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ゴートン例と関連図「統合失調症」

今回は、統合失調症についてゴートン例と関連図についてまとめてみました。
架空の患者Aさんについて考えてみましょう。



Ⅰ健康認識・健康管理パターン

情報

患者A
現在40代の男性、未婚、精神科開放病棟に入院12年目
 
1、主訴(現在困っていること)
「このごろ、ほとんど幻聴は何も聞こえない。時々ザワザワした雑音のようなものが聞こえてくるが、あまり気にしないようにしている。最近からだが重くだるい。便秘が気になる」

薬物療法
ルーラン(8) 3錠、サイレース2mg、ベンザリン15mg、コントミン60mg、アローゼン1.0g、カマ 1.5g、プルセニド(12) 3錠、アキネトン 3mg
手足は細いが、腹部が目立っている。お腹が張った感じはしないかとたずねると首をかしげながら「わからない」と返答。
「生活リズムをつけようと思う」「喉が渇くんだよね」午前中だけでも500mlのペットボトル4本分くらい水を汲み、飲んでいる。
 
2、病気の理解・受け止め(病識など)
入院理由について聞くと「・・・退院させてくれればすぐにだって働ける」と話すが、今後の生活に対する本人の希望は「別にない」と返答。具体的に今後に関する話をすることはない。
 
3、現在の主な治療内容
1)薬物療法
①自己管理あるいは看護師管理
 内服の与薬管理は看護師が行っている。
 ②服薬の自立度(2:一部介助)
 
2)その他の療法
 週に1回の医師による精神療法を受けており、現時点での治療目標は服薬習慣をつけること。パソコンや工作・農耕の療法のプログラム:看護師からの声かけで週に2回参加

薬物の副作用(頻度5%以上のものを記載)
・ルーラン:
錐体外路症状、便秘、食欲減退、プロラクチン上昇、不眠、不安、めまい、過度沈静、倦怠脱力感、口渇、CK上昇

・コントミン:
過敏症状、光線過敏症、白血球減少症、顆粒球減少症、血小板減少性紫斑病、血圧降下、頻脈、錐体外路症状、錯乱、不眠

・パントシン、カマ、アキネトン、ベンザリン、サイレース:
なし

・アローゼン、プルセニド:
発疹、腹痛、低K血症

4、今後の治療や生活に対する本人の希望
 医師より「この頃、肥満が目立ってきたので、便秘改善のためにも体を動かしましょう」と勧められるが、自発的に動くことはない。今後の生活に対する本人の希望は「別にない」と返答。具体的に今後に関する話をすることはない。

5、本人の健康感・健康に対する考え 
患者A自身の目標: 「生活リズムをつけようと思っている」

看護目標:活動量を増やし、規則正しい日常生活を送ることができる。治療目標:服薬習慣をつけること

6、本人なりの健康管理
入浴や着替え、歯磨き・整髪などの個人衛生には関心が向かず、看護師の声かけがないと何もせず日中はほとんど自室で過ごすことが多い。耳垢、ふけが多い。衣服に汚れが見られる。更衣は声かけをしても行わないこともあるが、洗濯は2週間に一度促しによって行っている。
運動面は、スポーツ観戦は好きだが自分でするのは全般的に苦手で入院後はまったく運動をしていない。
「このごろ肥満が目立ってきたので、便秘改善のためにも体を動かしましょう」と勧められるが自発的に動くことはなく、食事は毎日病院の常食を全量摂取しており、その後必ずパンやお菓子を間食している。

7、喫煙・飲酒の習慣
情報なし


アセスメント

患者Aは成人期の男性であり、精神科解放病棟に入院して12年目である。幻聴や妄想の症状がないことから、統合失調症の慢性期であると考えられる。陰性症状の意欲の欠如、自閉といった症状が前面に顕れていると考えられる。

1.   主訴(現在困っていること)
幻聴の症状はほとんどなくなっていることを自覚しており、本人は幻聴の感覚を理解していることが考えられる。ざわざわした雑音は聞こえているとのことであるが、気にならないと発言していることから、日常生活に支障がない程度のであると考えられる。また、「生活リズムをつけようと思う」と話しているが、声かけがないと自分から何もしないことから、セルフケア能力は低下していると判断できる。体が重くだるいこと、便秘であることを気にしており、また、口渇を訴えているため、その原因が統合失調症の自律神経障害によるものか、服薬の副作用によるものか、状況や程度を観察していく必要がある。便秘については、お腹が張った感じについてはわからないと発言しており、自覚症状がなく訴えが起きないことも考えられる。したがって、患者Aの身体状況を十分に観察していく必要がある。
 
2.   病気の理解・受け止め
幻聴が聞こえなくなっているという認識があることから、幻聴が疾病からくるものであるという認識はある。また、雑音に対して、気にしないようにしているということから、統合失調症に対しての受け止めはあるが、病気に対する理解は不明であることから、今後情報収集が必要である。入院理由については、明確ではなく、入院をさせられているために働くことができないという認識をしており、入院に対して正しい理解をしていないと考えられる。
 
3.   現在の主な治療内容
統合失調症に対しての薬物療法として、ルーラン、コントミンが処方されている。副作用には、錐体外路症状、便秘、食欲減退、不眠、不安、めまい、過度沈静、倦怠脱力感、口渇、CK上昇、頻脈、錐体外路症状、錯乱、不眠などがある。現在、患者Aの主訴としてあがっている口渇、便秘や身体が重くだるいといった症状は、薬の副作用によるものなのか、状況や程度を確認する必要がある。
また、週に1回、医師による精神療法を受けている。服薬習慣をつけることを治療目標として掲げており、現在は看護師による服薬管理によって、幻聴などの症状が落ち着いていることが考えられるため、このまま服薬を継続する必要がある。
さらに、看護師の声かけによって、パソコンや工作・農耕などの患者Aの関心のある内容の作業療法に週2回参加している。自分から参加したいという欲求は見られないものの、今後もプログラムへの参加を促し、少しでも日常生活を規則的に送ることができるように支援する必要がある。
 
4.今後の治療や生活に対する本人の希望
「生活リズムをつけようと思っている」という発言はあるものの、今後の生活に対して、希望は「別にない」と発言していることから、自ら、今後の生活や退院後の生活について考えることができていない状態であると考えられる。しかし、「別にない」という発言は、統合失調症の陰性症状による意欲減退や感情鈍麻による発言であるとも考えられるため、確認が必要である。
 
5.本人の健康観・健康に対する考え、と 6.本人なりの健康管理
入院してから、運動をまったくしていなく、肥満気味であるために、身体を動かすことを勧められているが、看護師による声かけがなければ、日中はほとんど自室で過ごしている。このことから、自分の健康に関しての意識は低く、健康管理が出来ない状態であると考える。また、入浴も週に2回、声かけによって行っているが、耳垢やふけが多く、衣服に汚れがみられることから、セルフケアに関しての能力が低下しており、清潔に対しての関心がなく、自分の健康に対して意識が向けられない状態であると考えられる。
 
 
7.喫煙・飲酒の習慣
喫煙・飲酒の情報はないため確認する必要がある。
 
#統合失調症の慢性期の陰性症状による疾病の理解不十分、健康管理不足、健康の関心意欲低下


Ⅱ 栄養・代謝パターン

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