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【観劇レポ】アベンジャーズ大全 ミュージカル「カムフロムアウェイ」その2

ミュージカルの観劇レポ。「カムフロムアウェイ」の感想その2です。今回はキャストとキャラクターについて。

その1(全体編)はこちら。

何回でも言いますが、この12人が集まることはこの先ないかもしれない、というくらいの強力キャスト。

僕の文章力でまとまるかは不明。そもそも僕の目が2つしかないので、とても全員のすべてを見切れるはずもなく。皆さん非常に細かい表現をされているので、見逃しているところも多々あると思います。目24個ほしい。

アネット「まとまるかなあ…?」
ビューラ「まとめるしかないでしょ!」

脳内ガンダー

キャスト目次は五十音順・敬称略です。


安蘭けい

主キャラクターは、テキサスからやってきた女性・ダイアン

ずっと前に分かれた元夫との子・デイビットの身を案じ、無事が確認できたことで安堵。そしてニューファンドランドでは誰も自分のことを知らないことに気付いて、元妻でも、母でもない、「第二の人生」に気持ちが向かうような様子が見えました。

ガンダーに着陸する同じ便に乗っていたニックと出会いロマンスに。終盤のニックとのデュエット「Stop The World」は、凛としていて力強くてやさしい、とうこさんそのものみたいな歌。
サッパリとした雰囲気のある女性ですが、この物語の中ではロマンスシーンの代表で、情熱的なところもあります。ロマンスに年齢は関係ない。
すごく自然体な佇まいで、ケビンカップルのことを「ステキなゲイのカップル」と表現したり、ニックのこともありのまま受け入れている感じがする。

「スクリーチおいしー」と、スクリーチの場面での少し(だいぶ)酔った様子、ニックをやや強引にセレモニーに引っ張り、夫婦と言われてまんざらでもなかったり、楽しそうなのが伝わってくる。とうこさん、普段お酒飲んだらこんな感じなんちゃうかと思うくらい。「いいじゃない!!!」って叫んでそう。

他に演じられるお役では、地元の店員クリスタル。「ペプシッ?」の言い方がまさに普段の町の様子って感じで好き。ケビンカップルが訪れるバーの奥さんも。

石川禅

主キャラクターは出張三昧なイギリス人技術者リーマンのニック。他にボニーの夫で管制官のダグ、ボブと話す地元のおじさんなど。ニックもダグも、女性の尻に敷かれているキャラクターですね。

ニックがダイアンに惹かれていくところは、この作品のロマンスパートの中心。会話もオドオドした感じであまり女性に慣れていない様子のニックですが、ダイアンのヘアセットの変化に言及していたりとアプローチはそれなりにしていて、純なところもあるのか、可愛らしいおじさん。
会社へ安否の連絡をするシーンでは、ニックの満たされなさ、孤独が一瞬のシーンで描かれ、ちょっとしたスパイスになっています。

舞台に禅さんがいることでの安心感があって、さりげないのに存在を感じるような、そんな禅さん。ニックのコミュ障っぽいところと、ダグの妻には振り回されつつ管制官としてはピリッとしているところ、禅さんの声やけど全く違うキャラクターがそれぞれ生きている。

ダグはなんだかんだボニーのこと好きなんだろうなぁというのを感じます。動物のためならなんでもする彼女の、なんだかんだ一番の理解者でもあるんじゃないかな。ボニーに少し抵抗してみせつつも、なんていうんやろ、これが愛?それが禅さんから見える。

BBQのくだりでボブと話すおじさんは、ニューファンドランドのおじさん気質を象徴するような雰囲気。一見怖い・冷たい感じにミスリードされるけど、すごく朴訥として自然体なおじさん。
「うちのグリルぅ、持ってくのかい」からの「お茶ぁ、飲んでくかい」の言い方、ほぼ同じトーンなのにボブの心情と状況もあって冷温全くの逆に聞こえるの、最高ですよね。

浦井健治

主キャラクターは環境企業の社長ケビンT。ケビンの他には、ガンダーのバス運転手ガース、ブッシュ大統領、動物の声など。
柔和でちょっと無邪気さもあるケビンと、現場気質でちょっと無骨なガースの演じ分けでは、ケビンは浦井くんで、ガースは浦井さんって感じ

大統領の演説、そして黙祷のシーンでの客席への語りかけもそうですが、ナレーションや演説がすごく似合う。王の風格?(それはキングアーサー)。言霊操ってるのかな
「Prayer」での讃美歌は、浦井くんの持ち味である柔らかい歌声がマッチしていて、これまた言の葉を紡ぐ語り部のような印象。

