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看護計画テーマ「がん性疼痛患者の標準看護計画」

勉強に実習にお疲れ様です。
多くの方に私のまとめた記事を閲覧およびご購入いただいており大変うれしく思っています。また実際にお役に立っていることを願っております。

今回は「がん性疼痛」にテーマを当ててみたいと思います。
2人に1人が”がん”になると言われているほど、多くの患者様がいらっしゃいます。
がんには痛みを伴うものも多くあり、痛みに悩んでいる方が非常に多いです。
よく実習中や新人時代に言われると思いますが、病院の中で一番患者様と接する時間が多いのは看護師です。
ですので、看護師の対応一つで患者様のQOLにも関わってきます。結構はボリュームになっていますが、しっかりした知識をつけるためにもまとめていきましょう。(この看護計画を1から自分で行うとなると、丸2日は時間を使います)


がん性疼痛患者の標準看護計画

がん性疼痛とは
 痛みの定義は、「身体で感じる不愉快な体験(感覚体験)と同時に心で感じる体験(感情体験)である(国際疼痛学会)ため、痛みを感じているのは身体の一部でも、その個人全体である。
術後痛は、手術を契機に発生する侵害受容性疼痛であり、創傷の治癒過程と共に痛みは消失する特徴がある。一方で、がん性疼痛とは、腫瘍が骨、内臓、神経組織に次々と浸潤していくために生じる痛みである。基本的には急性痛に属するが、がんの根治が困難な場合には、病変が進行するに従い長期間持続するため、がん性疼痛は急性痛、慢性痛の両方が存在する。

1.がん性疼痛の身体的要因による4つの分類(WHO)

  1. がん組織の浸潤や転移など腫瘍やがん自体が原因となって生じる痛み

  2. ・骨転移 内臓転移 管腔臓器の閉塞 神経への圧迫や浸潤 軟部組織への浸潤

  3. がん治療に起因した痛み

  4. ・手術後の慢性疼痛 化学療法後の末梢神経の病変 放射線治療後による病変

  5. がんが間接的な原因となって生じた機能障害や全身衰弱に関連した痛み

  6. ・褥瘡 便秘 筋肉の痙攣 骨折

  7. がんやがん治療以外の原因に起因する痛み

  8. ・片頭痛 リウマチ ヘルニア

 
2.がん性疼痛の成り行きと援助の方向性
1)がんの進行と共に痛みは、2つ又はそれ以上の重複した痛みで発生し、痛みが増強していく。また、他の身体的症状や治療に伴う副作用が出現しやすい状態であり、患者の苦痛は増大する。また、痛みは、その原因となる刺激の繰り返しにより次第に反応が増幅する。更に、痛みにより痛みが誘発される痛みの悪循環を生じる。そのため、早期に痛みの悪循環を断ち切り、良好な疼痛コントロールを図ることが必要である。

2)疼痛の持続は、不眠や食欲低下、活動範囲の制限など、日常生活行動に影響を及ぼす。そのため、疼痛が増強しないように安全で安楽な日常生活援助を提供することが必要である。

3)疼痛は、患者の集中力を奪い、うつ状態を引き起こしたり、人格にまで影響を及ぼす。また、疼痛の持続や病状の進行、がん告知などより、患者の不安や恐怖感は増大する。そのため、がんの進行を否定したいために痛みの増強を認めなかったり、鎮痛薬の使用や増量を拒否する反応を示す場合があり、患者の病状認識、心理状態を理解し援助を提供していくことが必要である。

4)がん患者は、死に直面する体験をもつため、痛みの中でもがん性疼痛は特に心理的な状態が痛みの増幅に影響する。また、がん告知の有無、余命告知の有無により、患者のもつ情報と認識でも苦悩は増幅される。そのため、身体的苦痛physical pain、精神的苦痛mental pain、社会的苦痛social pain、霊的苦痛spiritual painが複雑に絡み合い疼痛の閾値が増幅される。そのため、人間としてのあらゆる側面で増幅される全人的な痛みtotal painとして考え、援助を提供していくことが必要である。
 
看護計画
・アセスメントの視点
1.痛コントロールの時期によるアセスメントのポイント
 医療には、「治癒を目的とした医療」と「諸症状のコントロールや患者のできる限り質の高い日常生活の維持を目的とした医療(緩和医療)」がある。患者が心身の苦痛が緩和し治癒を目的とする治療に望み、治療効果をあげるのか、再発や転移などで治癒が難しくなり緩和医療の占める割合が多くなるのかといういずれの段階に患者がいるのか理解し援助を計画する。また苦痛症状は複数重なる場合がほとんどであり、出現している症状全てに援助を検討していくことが必要である。今回は、疼痛に焦点を絞り、以下の3つの時期についてアセスメントの視点を述べる。(他の症状が出現している時は、他の標準看護計画を参照する。)

1)痛みが出現してから痛みのコントロールが良好となるまでの時期
患者は、痛みにより日常生活動作が阻害されたり、様々な不安や恐怖、薬物への抵抗感、薬物の副作用への苦痛があり、心身ともに苦悩する時期である。そのため、患者の痛みにあわせた薬物療法やその他の治療が行われる。薬剤が患者の身体に適応し、疼痛が緩和し副作用が改善するまでは、痛みの観察と適切な服薬への認識、痛みのため制限されている日常生活を評価し、適切に薬剤を与薬すること、安全で安楽な日常生活行動を調整すること、適切に病状と薬剤の情報提供を行うこと、患者の痛みの閾値の上昇になる援助を工夫していくことが重要である。
 
2)痛みのコントロールが図れ、在宅療養に移行する迄の時期
疼痛緩和が図れ、患者のQOLが徐々に向上する時期である。患者は、告知の状況、余命を考慮し、在宅生活、入院による療養生活のいずれかを選択することになる。そのため、患者の意向、家族の意向、社会支援の活用、治療方針を評価し、多職種と協働の上、今後の生活について検討していくことが必要である。一方で、積極的な治療を希望し入院してきた患者では、疼痛が緩和しても現状を受容できず、今後の療養生活の場における選択において苦悩する。そのため、患者の療養の場の選択がよりよいものになるためには、医療者から患者と家族への十分な説明と同意が重要であり、早期より患者と家族の支援体制を調整し、強化していくことが必要である。
 
3)痛みのコントロールが図れ、終末期を迎える迄の時期
終末期を迎える迄の期間は、苦痛症状が複数合併し、複数の薬剤の使用や鎮痛薬を増量しても疼痛緩和が困難になり、心身の苦悩は増大する。そのため、医療者は、心身の苦悩を評価し、心身の苦痛緩和を最優先し患者がその人らしく過ごし自立できることを目標とする。患者を一人の人間として捉え、患者の希望を可能な限り支援し、患者の尊厳を大切にすることが重要になる。また、患者の入院の長期化、全身状態の悪化により終末期患者を支援する家族の苦悩や介護への負担も徐々に増大する。そのため、家族機能を評価し、患者を支援する能力を最大限に発揮し、維持できるように家族を含めて援助を提供することが重要である。
 
2.患者の痛みの観察と鎮痛効果や副作用の定期的な評価の重要性

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