見出し画像

ダイアリー22/11/20 キンキーブーツの大千穐楽

キンキーブーツ2022年公演。3度目となる日本キャストの公演が、本日昼公演で幕を下ろしました。書きたいことは山ほどあり、ちゃんとしたレポは改めて書きたいのですが、ひとまず忘れないうちに少しだけ。

大千穐楽

大阪千穐楽、そして大千穐楽ということで、初日よりもめちゃくちゃパワーアップしていました。客席の拍手はいつもに増して大きいし、心なしか、キャストの皆さんの声も大きかったり、アレンジが強かったりした気がします。初日には拍手が沸いていなかったようなところでも拍手が。ステージからも客席からも「熱」を感じて、これぞ大千穐楽。

ミュージカルに来る理由は人それぞれ。出演している俳優が好き、作品が好き、ミュージカル自体が好き。その中でもこのキンキーブーツという作品は、最初の動機・きっかけはどうであれ、作品を愛してやまない人が多い気がする。もちろん僕も、その一人。

3年前の2019年、大千穐楽も大阪、そしてオリックス劇場だった。奇しくも、今日もその日も、3階席の真ん中だった。3年前に見えた景色がフラッシュバックするようで、幕が開いて、プライス&サンの社歌が流れた瞬間涙が溢れてしまった。あの日、キンキーブーツを観ていなければ、僕がこれほどミュージカルに傾倒することもなかった。この作品は、僕の人生を彩り豊かにしてくれた。

3年前の光景も、今日のこの光景も、僕は二度と忘れない。

カーテンコール挨拶

拍手やまないフィナーレからのカーテンコール。今日出番のなかったスウィングキャストや子役、そしてエンジェルス兼スウィングのエニシングちゃん(シュート・チェンさん)のお姿も。

大千秋楽ということで、メインキャストからご挨拶がありました。涙腺崩壊していたため、一言一句は記憶できていませんがあしからず…。

ひのあらたさん(ジョージ)

コロナ禍ということで、一回一回の公演を無事にできることが奇跡。奇跡の連続。観に来てくれたすべての方に感謝。初演からジョージという役をやってきた。ジョージは伝統ある靴工場を残すために奮闘する役。それはこの作品自体も同じで、キンキーブーツという作品を、これからも長く愛され、残り続けるものにして行けたらと思っている。

勝矢さん(ドン)

本当はおしゃべりは後だ!と言いたいところだが…(開演前のドンによる注意事項のお知らせのオマージュ)。観に来てくれて感謝。
この公演は、この作品は、一人ひとりが思いを抱えて臨んでいる。本当はエンジェルス、工場のメンバーたちもそれぞれに思いがあって、話したいこともあるはずだが、
それを代表しての挨拶。色々あった。バカヤロー(三浦春馬)は死んじゃうし。まとまらないので、とりあえず。

(大声で)春馬!見てたか!!優のローラ最高だっただろう!!最高の舞台だっただろう!!

(しんみりしちゃあいかんから)最後に写真を撮ろう!(これも冒頭の注意喚起のオマージュ)。

玉置成実さん(ニコラ)

(ドンの後で)めちゃくちゃやりにくい笑。本当に来てくれて感謝。私をはじめとした初演からのメンバーも、今回からのメンバーも、今までのメンバーも、そしてお客様も、みんなが大事なキンキーファミリー。まだまだつらいことが続く世の中ですが、自分もキンキーファミリーの一員なんだということを思い出して、6ステップを思い出して、ポジティブに進んでいけたら。

ソニンさん(ローレン)

(声を詰まらせながら)本当にありがとう。今日まで1日たりとも、春馬の存在を感じずにいたことはない。この再々演が決まり、ローレン役をいただけると聞いたとき、本当に悩み、迷った。それでも(城田)優がローラをやってくれて、またキンキーブーツを動かすことができた。私よりも、色んなものを背負って、やり遂げてくれた。徹平も座長として、最後までカンパニーを導いてくれた。次にこの作品をやるときには、客席も含めてもっとキャーキャー入れる世界になっていたらと思う。

城田優さん(ローラ)

まずは、(この自分を)ありのままに受け入れてくれてありがとう。一人も欠けることなく、完走することができたのは、春馬が守ってくれていたのではないかと思わずにいられない。

個人的な話になるが、オーディションの話をいただき、(小池)徹平にも「優しかいない」と言われ、春馬が愛した作品とこの役を演じれて幸せ。2019年にこの作品を見て、自分もできたらと思っていたと同時に、春馬の凄さに圧倒された。この作品を受け継ぐにあたって、できることはすべてやってきた。春馬のカリスマ性あるローラには遠く及ばないが、春馬と同じ景色を見ることができた。キャスト、スタッフ、オーケストラ、そしてお客様のおかげ(スタッフやキャストに深々とお辞儀)。

小池徹平さん(チャーリー)