言葉で言えば、バスの中で聖書を使ったコミュニケーションを思いつくところも浦井くん(ガース)の見せ場。ちょっとぶっきらぼうな感じもあるガースが、言葉の通じない異国からのカムフロムアウェイズと心通わせ始める。島の民の基本資質たる温かさをガースからも感じる場面。

一方で恋人兼秘書のケビンJとは、この5日間で心の隔たりを生んでしまいます。Wケビンはそれなりに言葉は交わしていて、互いの意見は言ってるのだけど、心の奥底の意図まで伝えきれていない印象があります。言葉って、会話って難しいなと。
不測の、かつ大変な事態を前に、「ものの見方を変えなくちゃ」「カラに閉じこもったりはしない」と、変化に前向きに対応しようとするケビンT。企業の社長だけあって、器の大きさみたいなところがあるのかな。それゆえにケビンJの繊細な心には気づかなかったのだろうか。Tの方がJにゾッコン感があるのだけれど。

浦井くんの大きな魅力は歌声だと思っていますが、柔和なイメージと裏腹にダンスが雄々しくてキレッキレでした。

加藤和樹

主キャラクターはニューヨーカーの男・ボブ

自分の身は自分で守れ、ヘマを犯せば撃たれるぞと、ニューヨークという環境で育った筋金入りのニューヨーカーで、当初はガンダーでも警戒心MAX。「どこの家でもお茶に誘われる…」「みんな俺がグリルを盗むのを手伝ってくれるんだ!」と、さながら異世界に転生した主人公のような困惑っぷり。でもニューファンドランドの人たちの温もりに触れて、心をほぐしていきます。
その様子は、ある意味この作品一番の成長でもあり、帰国便での様子は少年のような輝きすら感じる。母性を触発するような可愛らしさすら感じます。僕に母性はないはずなんですが。観終わったあとに「ボブかわいいな」となるのは和樹さんの表現力なんだと思う。

「Something Missing」での断続的なセリフ回しでは、彼の生きている世界が変わってしまったのと同時に、彼もまた純粋さと実直さを持っている「島の民」になったんやなぁと感じさせる。

ボブの他には、アフリカ系のカムフロムアウェイズであるムフムザ、アネットの心を奪う(?)ブリストル機長、そしてラストに一瞬出てくる衝撃のキャラクター・ケビンTの新たな恋人兼秘書ロビンなど。
ムフムザは実直さと不安・恐怖が素直に表れていて、ブリストルはかなり色っぽい和樹くんが最大限発動してる。ありがとうなアネット(?)。
ロビンはめちゃくちゃケビンのこと弄んでそう。ケビンは俺のものよ♡とか言いそう。セリフは「どぅおもぉ〜♡」しかないけど、あまりにインパクトが大きい。

咲妃みゆ

主キャラクターはニューファンドランドの新米リポーター・ジャニス

新米らしい健気さがゆうみちゃんのイメージとピッタリ。リポーターという役回りから、ストーリーテラー的な要素もありますが、大変な状況に弱気になったり、ハンナへのインタビューでもらい泣きしたりと、新米としての試練に耐えながらリポートし続けるタフネスも見せてくれます。セリフがないシーンでも、マイクを人々に向けて奔走する様子が描かれていて、彼女なりに今できることを一生懸命やっているのが伝わってくる。
10年後のシーンでは、肩の力がいい感じに抜けて、楽しくリポートしているような様子で、すごく爽やか。

ビバリーが機長を務める便のCAも演じています。ゆうみちゃんは役への没入感(憑依に近い)に定評があると思っているのですが、このCAさんのリアリティも素晴らしい。キャビンアテンダントに就職したことあるんかと思うくらい。ゆうみちゃんに熱いタオル配ってもらいたい。

一瞬の登場ですが、ウォルマートの店員は、基本早口めなセリフが多い中でゆったりした田舎の女の子で、キリッとしたCAや真っ直ぐなジャニスと一味違う、緩急の「緩」になっています。普段のちょっと天然なゆうみちゃんっぽくて、大阪初日と大阪千秋楽はセリフのあとにクスッと笑いが起こってました。

酔って髪を乱獅子したり、モリクミさんと一緒に酔っ払って胸元を大きく出す(パーティーガール)など、体を張ったところもあります。また動物の声は超リアルで、動物たちの感情が伝わってくるようでした。というかゆうみちゃん、お猿さんの鳴き声のクオリティ高すぎないですかね…。

