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【観劇レポ】最高 ミュージカル「キンキーブーツ」

怒涛の観劇ラッシュの中で、ひときわ心待ちにしていた作品、ミュージカル「キンキーブーツ」の日本版3度目の公演。大阪初日の観劇レポです。

この作品は僕がこの世で一番好きなミュージカル。どれだけ楽しみにしていたか、折々にnoteへしたためてきましたが、もう、本当に、感無量。

端ではあったものの、座席も前から3列目というこの上ない幸せの席でした。チケットを発券した時、コンビニの中で思わず「えっ」と声が漏れたくらい驚き(大阪公演の会場であるオリックス劇場は、S席でも3階が普通にあり得るので、期待はしていなかったのです)。

作品自体への愛を語り始めるととてつもない文字量になるので、初日公演の感想ということで。ここから色々感想書きますが、とりあえず。

最っっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ高でした!!!

優ローラ

今回新たにローラを演じることになった城田優さん。

まず言いたい。本当に素晴らしいローラでした!!

ただでさえローラは難しい役と言われていますが、初演・再演でローラを見事に演じた三浦春馬さんを引き継いでということで、尋常ではない並々ならぬプレッシャーがあったはず。そして応援の声、待ち望む声と同じくらいに、様々な声がきっと彼にも届いてしまっていたことと思います。良くも悪くも、前任と比較されるのは避けては通れない役。春馬さんの早すぎるお別れもあって、一部から心無い言葉も浴びせられていたと認識しています(誹謗中傷する時点でそのような輩は「春馬ファン」ではないと思いますが…)。

正直言うと、ゲネプロの映像を見た時、「もっとはっちゃけていいと思うけどな」と思っていました。
でもそんなものは杞憂でした。重圧、緊張、プレッシャー。それすらも味方につけて、春馬ローラをなぞるでもない、海外の他のローラをなぞるでもない、「優ローラ」でした。

恵まれた体格を存分に活かし、圧倒的な存在感を放つ佇まい。元の身長が高いから、ヒールを履いたらたぶん2メートル近くある。チャーリーの言葉を借りればある意味「ドラゴンクイーン」かもしれない。歌声も派手なナンバーでは、まさに火を噴くドラゴンのように低音が響く。優美なセクシーさというよりは、まさに「ドラァグクイーン」という感じ。またバラードナンバーは俳優・城田優の良さがより出ている気がします。アップテンポな曲より、バラードの方が映える声じゃないですか?

一方でローラの内面の繊細さ、弱さ、優しさも感じ取れました。特に優ローラの弱さは、等身大の人間らしい弱さがあって、華やかで力強いパフォーマンスのシーンとより対比的に映し出される。内に秘めた弱さと、それをある意味隠す鎧でもあるドラァグとしての力強さ。違う世界の住人ではなく、ローラも一人の悩める人間だということを感じさせる演技でした。

ローラは演じるキャストによって姿が変わります。分類することに意味はありませんが、「男性が好きな男性」「女性にあこがれる男性」「女性になりたい男性」…キャスト次第でローラというキャラクターに幅があるのです。
そういう意味では優ローラは、「女性への憧れ・リスペクト」が強く出ていたと思います。

エンジェルス

ローラのステージを彩るかわいいパフォーマーちゃんたち。キャストはもちろん全員男性なのですが、可愛いんだこれが!いや可愛いじゃないな、麗しい?美しい?とにかく素敵。
衣装やメイクにもこだわりが見られて、キンキーブーツに欠かせない存在。セリフは一部シーンを除きほとんどありませんが、美しくキレのあるダンスと歌で舞台を舞う天使たちです。

実は彼女たちには、非公式ながらお名前が一人ずつあります。劇中でその名前を呼ぶことはありませんが、キャストさんたちもそう呼んでいるようです。

まずはアーモンド(佐久間雄生さん)。ラストシーンで小さなシルクハットをかぶった、黒いブーツと赤い衣装の麗人です。アーモンド嬢は、ボクシングシーンのラウンドガールのビキニ姿が本当に美しくて、見事な腹筋を披露してくれます。細身ながらも磨き上げられたその体、彫刻か何か?体も美しく、佇まいも本当に麗しい。一家に一人ほしい…。その腹筋僕にもほしい…筋トレがんばろう。とにかくアーモンド嬢、麗しい…麗しいよ。嗚呼、アーモンド嬢‥‥。

