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その伝統工芸品は本物? 中国産の切子グラス goyemonさんの「Fuwan-浮碗-」について

海外産の着物、中国産の漆、接着剤を用いた金継ぎなど、本物とは言えない伝統技術、伝統工芸というものが存在している。我々使う側が見分けることが出来れば良いけど、中々難しい。


その中で先日、めっちゃ気になるものを見つけてしまった。
goyemonさんの中国産の切子グラス「Fuwan-浮碗-」という商品。

(記事を書いてる途中に、上記のリンクには修正が入りましたので、文章が無かったり変更されてたりします。)


デザインは良い。ダブルウォールというのも良い。

ただ伝統美、伝統技術、江戸切子、東京切子という言葉を使っていながら、職人さんの名前も無く、原産国が中国というもの。日本の伝統技術を守りたいとも書いてあるんだけど、どういうことなんだ


問題点① 中国産

これの問題点ってたくさんあるんだけど、まずは中国産の安価な伝統工芸品というものが市場に出回ると伝統という価値が薄まるんだけど、もっとヤバいのは日本の職人さんに一円も落ちていないという点。これが日本のものづくりの衰退の原因だと気付いてほしい。

中国産が悪いとは言ってないのよ。日本の伝統技術とか伝統工芸品と宣伝しつつ、中国で安く作って販売しているのが駄目なんだよ。日本の伝統技術というなら、産地と作っている職人さんは必ず明記してくれ!


(経済産業省から認定を受けた「伝統的工芸品」ではないと現在は修正されていますが、当初は原産国:中国が書いてあるだけでした。)


問題点② 江戸切子について

江戸切子は江戸切子協同組合の登録商標です

本組合の組合員が作成した「江戸切子」以外の製品に「江戸切子」を使用することはできません。また、「江戸切子」とは、次の条件に基づき作成された切子製品を意味します。これ以外の条件に基づき作成された製品に「江戸切子」を用いることはできませんので、ご注意ください。

1. ガラスである
2. 手作業
3. 主に回転道具を使用する
4. 指定された区域(※江東区を中心とした関東一円)で生産されている

そもそも文中に用いている「切子」とはカットグラス技法を意味する言葉だけど、伝統文様だから伝統美の切子なんだとか、説明欄に江戸切子と書いてあると、詳しく知らない人は日本の職人さんによる伝統技法を用いたものだと勘違いしてしまわない?

切子・伝統という言葉を使うのであれば、プリント・レーザー加工・サンドブラストような技法を用いてはいけない。日本の伝統技術の切子っていうより、この製品はサンドブラストとかのエッチングかな多分。

切子=日本の伝統技術は駄目よ。

どっちにしろ、原産国が日本以外だったり、特に製造元の職人さんの名前が書いてない製品は伝統工芸品ではない。

つまりは、伝統工芸品(伝統的工芸品)は江戸切子であって、切子ではないんだよな。中国産なのに、日本の伝統技術とか言ったり、伝統文様を用いているのは紛らわしい。

(現在は削除されていますが、発表時には説明欄には「江戸切子」を用いていました。)


問題点③ 東京切子について

切子技術を使った弊社のオリジナル商品「東京切子」という表現を用いているんだけど、「東京切子」という言葉は調べて見たら、既に日本のメーカーが商標取ってたりするので、勝手に使うのはどうなのかな。

そもそも中国産なのに、東京切子とはどういうことだ。

(現在は削除されていますが、この製品は「東京切子」であるという表現を使っていました。)


問題点④ 「日本の伝統技術をご家庭に」という表現

日本の伝統技術をご家庭に。と言いつつ、原産国が中国だったり、説明欄に江戸切子という言葉を使ってたりはまあ良くない。

(これも現在、削除されています。)


問題点⑤ 機会損失

2月1日現在、542人が支援している。つまり1000個以上の安価な切子グラスが販売されたということで、その分だけ日本製の切子グラスが売れる機会を逃したんじゃないかな

単純に考えて、既に切子グラス持っている人は、新しく切子グラス買うのは少し先になるはず。裾野を広げるという意味では良いけど、簡単に手に入るものとか安価なモノには価値を持ちにくくなってしまうのも事実


問題点⑥ 完売後に、修正

これ今日みたら完売してたんだけど、「日本の伝統技術をご家庭に」「江戸切子」「東京切子」という部分を消えてきた。すでに販売した後に変えるのってありなんだっけ?

購入した人の大多数が日本製で江戸切子だと思っていたでしょこれ。これ江戸切子の業界に迷惑かかっている感じがして、心がざわつく。


最後に

こっそり修正されて元々無かったことにされているので、職人さんや今後のことを思うと、誰かが書いたほうが良いかなと思って書いた。伝統工芸に関わっているデザイナーとして、ちょっと触れないわけには行かない。

今後この手法で、中国産の日本の伝統工芸品が増えたら嫌だな。日本の伝統技術を守りたいなら、日本の職人さんとものづくりをしていきましょう。

今回の件で何でこんなにざわついているのかと言うと、伝統工芸や職人さんへのリスペクトを感じられないから。しかもそれを作っているのが同世代の同業という悲しさ。日本の伝統技術を守ろうという気持ちがあるなら、中国で作る発想には普通ならないのよ

日本の文化に関わるものは、日本で作っていきたい。

こちらでサポートして頂いたものは、日本の伝統工芸・モノづくりのために使わせて頂きます。