通り雨


ベランダで海を眺めていた。
夏の夕立ち
生ぬるい風がそよいでいる。

鼻くそと一緒に。

いつからか我が家から消えたティッシュは
一向に補充される気配が無い。
僕はかろうじて一箱だけティッシュを
隠し持っていたが、使う気にはなれなかった。
屋根を叩く雨音。
木々を揺らす風の声。
走る稲妻の唸り。
そのどれもが心地良かった。
この音に浸っていられるなら、
鼻にまとわりつくもどかしさも受け入れられた。
夏の雨は刹那に通り過ぎていく。
まるで10代の青春のように。

中学3年生の夏休み。
来月に控えた運動会の準備で
学校に行かなければならなかった。
それぞれに役割が与えられ、
和気藹々と作業を進めていた。

僕は当時から、
その芸術性を認められていたため
看板に絵を描く作業(の補助)を
任された。

たった今何も見ずに描いた猫の絵

よく覚えてないが、
恐らくストイック過ぎるが故に
なかなか納得のいく出来栄えにならなかった
のであろう。
皆んなが帰ってからも僕は残って作業をしていた。
それでも何とか一区切りをつけ
帰ろうとした時、
同級生の女の子に話しかけられた。
その子は、当時僕が好きだった女の子だ。
そして、僕がギターにのめり込むきっかけに
なった子である。

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話は至って単純だ。
BUMP OF CHICKENのライブ映像に
衝撃を受け
バンドに目覚める少し前、
アコギを弾いていた僕が(第1話参照)
教室でイキリ倒してギターの話をしていると、
その女の子が
「ギター弾けるの?かっこいい!」
と言ってくれたのだ。
その一言で、僕のハートのBPMは320を超え
鋼鉄のリフをかき鳴らした。
心臓のブラストビートがその子に聴こえてないか
心配でしょうがなかった。
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好きな子に話しかけられ舞い上がる僕。
廊下を歩きながら話した。
玄関を出て、もっと一緒にいたくて、
何か話題はないかと必死に考えていた
その時だった。

通り雨が降ってきた。
僕らは校舎の軒下で雨宿りをした。
2人で雨が止むのを待って、他愛もない話しを
したあの時間は忘れられない。
何を話したかは覚えていないが、
僕の唯一と言って良い青春の思い出だ。

それ以来、この季節に突然降る大雨が
僕は好きだ。

そんな事を思い出しながら
コーヒーを啜ると、
雨はもう上がっていた。
そよいでいた鼻くそは、
ひらひらと
秒速5センチメートルで
落ちていった。
本棚の上
レンジの隣
こんなとこにも陰○は落ちてる

僕は窓を開け放して
ギターをアンプに繋ぎ
思いっきりかき鳴らした。
本当にしょうもない理由でギターを始めた
僕だが、
10年以上たった今でもギターを弾いている。
オーバードライブ
君に届くと良いな。




陰○。



お終い。


先日公開した『Pitch-Black』のMVが
早くも2,000回再生を突破しました。
3年のブランクがあった割には
かなり多くの人に観て頂いてます。
ありがとうございます!

このnoteでF.WALTを知りMVを観て下さった方は
0.1%もいれば良い方ですが、
今年中にこの割合を2%にまで引き上げられる
よう頑張りたいと思います。

また次回

8/6(土)F.WALTワンマンライブやります!


@f_walt_jp

いつもコーヒーを飲みながらこの文章を書いています。 一杯おごる感覚でサポートしていただければ幸いです。 そのお気遣いが活力になります。