キャサリン(遠山裕介さん)。ラストシーンでピンクの煌びやかなお衣装を纏うかわいい子ちゃん。身長も高くて、声も高い。ボクシングシーンでレフェリーを務めます。この時のゼブラの衣装も素敵。そして肩幅がしっかりしていて強い。お顔立ちがはっきりされているので派手な衣装やメイクが映える。キャサリンのハイトーンボイスだけで1時間くらい聴ける。素敵よ…素敵よキャサリン…。

アンナ(穴沢裕介さん)。ラストシーンでは赤いマーチング隊のような衣装と、赤いブーツをお召しの金髪美女。近くで見ても女の子と間違うと思う、それくらいきゃわいい。「SEX IN THE HEEL」では華麗なバク転を披露してくれます。ピンヒールでバク転ですよ?あとサングラスを傾ける仕草も素敵。きれいよ…きれいよアンナちゃん…。

エラ(森雄基さん)。ラストシーンで緑やオレンジのカラフルなお衣装と、水色を基調としたブーツを履いたチャーミングな子。1幕最後の「EVERYBODY SAY YEAH」ではハート形の髪型で登場する。眩しい笑顔で、さながらミッキーマウスのようなスター性。森さん自体、よくミュージカルでお見掛けするのでついつい見ちゃう。かわいい…かわいいよエラたん…。

ジェシカ(浅川文也さん)。ラストシーンでは緑と黒のワイルドなアマゾンの女王のようなお衣装をお召しの美女戦士。ラストの衣装からワイルドで強いイメージがあるけど、大胆さと繊細さを兼ね備えた美しい所作が素敵。ドラァグとして男性性と女性性の両面も兼ね備えている。舞台の上手側にいることが多い気がして、下手側端の席だった僕はもっとジェシカ様を近くで見たかった…。美しい…美しいよジェシカ様…。

エニシング(シュート・チェンさん)。今回が初参加で、スウィングとして登場。ラストシーンは、カイル(風間由次郎さん)と同じイギリスの国旗をあしらった青・赤のお衣装で登場。スウィングじゃない時はポリス風の青いお衣装です。そっちも見たい!小柄でチャーミングだけどダンスはパワフル。ボクシングシーンで「グラスホッパーでもいかが?ダーリン」って喋ってるの、エニシングちゃんですよね…?女性の声かと思った…。フィナーレでマギーと仲良くはしゃいでダンスしているの可愛かった。キュートよ…キュートよエニシングちゃん…。

本当に、エンジェルスを一人ずつ観察するためだけに観劇する価値はあるくらい素敵。セリフがほぼない分、細かい演技が散りばめられているんですよ。エンジェルスだけで舞台します、と言われたら秒で行く。

再々演

3度目の公演ですが、キャストの多くが続投ということもあって、より進化・洗練された感じがしました。特にコミカルなところはよりテンポよくなっている気がします。セリフも一部変わってますね。まあそりゃ「おかんの下着を履いたチャールズ皇太子」とかはもう言えないか…。唯一音源として残っている2016年版のCDを聴くとわかりますが、歌詞も結構変わっているんですね。

徹平チャーリーは3度目の主演。徹平ちゃんは小柄なので、優ローラとの身長ギャップがすごい。「チャーリーボーイ感」が強まりますね。
歌や演技はもはや安心感すらありますが、2幕の工場メンバー、そしてローラとの喧嘩のシーンは本当に鬼気迫るものがありました。劇中で一番の長セリフシーンでもあります。ミラノ出展への責任とプレッシャー、焦り、そして根底で拭い切れていない偏見。このシーン、学生時代の自分に重なるところがあって、胸が締め付けられます。

我らがソニン様のローレンも3度目。少しだけ独特な女の子ですが、この舞台の大事な柱になっている様子を強く感じました。実はローレンがいたからこそ、物語は動いていく面があります。いち早くローラ、ドラァグクイーンというものに興味と理解、憧れを示す存在。
「WHAT A WOMAN WANTS」ではドンをチキン(弱虫)とからかい、コケーコッコッ…とニワトリの真似をするんですが、迫真のニワトリでした。舞台の下手に来てくれたから芸が細かいのがよくわかりました。さすがですソニン様。

