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SaaSは人生のウソをなくす。私がSaaSを好きな4つの理由

ユーザベースの佐久間です。SaaSが大好きです。

ユーザベースの全体会議である「みんなの会議」で私が話した「SaaSが大好きな理由」について書きます。

SaaSに興味を持っていただくきっかけとか、SaaSをやっている人が自分がやっていることがより好きになるきっかけになればうれしいです。

SaaSの定義(最初にまじめな話)

SaaSを「クラウドサービス✕サブスクリプション」で定義します。要は、ウェブサービスの形態で提供されており、ビジネスモデルとして、月額課金や年額課金の仕組みを取っているものを指すことにします。

一般的にはBtoBの事業に限定されますが、金額が安く、ユーザーの裾野が広いBtoB SaaSだと、感覚として、BtoCの「クラウドサービス/アプリ✕サブスクリプション」とあまり変わらない感覚があります。

G SuitesやSlackなどがそうですね。最初は個人用途でセールスなしで広まり、その後会社利用に切り替わっていく。セルフサーブ型と言われる販売モデル。この販売モデルについては、Atlassianという会社が世界的に有名です。(JiraやTrelloなど)

なので、ユーザベースが手がける

・SPEEDA:企業・業界分析プラットフォーム
・FORCAS:BtoBマーケティングプラットフォーム
・entrepedia:スタートアップ情報プラットフォーム

はもちろんSaaSだし、NewsPicksの有料会員ビジネスも準SaaSだと思っています。ユーザベースはSaaSの会社です。

後は、「IoT✕サブスクリプション」もSaaSに近いですね。日本だとスマートロックのAkerunさんが有名です。

なので、「クラウドサービス」の所は、IoT、アプリ、インストール型(AdobeのCreative Cloud等)など少し幅がありますが、「サブスクリプション」の方はSaaSの必要要件として明確だと思います。

私がSaaSを好きな理由

こんな感じでSaaSの定義にひも付きます。

クラウドサービス、サブスクリプションという2つの要素から生まれる上記4つの「好きな理由」。1つ1つ書きます。

1. 集合知の活用

SaaSでは、データがサービス提供者側にも溜まります。これにより、1社では実現し得ないレベルの、大規模な試行錯誤が可能になります。

例えば、MagicPriceというサービスがあります。ホテルの客室料金設定を最適化していくSaaSです。

1つのホテルで、料金設定を試行錯誤で最適化しようとすると、膨大なケースと時間が必要になります。例えばGWが繁忙期で、その時の料金設定を最適化しようとしても年に一度しかケースが貯まりません。

一方、MagicPrice側にはGWの料金設定の膨大なデータが集約され、その集約された試行錯誤からベストプラクティスを見出していくことが可能になります。

データを通じたユーザーとの共創。1社ではなし得ないベストプラクティスをつくれること。これが私がSaaSを好きな理由です。

2. 永遠のベータ版

私が担当するFORCASというサービス(ターゲット企業リストを生成するマーケティングサービス)は、最初はエクセル形式でのデータ提供だけでした。

NDAを締結して既存顧客の情報をエクセルでもらい、それを分析し、出来上がったターゲットリストファイルをユーザーに返してフィードバックをもらう。

その後、APIが完成し、MarketoやSalesforceに情報を返し、独自の画面は持たない形でサービスを提供していた期間があります。その後ようやくウェブ画面が完成するのですが、要素は最小限で、毎週の様に機能を追加していきました。

正式リリースの際に、初期ユーザーの石野さんがFORCAS Tシャツをつくってお祝いに来てくれたのがとてもうれしかったです(スライド左下の写真)。

特に初期のSaaSをユーザーが購入する理由は、「ビジョンへの共感」、「未来への期待」が大きいと思います。その想いに対し、着実にアップデートを重ねることで応えていく。

また、ビジョンに共感してくれたにも関わらず、機能不足でお見送りになったお客様が、アップデートを重ねた末に、数年越しでようやく導入を決めてくれるうれしさ

既存顧客とは長いお付き合いになりますが、潜在顧客とも長いお付き合いになる。最高です。

3. ユーザーとの嘘がない関係

売り切り型だと、売ってしまってお金を得れば、一旦ユーザーとの関係はそこで終わります。

そのサービスが実際に効果に結びついても結びつかなくても、金銭的な違いは発生しません。(もちろん、口コミ等を通じて長期的には違いが発生します)

一方、サブスクリプション型だと、契約締結はユーザーとの関係性のスタートでしかなく、ユーザーは、サービスを導入した効果が実感できなければ、契約更新時に契約を解除することができます。

すぐに解約されては、サービス提供者としては投資回収ができません。

従って、サービス提供者側は、ユーザーをだますことは出来ず、リアルな価値に誠実に、長期的に向き合い続けなければなりません。

先日IPOがアナウンスされたZOOM(ビデオ会議SaaS)のCEO、Eric Yuanの

“Prioritize existing customers before worrying about winning new ones”(新規顧客の獲得より、既存顧客を優先する)