シルビア・グラブ

主キャラクターはガンダーの動物愛護協会会長のボニー

地元にこういう奥さんいるよな!っていう、動物愛と肝っ玉を持つ行動力にあふれた女性。冒頭のセリフ「(たくさんの動物の面倒を見るのは)別に嫌じゃない、愛しってから」の「愛してっから」の言い方が好き。「愛してるから」じゃちょっとボニーじゃないのよ。これはシルビアさんの味と、訳詞の妙やと思う。

何よりも動物優先で、夫のダグに対する態度よりも動物たちへの語りかけのほうが圧倒的にやさしい。でも、ダグへの態度はパートナーとしての信頼の証でもあるなと思わせる。ダグから電話がかかってきたシーンでの「!、ダグ!」っていう反応が代表的ではないでしょうか。信頼してるからこそ、雑に扱える(ということにしときましょう!)。
歌ももちろんですが、長いセリフが多いのも印象深く、ボニーが日常で話している言葉がナチュラルに出てきているような印象。この作品は全体的に文字が詰まった早口なセリフが多いけど、ボニーは普段からこんな話し方するんじゃないかな。特に動物のことになればなおさら。

「Prayer」の場面では、ゆうみちゃんとヒンドゥー教徒を演じられていて、歌い終わりで二人揃ってスカーフを取る所作が美しい。祈りの歌も言わずもがな。

シルビアさん、実は今回初見でした。お声がハッキリしていて特徴的で、アンサンブルに入ってる時も聞き取りやすい。飛行機の中でテロの情報を手に入れて慌てる乗客も、あのワチャワチャした混乱の中はっきり聞こえますし。
あとフランス語で話す乗客、エールフランス航空の機長もシルビアさんかな。

田代万里生

主キャラクターはケビンTの秘書兼恋人のケビンJ

複数のキャラクターの演じ分けという点において、さすがのマイフェアプリンス万里生先生です。好き。
主要なお役では、少し線の細そうなケビンJ、地元の兄ちゃん感のあるドワイト、そしてこの作品のスパイスになっているエジプト人ムスリムのアリ。
「ジョンアンドジェン」での5歳〜19歳の演じ分けでも思いましたが、全員体格自体が違う。瞬間肉体改造でもしたのかというくらい別人に見えるんです。アリの肩幅はケビンの倍はあるでしょう。そう見えます。好き。

ケビンJは衝撃のセリフ「僕は卑猥な秘書♡」、「あの女、◯してやる」「す・み・ま・せーん、精神安定剤飲むぅ?」など、ちょっとクネクネした動きとややおネエ様っぽい雰囲気があります。
皮肉っぽいところもあるんですが、誰よりも9.11の出来事そのものによって心にダメージを負っていて、劇中の「僕らも皆死んでたかも」というフレーズがその象徴だと思いました。だからこそ、こんなときこそ前向きにというケビンTとは心の溝ができてしまう。
妹への電話で「不思議の国にいるよ」って言うセリフがありますが、ケビンJにとってはこんな地獄みたいな現実は異世界。「地獄」とは言わずに「不思議の国」って表現するあたりがケビンJのユーモアセンスやと思う。

そして更に語るべきはアリの存在。お祈りのシーンでは、あまりの所作の美しさに涙が出ました。アリには100分を通して、万里生くん得意の歌のシーンは一切ないですし、このお祈りのシーンはほとんどセリフすらないのですが、「なぜ彼らは祈るのか」、それを振る舞いだけで感じさせてくれるこの場面での表現力は、万里生くんがミュージカル「俳優」であることを実感するし、役の背景にある異文化や生活への敬意すらも感じさせる

身体検査での屈辱的なシーンは、その瞳にすべての感情がこもっていて、宗教観に必ずしも明るくない日本人にとっても、これがいかに屈辱的であるか、100%の理解はできない前提としても、それでも訴えかけてくる。
総じて作品の陰を担う役ですが、ビューラに「タラとチーズ」を教わって「た、タラトゥ…?」と初めて聞く単語を頑張って理解しようとするところや、国際ホテルチェーンのシェフと告げて料理をようやく手伝えることになった瞬間のうれしそうな吐息はめちゃくちゃかわいい。

万里生くんの演じる唯一の島民・ドワイトは、「マチルダ」で演じたワームウッドの発声を彷彿とさせる、田舎の兄ちゃんっぽい話し方ですが、管制官としてはキリッとしていて、「マリー・アントワネット」のフェルセンの話し方を思い出す。「いいえ、選択の余地はありません」っていうセリフかっこよくて卒倒しそう。