二コラ、ジョージ、ドンも3度目。
二コラは前回よりも「普通の幸せを手に入れたい普通の女の子」が強まった気がします。前回は港区女子にあこがれる感じのイメージ(失礼)でしたが、二コラもただ、普通の幸せが欲しかっただけなのよ…。物語としては終盤でチャーリーに別れを告げて退場するのですが、フィナーレでローレンと仲良く踊っているのがチャーミング。

ジョージは意外と細かいところで面白いことしています。工場の男性メンバーで唯一ローラやピンヒールブーツの魅力に虜にされている。田舎町の靴工場の責任者として、伝統的な価値観を持っていたところ、それに凝り固まらず柔軟に新しいものを受け入れる器も持っている。柔軟なのか、影響されやすいのかはさておき…。見ていると中々可愛らしいキャラクターです。

ドンは一応ヒール役(靴のヒールじゃない。ややこしい)ですが、彼もまた「普通」のよくいる人でもあります。決して悪い奴ではないのです。知らないものを受け入れるのが怖い。これって誰にでもある感覚だと思うのです。だからこそ、ドンがローラ、そしてプレッシャーに飲まれたチャーリーを「あるがままに受け入れる」というシーンに、心打たれるのだと思います。

パットやトリッシュをはじめとする工場の面々たちは、続投メンバーとニューフェイスが仲良くやってます。「SEX IN THE HEEL」でエンジェルスたちの奇抜な姿に目が釘付け、あるいはよくわからないものだと見る様子など、細かい演技が僕は大好きです。やっぱり全体の雰囲気をつくるのは彼らですよ。フィナーレでそれぞれが履いているブーツも個性があって素敵です。
別作品でお見かけする方たちも多くて、席がステージに近いのをいいことに、特に下手側は楽しく細かいところも見させていただきました。

そして公演パンフレットの節々に感じる、今回の公演に対する思いの強さ。やはり三浦春馬という存在を失って、再度公演をするということに並々ならぬ決意と覚悟が必要であったことがうかがえます。
悲しみと迷いを経てなお、この「キンキーブーツ」という作品を日本に残し、継承していくために。そんな熱い思いを感じ取れる再々演でした。

本当に、再々演してくれてありがとう。

カーテンコール

フィナーレから続くカーテンコール。観客も一緒になって飛んで跳ねて踊って楽しめる最高のカーテンコールです。キャストが順番にクロスしながら掃けていくのは、テンポが良すぎて名残惜しい気持ちもありつつ、その刹那の幸せを感じ取れる瞬間でもあります。最後、チャーリーパパと目があった気がする…気のせい?

初日ということで最後に徹平チャーリーと優ローラからご挨拶。ご時世的にいつ中止になるかもわからない中ではあるけど、許されるところまで公演ができるようにと。
そして最後は優ローラから会場全体に投げキッスのマシンガン。絶対僕に1発当ててくれた、間違いない、撃たれたもん。ホンマやもん。ラスト1発は徹平チャーリーに撃ち、チャーリーがそれを会場に撃ち返します。最後の最後まで、舞台袖から手を振る優ローラの美しい手が印象的。

僕が前回観たのは2019年大阪再演の千穐楽。忘れもしない、あの雨の日。雨を吹き飛ばすかのような熱気と鳴りやまない拍手。
「いつかまた、3度目の公演ができるように」。
そういっていたのは三浦春馬さんでした。天国からこの光景を見ているでしょうか。自分がもう一度ローラをやりたかったと、少し悔しがっているでしょうか。あなたの愛した作品は、こうして受け継がれていますよ。

千穐楽との先に向けて

観終えたあとの満腹感、もとい多幸感はキンキーブーツに勝るものなし。11/20の大阪千穐楽(そして大千穐楽でもある)に向けて、本当に無事完走されることを祈っています。

もちろん僕は千穐楽のチケットも奇跡的にご用意いただいたので、全力全身全霊をかけて会場へ行きます。3階席から愛の熱視線をステージに向けますよ。最高のフィナーレをどうか実現させてください。

そして素晴らしく、美しく、温かいこの作品が、未来永劫に引き継がれ、愛されるものとなりますように。

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