最近だと「TAR/ター」などの作品を手掛けています。
アシスタントして2年、作品獲得のマネージャーとして3年、合計5年間フォーカス・フィーチャーズでキャリアを積みます。最終的には作品獲得のエグゼクティブまで登りつめたみたいで、フォーカス・フィーチャーズを足掛かりに彼は映画業界へと入り、実力をつけたのです。
彼はインタビューでUSA Filmsは、かつてのミラマックス(1993年にディズニーが買収)、フォックス・サーチライト(2019年にこちらもディズニーに買収される)と並んで観客の心を掴む作品を作れたスタジオだったと懐古しています。
A24はニューヨークに拠点を置く会社で、創業者の3人も東海岸でキャリアを積んできました。ただ、ホッジスはフォーカス・フィーチャーズを辞めて、Michaels-Goldwyn(マイケルズ・ゴールドウェイン)というロサンゼルスに拠点を置く会社で2年間働いています。
Lorne MichaelsとJohn Goldwynの2人が立ち上げた会社なので、社名も分かりやすくマイケルズ・ゴールドウェインです(笑)。その時のポジションは、制作・開発のエグゼクティブでした。
その後、また東海岸に戻ってきてBig Beach(ビッグビーチ)というインディペンデント系制作会社に入社します。ビッグビーチは「リトル・ミス・サンシャイン」という第79回アカデミー賞で4部門ノミネートされたコメディ映画がよく知られています。
ホッジスは、マイケルズ・ゴールドウェインと同じくビッグビーチでも制作・開発部長を務めていました。日本では「アントマン」のスコット・ラング役で知られるポール・ラッドが主演の「我が家のおバカで愛しいアニキ」、「彼女はパートタイムトラベラー」といったコメディ映画の製作総指揮をしていました。
さて、ここまで読んで頂くと分かるのですがホッジスはジョブホッパーです(笑)簡単に下記のようにキャリアをまとめてみました。大学卒業後の12年間で4社を渡り歩いています。
そんな様々会社を渡り歩いてきたホッジスがビッグビーチの次に選んだのが映画スタジオ・A24の創業でした。これまで紹介したダニエル・カッツ、デヴィッド・フェンケルはシンクフィルムという会社で共に幹部で接点がありました。ただ、ホッジスはシンクフィルム出身者ではなく、カッツとフェンケルとどのようにして出会ったかまではネットの情報からでは分かりませんでした。
ただ、独立系スタジオで経験してきたという点は3人の共通項で、才能を見つけ出し投資家経験もあるカッツ、熟練マーケターのフェンケル、コンサルから映画製作総指揮のプロデューサーに転身したホッジスの強力なトロイカ体制でA24は業界を変えていくのです。
ホッジスはA24のパートナーとして70本以上の作品の買収や配給を行い、2015年にA24のTV部門を立ち上げます。ホッジスはA24のパートナーであるラヴィ・ナンダン(A24創業)と共同でTV部門の責任者を務めることになりました。
ホッジスはTV部門の立ち上げ時にこう述べています。
そして、テレビ部門をけん引してきたホッジスは「将来の機会に集中する」として、2018年3月にA24を去ることになります。
ホッジスはこんな声明を発表してA24を去ります。A24もホッジスの貢献は多大なもので、次の挑戦が楽しみだとして送り出します。ある記者はA24配給の「ムーンライト」が第89回アカデミー賞で作品賞を受賞したことで、ホッジスは次のステップに進むのだと述べています。
A24で6年と2か月働いたホッジスですが、少し休んだ後新しい挑戦を始めます。Netflixで配信され話題となった「エミリー・イン・パリ」などを手掛けるJax Media(ジャックス・メディア)の映画部門の責任者になります。
ホッジスはジャックス・メディアの映画部門を立ち上げることになり、なおかつ関わる全ての映画プロジェクトを監督する責任者でもあります。これまえの映画業界の経験、A24でのテレビ部門立ち上げの経験が買われたものだと思います。
さらに、ジャックス・メディアが台本あり、台本なしのテレビ番組やスタンドアップコメディの特別番組も製作できるよう事業拡大のミッションも担当することになるのです。
ジャックス・メディア参画の際にこのようにインタビューに答えたホッジス。彼はどのくらいジャックス・メディアで働くのでしょうか?
さて、ホッジスの大学卒業から現在までの経歴がこちらです。
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コンサルを1年で辞めて映画業界に転職、1社目でエグゼクティブまで昇進して2回転職をして起業。ビジネスマンとしてとても優秀で、起業しても実績を出し、またエグゼクティブとして雇われるというかなり面白い経歴ですね。まさに映画業界を渡り歩く傭兵ビジネスマンです。
今回でA24の創業者紹介は終了です。後日、加筆と編集をして3人の経歴を1記事まとめたものを出す予定です。ここまでお付き合い頂き有難うございました。
全記事は読めるのですが、note有料版の設定にしています。もし本記事が面白ければ支援のほどよろしくお願いいたします!
参考文献・参考記事
A24 OPENS DOORS FOR FILM DISTRIBUTION, FINANCE AND PRODUCTION « Movie City News (archive.org)
Studio A24 Is the Big Oscars Winner, Renewing Hope for Small Films | Observer
(25) 職歴 | John Hodges | LinkedIn
How A24 is Disrupting Hollywood | GQ
A24 Founding Partner John Hodges to Exit – The Hollywood Reporter
A24 Co-Founder John Hodges Exits - Variety
Jax Media Taps John Hodges to Launch Film Unit – The Hollywood Reporter
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