マイフェアプリンス万里生くんが、ソロやデュエット曲で得意のテノール美声を披露する場面はあまりないのですが、コーラスに美しさを加える声やし、何より演技の部分がやんごとなくて、キャスティングしてくれたプロデューサーさんありがとう五体投地

橋本さとし

主キャラクターはガンダーの町長クロード

カンパニーにポンコツ店長と言われ愛される座長ポジション。長台詞も多く大変な役どころですが、開幕の第一声でグッと客席を引き込むところはさすが。さとしさんに限らないですが、全員地の滑舌がいいんですよね。
ニューファンドランドの住人をまさに体現するような温かい町長で、この物語の文字通り大黒柱だと思う。

ガースとの押し問答、町長3面相に加え、ちょっと癖のある?アップルトンの町長など、コミカルなところもお手の物。終盤に披露されるコマンダーガンダー(ニューファンドランドのマスコット)の真似は、毎回ポーズが微妙に違うような…。

クロードは比較的真面目なお役なのですが、アップルトン町長とボブ(和樹くん)のやりとりにほっこりする人も多いはず。アップルトン町長、あんまり人の話聞いてなさそうですもんね。いいキャラしてる。あと毎回ボブの胸元を叩く力加減が違うような…。
乗客側の役はちょっとクセのある人が多い気がします。アリに疑いの目を向ける乗客、帰国便でボブご募ったら寄付に最初出し渋る人とか。寄付を渋ったのは、よくよくみると大きいお札しかなかったから、というように見えましたがどうなんでしょう。このシーン感動が強すぎて記憶が…。

さとしさん、この後ムーラン・ルージュ控えてるのよね。ハードな作品続いてませんか?大丈夫?

濱田めぐみ

主キャラクターはアメリカンエアラインの機長・ビバリー

終盤に歌われる、この作品の数少ないソロ曲「Me And The  Sky」は圧巻で、まさに天を衝かんとするパワー。劇場を突き抜けて空まで拡がるような、こういう曲を歌わせたらめぐさんの右に出る人はいない。こんなジャストフィットなキャスティングがあるだろうか。空に飛び立つ情景が浮かびますもんね。
この曲にはビバリーの人生と感情が詰まっていますが、Cメロにあたる部分の表現が好き。「私は51(歳)」で頭に手を置いて「テヘヘ」って表情をするところ、めぐさんの表情がチャーミングで、8歳の少女から根本的なところは変わらず、ビバリーはたくさんの突然に遭いながらも自分の人生を生きてきたんやなと強く感じる部分。

ビバリーとしては、あまりニューファンドランドの人たちとの交流は描かれません。機長としての責務にある意味厳格でもあり、帰国便で「民主主義は通用しません」と乗客に言い放ちつつ、その後ニッコリと乗客に協力感謝を述べるところが印象的。この言葉はパイロットとしての彼女の矜持の現れでもあるし、決して冷血漢ではなく、その場で優先すべきものを見定めて的確に伝える、シゴデキ機長。
そんな彼女も夫のトムには「私は、トム、大丈夫」と言い続けるものの、どこか自分に言い聞かせているようでもあって、ビバリーという人物の解像度が上がるセリフ。

ビバリーの他には、ビューラとともに学校でカムフロムアウェイズを迎え入れるアネット(服装はジレベスト)。どこか夢見る少女感があって、情熱的なアプローチに弱い。51歳のビバリーと比べて、ぐっと年齢が若い感じがします。今更ですけどめぐさんの表現力すごくないですか。

森公美子

主キャラクターはニューヨークの消防士である息子の安否を案ずる女性・ハンナ

人の親になったことのない僕でも、ハンナの不安と祈りが切に心に迫ってくる。子を持つ親の立場の観客には、もう筆舌しがたい感情があるでしょう。ハンナにはソロ曲(I am here)がありますが、一人で歌うから余計に孤独と不安が強調されて、モリクミさんのパワーと相まって涙腺決壊必至のシーン。まさにカナダの北東の果からニューヨークにいるはずの息子へ届いてほしいと叫ぶような歌唱
ガンダーへの臨時着陸にあたって冒頭で、「帰ったら言ってやるわ。これだから行かなかったのよって」という、自分を旅行に送り出した息子への文句がありますが、結末を知っているとこのセリフがすごく辛くて、ぶっきらぼうな感じで言えば言うほどに息子への愛を感じ、2回目以降はこの時点で涙が誘われました。