大千秋楽です!本当にありがとう。(もらい泣きを)もらっちゃうんじゃん。まずはとにかく、優のこの素晴らしいローラに感謝を。再々演が決まった時、彼とは20年来の付き合いだが、優しかいないと思った。今回の公演は、色々な意味で難しい公演(春馬さんの急死など)。その中でキンキーブーツという作品を受け継いでいくために、この大役をこんなに立派に務め上げてくれた。春馬、優と二人の素晴らしいローラの相手役を務めることができて、こんな幸せなことはない。これからもキンキーブーツは受け継いでいきたい。その時は今日ここに居るメンバーが全員揃うことはおそらくないけれど、そして自分も客席で見ているかもしれないけど、この素晴らしい作品がこれからもずっと愛されるように。

ラスト

退場際、並んでた順番上カイル(風間由次郎さん)が最後になってしまって、「最後が私でごめんね!」みたいな感じで掃けていかれました。かわいい。

そして全員が掃けた後も鳴りやまぬ拍手。ローラとチャーリーの二人が出て来てくれました。優ローラから投げキッスマシンガン。初日よりも数も勢いも増し増し。そしてそのうちの一つは、雲の上にいるであろう、三浦春馬へ。最後の一発は、もちろん相方のチャーリーへ投げ、チャーリーが会場へお返し。

手を振りながら退場する二人。最後の最後に、完全に退場しようとする徹平くんを優くんが引き留めて舞台に戻します。「まだよ!」って感じ。そして、名残惜しくも本当に最後に、舞台袖から優ローラが一言。

「みんな、なりたい自分になってね」

本当にこれで、2022年キンキーブーツはフィナーレ。
こんなにカテコで泣いたことはない。こんなに嗚咽しながら話すソニン様を見たことはない。

何度も何度も深くお辞儀をする城田優さんが印象的。あの、大きいのに小さい、すべてを背負った背中はこれから忘れることはない。

「ありのままを受け入れる」

この作品のテーマの一つに「他人をありのまま受け入れる」ということがあります。劇中でローラを認めることができないドンに対し、ローラが提示する言葉です。そして本作は、ローラがドラァグクイーンであることからも、LGBTQや多様性、インクルージョンという言葉を用いて評されることが多い。

これを非難するつもりはないのですが、そして語弊があるかもしれませんが、僕はこの作品を語るにおいて、「多様性」という言葉で片付けて、「理解」した気になりたくないのです。

人は言葉をつくることで、分類をすることで理解を得ます。そして時に言葉によって、分類によって安心を得ることもあります。例えとして適切かわかりませんが、LGBTQという言葉。これも自らをカテゴライズすることで安心を、自信(ひいては希望)を得る人もいれば、カテゴライズされることでかえって生きづらさを感じる人もいる。そんな風に思います。

だからこそ「ありのままを受け入れる」。「違いを理解し、ありのままを理解し、他人を理解しよう!」ではないのです。ただそこに在るがままを、理解でも共感でもなく、「受け入れる」。この微妙なニュアンスを見事に表現した言葉こそが、この言葉だと思うのです。

劇中で責任とプレッシャーから孤独で独善的な道を進んでしまうチャーリー。そのチャーリーを「受け入れた」のはドンでした。ドンは多くを語りません。「お前の気持ち、わかるよ」とも、「トップがそんな態度でどうする」とも言いません。ただ、そのような状況のチャーリーを、そのように受け入れた。

自分が理解できないことは「怖い」。知らない世界に飛び込むことは「怖い」。時に恐怖は人への刃となり、自分自身にも向けられる。そこを一歩踏み込んで越えるために必要なのが、「ありのままを受け入れる」ことなのではないでしょうか。

そしてそれは他人だけではなく、自分自身のありのままを受け入れることも同じ。ただ、なりたい自分になる。そのためにはあるがままの自分をまず、受け入れること。現実を、弱さを、醜さを、違いを認めることは怖いこと。その恐怖に挑み、なりたい自分になろうとする姿は、世界で一番素敵なもので、美しい。

挨拶で城田優さんが「自分を受け入れてくれてありがとう」という言葉には、ローラを演じるにあたってのすべてが詰まっています。「受け入れてくれない」ばかりか、心無い言葉を浴びせる人もいた。ローラを演じた本人が一番、この言葉を大切に想ってくれているのは、もう言葉にならない感謝と感激しかない。

JAPAN GETS KINKY FOREVER

感想はまだまだ語り足りないですが、とにかく今日言いたいのは、

この作品を受け継いでくれてありがとう。

この一言に尽きます。

今回の公演が無事に実現しなければ、本当に二度と、この作品を上演することは叶わないことになってしまう、それがありえたから。

16年の初演、19年の再演も、それぞれで永遠であり、春馬ローラも永遠。それと同じく、今回の再々演も、優ローラも、永遠。そこに優劣や貴賤はない。キンキーブーツという作品が永遠だから。3回目の公演が実現したことによって、この作品が永遠に愛され続けることは確定したようなもの。少なくとも、僕は死ぬまで愛し続ける。いや、死んでも、かな。

この公演を実現してくれたすべての人に感謝を。そして、キンキーブーツという作品に永遠の愛を。

この記事が参加している募集

おすすめミュージカル

おすすめミュージカル

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?