という言葉が大好きです。

ユーザベースにも、「新規より既存」という言葉があります。これは、

新規より既存:
経営はAND思考で、安易にトレードオフに逃げるべきではないが、「新規の顧客を獲得すること」と「既存の顧客向けの価値を増大させること」にどうしてもトレードオフが発生したら、必ず既存顧客を取る

という意味です。

これは、「まず今サービスを使ってくれているお客様を大切にしたい」という哲学ではありますが、それが「サブスクリプション」というビジネスモデルと結びつき、長期的には売上成果に還元されると考えています。既存顧客の契約期間を伸ばすことの売上インパクトが大きいからです。

また、目の前のお客様を大切にすれば、直接的にお客様から喜びの声をいただけます。そうすると、働く価値の実感を得て、サービスを提供するメンバーの幸せにもつながるはず。

事実、上で紹介したZOOMはSaaS企業の中でも驚異的な成長を記録しており、かつ、「Delivering Happiness」という文化を掲げ、Glassdoorの「2019 Best place to work」で2位にランクしています。

SaaSでは、売上を追求すること、目の前のユーザーに確かな価値を届けること、従業員の幸せを追求すること、の3つは矛盾しません

4. 予測性と再現性

SaaSにはThe Modelというフロント組織の型があります(これは日本だけの呼称だそうです)。そして、その型に関する各種KPIのベンチマークの数字も広く共有されています。(「SaaS Metrics」などで検索するとたくさんの資料が見つかります)

もちろん、サービス毎に目指すべき数字や組織の型は異なりますが、組織の型、KPIの型に「共通言語」が存在することは非常に大きいです。

その共通言語を通じて、各社でプラクティスを共有し、共に進化していこうというオープンな雰囲気がSaaSにはあります。

また、ストック型のビジネスなので、将来を確度高く見通すことが可能です。例えば、年末の月次収益が1億円で、想定年間解約率が10%であれば、来年度は9,000万円✕12ヶ月の収益はほぼ確保されており、そこにいかに収益を積み上げていくか、という視点を持てます。

SaaSには、共通言語とベンチマークがあるので、成功の再現性があり、予測性も高いので未来を見れます。

この4つの理由が「ユーザーとの共創」につながる

SaaSが好きな理由を4つ書きました。(下図の左側)

① 集合知の活用
→ 膨大なデータが集まり、ユーザーとのデータを介した共創が実現できる。
② 永遠のベータ版
→ ユーザーも未来志向になり、共に未来をつくる仲間になれる。
③ ユーザーとの嘘がない関係
→ ユーザーにリアルな価値を届け、ビジョンを深く共有する仲間になれる。
④ 予測性と再現性
→ サービスを提供する側も未来志向になることができる。

SaaSはユーザーとの共創で成り立ちます。データを介した定量的な共創と、ビジョンを共有したユーザーからの本質的なフィードバックを介した共創。

特に、ビジョンの共有がなければ、ユーザーからは表面的なフィードバックしか得られません。目指す未来を共有することでこそ、同じ視点に立った深いフィードバックをユーザーからもらうことができます。

私がSaaSを好きな理由は、

「SaaSはユーザーとビジョンを共有した共創で成り立つコミュニティ」

だからです。

会社は「ビジョンに共感したメンバーで、その達成を目指す集団」です。

SaaSは、社内にとどまらず、ユーザーやパートナー企業とも深くビジョンを共有し、より広い「コミュニティ」として、その達成を目指す集団です。

言わば、会社という概念がウソなく拡張されたもの。

最高すぎる。

そして、SaaSは結果を出している

Zuora社が出しているSEIという指標があります。これはサブスクリプション事業を営む米国企業の売上を指数化し、S&P500企業などと比較したものです。

出典:2018年9月 Zuora サブスクリプションエコノミーインデックス(SEI)

上のグラフを見ても分かる通り、サブスクリプション事業を営む米国企業の売上はS&P500を大きく上回っています。

出典:2018年9月 Zuora サブスクリプションエコノミーインデックス(SEI)

サブスクリプション事業の中でも、SaaSは全体で2番目に高いの成長を記録しています。

サブスクリプション事業はユーザーにリアルな価値を届けないとすぐに解約され、持続的な売上成長は遂げられないので、このグラフの通り売上が高成長を続けているということは、「SaaSはユーザーに大きな価値を届け続けている」ということの証明でもあります。

SaaSはコミュニティとして人に居場所を提供し、また、そこから生まれる大きな価値により、世界を変える可能性を持っている。

最後に

SaaSが大好きです。

少しでも、SaaSに興味を持っていただくきっかけとか、SaaSをやっている人がより自分がやっていることがより好きになるきっかけになればうれしいです。

7月にSaaSwayという日本SaaS界のお祭りをやる予定(それをやる理由も近い内に書きます)ですが、それに限らず、出来ることを全部やって、大好きなSaaSを盛り上げていきたいです。