ハンナのキャラクターは中々に心苦しいシーンが多いですし、途中で演じられるコネチカット生まれのムスリムも、この危機的状況下でのムスリムへの風当たりを感じる少し辛い役ですが、ヘラジカと遭遇するバス運転手など、モリクミさんのコメディエンヌの真髄が垣間見えるシーンもあります。「どく準備ができたらどいてくれる」の言い方大好き。

またインタビューで「膝が死ぬ」と仰っていましたが、忙しく舞台を駆け巡り、まあまあハードなダンスやステップをこなされています。ご本人は必死かもしれないけど、可愛らしくも見えます。

柚希礼音

主キャラクターはガンダー在郷軍人協会のビューラ

ビューラは、史実でこういう役回りに奔走した島民の集合体のような存在なんだと思うのですが、まさにニューファンドランドの象徴みたいな女性で、地元の気前のいいお姉さん。カムフロムアウェイズのために奔走し、またハンナやアリの心に寄り添い解きほぐします。関西弁っぽいイントネーションが時折混ざるのも、地元のお姉さん感が増すところ。アネットとのコンビネーションもテンポよくて心地良い。
ハンナにジョークを披露するところでは男声と女声を使ってなりきっていて、特に男声(水兵)が元男役トップスターを一瞬感じる。役どころがやさしいキャラクターなので、歌い方もやさしくソフトタッチなシーンが多い。

ビューラ以外のシーンでは、税関職員はクールに、閉所恐怖症の女性客ではヒステリックに、カラオケ大会ではエネルギッシュに。ちえさんのタイタニックが見れるのはカムフロムアウェイだけ!

ちえさんと言えばダンス。ステップひとつとっても目を惹きます。女性陣の中でも背が高くいらっしゃるので、ビューラ自身は色っぽいキャラではないけど、スクリーチのシーンは楽しさとともに艶すら感じる。

吉原光夫

主キャラクターはガンダーの警察官・オズ。今回のキャストの中で一番役の数が多い光夫さん。タッパもあってどんな場面でも存在感を放っていました。

オズはどっしり構えた感じが強いけど、ボニーしかりビューラしかり、女性陣にはちょっと頭が上がらない感じもあって人間味豊か。
本作の特徴でもあるけど、素朴な言い回し、ニュートラルな声のトーンが、光夫さんのハッキリした発声ゆえに、より明瞭になる感覚がありました。最たる例は離陸シーンの「いいんだよ。あんたらだってそうしただろう」。このセリフ自体はアップルトン町長(さとしさん)からも発されるし、ビューラも似たようなことを言っていて、この作品の核でもあり、我々観客への重要にして最大の投げかけでもあるのですが、光夫さん(オズ)が言うから迫るものがある。

ユダヤ教のラビは、落ち着きのある清貧な男性。「Prayer」で祈りの言葉を歌うところは厳かで天に拡がるような歌声。めぐさんしかり、四季出身者の音の広げ方はやっぱりすごい。

乗客側では、「28時間」での「みんなパニックだったし!(やることもない♪)」の歌詞のパートでちょっと遊び心を感じました。初日とそれ以外で歌い方が変わった気がする。
他にも心臓外科医のリーダー、スペイン語が話せる体育教師など、一瞬の登場でインパクトを残すお茶目なキャラクターも。というか13役ってすごいな。

光夫さんは実は今回が初見でした(マリー・アントワネットDVDで何回も観てるから初見感ないけど)。

アベンジャーズ

はい、この時点で約9000字。

ハンナ「帰ったら言ってやるわ、これだからまとまらないのよって!」

脳内ガンダー

キャストとキャラだけで案の定、語るべきところが溢れているのですが、ここに書いてない細かい動きや表現もたくさんあるんです。バス乗車時の揺れとか、あるキャラクターにスポットご当たっている時の他のメンバーの様子とか。キャラ変の瞬間とか、そのための助け合いとか。

この作品、ともすると「この豪華メンバーだから観てね」で終わってそれまでになりうるのですが、このキャストだからこその味わいもありつつ、ちゃんと作品そのものを大切に届けようとしてくれるキャストである、ということが何よりも素晴らしいと思うのです。
そういう観点では、普段はグランドミュージカルでアンサンブルをやられているような、いわゆる名バイプレーヤーみたいな人を集めても絶対に面白いと思う。

さてこのアベンジャーズ、各キャストの今までのご経験、その全てが凝縮されていますし、何回も言うけどホンマに目が足りない。いや、むしろせいぜい数回でこのアベンジャーズの演技・表現を味わい尽くそうなんて、僕が傲慢とも言えるのかもしれない。書きながらそんなことを思っておりました。


というわけで続く。次回、楽曲やらシーン別やら編。

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