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小さなことの積み重ねこそ、人生をつくる。-中井侃矢氏インタビュー 前編-

記念すべき"体温"第1回目の記事は、花屋STAYFLOWERを営む中井侃矢さん。

社会人2年目にして脱サラ、オンラインにてフラワーショップを立ち上げ、現在は都内の古民家を改装した花屋"KOYA STAYFLOWER"の運営も行っています。
勢いが止まらないように見えながらも、いざ話してみると、"ええ人感"が滲み出す中井さんの今とこれからのお話を伺いました。

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人生を豊かにするもの・人に出会える場所の創造

ーかんやさん、本日はよろしくお願いします!
(中井さんはインタビュアーの大学時代の先輩のため、"かんやさん"と呼ばせていただいています。)

お願いします!乾杯!🍻
(インタビュアーとカメラマンに缶ビールが振る舞われながらインタビュースタートです。)

ーまず、なんて今更!な質問なんですが、"STAYFLOWER"という名前の由来はなんですか?

STAYFLOWERは、Hi-STANDARDの「STAY GOLD」という曲からとったよ。
「STAY GOLD」は「輝き続ける」みたいな意味でいいなぁって思ったんやけど、
そのままやとギラギラ感もあるし(笑)、そうじゃない花屋を作りたいっていうのはあったから、少し文字って、「STAYFLOWER」になりました。

ーなるほど!そうだったんですね。
とはいえ、店内にミラーボール回ってたり笑、私の周りからは、
「あのイケイケのお花屋さん」ってよく言われるくらいですよ。笑
でも、実際にこのお店(KOYA)に来てもらったり、かんやさんと話してもらったりすると、かんやさんが理想としているものが絶対伝わる気がします。


ーインタビュー前に、かんやさんが書かれていたnoteを読み返しました。

当時は、"繋がり"ができる場にしたい。とも書かれていましたが、
改めて、店舗ができて3年経ち、どんなお店だと思いますか?

今は、縁側ができたり、テラスも作ったり、お客さんももちろんやけど、友達も集まってくれるような場所になったね。
ただ、あまりにも身内の空気すぎると、お客さんが入りづらくなるかもしれないから、そこは、自分がバランスをとるようにしてるかな。

ー縁側でくつろげる花屋なんてそんなになさそうですもんね。笑
元々の友達もそうですが、新しいお客さんも、リピートしてくれている方も、このお店の居心地の良さに触れにきたり、かんやさんやスタッフさんに会いにきたり、お花を買うという目的以外も含めてきてくれてそうな印象です。

そうやなぁ。そう思ってくれてて嬉しいよ。

ーKOYAでは、アーティストさんコラボで、作品の展示やグッズ販売などもされていますよね。
それはどういう繋がりでされているのですか?

知り合いだったり、紹介だったり色々かな。
どこでどうつながるかはわからないからね。
ありがたいことに、今はオファーいただくことも多いです。

KOYAは”花屋”じゃなくて、ライフスタイルグッズも扱う店にしようと思ってて。
ショップカードにもそう書いてあるよ。

いろんなポップアップは、"ライフスタイルブランド"っていうところに通づるところやから、これからも続けていきたいと思ってる。

"今、いいと思うもの"がSTAYFLOWERをつくる

ー花屋を始めた時とブーケなど自分の作品の作り方で変わった部分はありますか?

めちゃくちゃあるよ
昔は、昔なりに頑張ってたけど、今見返したら、目も当てれやん。笑
でもそれは、スタッフそれぞれも同じで、ブーケの作り方にしろ、事務作業にしろ、続けていることで、ちょっとずつ上手くなってきている部分もあると思う。

ーかんやさんは、過去を振り返らない方ですか?それとも昔の作品も振り返りますか?

あんまり振り返らない方かも。

ーそうなんですね。では、自己反省会みたいなことしたりとかもあまりしないですか?

うーん。そこむずくて、たとえばスタッフが作ったブーケに対しては、いい塩梅でフィードバックしたりすることはあっても、自分は誰かがアドバイスくれたりするわけでもないから、常に作り終わった瞬間に、自分で良いところ悪いところを考えるようにはしてるかな。
そして、良いところは、次も再現できるように、なんで綺麗と思うか?何でよくできたか?を常に振り返ってる。
何でそれがよくできたと思うのか、因数分解していくのが好きなんかも。

ー上手くいったな、というのはどういう時に感じますか?
素人の私から見るとどれも可愛いくみえて、優劣なんてないように感じますが。

ありがとう!(笑)
ここではそのポイントを挙げ出すと細かすぎてキリがないんやけど、自分の中で何個も基準はある
花の綺麗さだけでいうと、バランス、色合い、質感、、、そういうのが全部高いアベレージ、合格点を超えてきて高い総合点になるようにするイメージかな。

あのー、M-1で、上沼恵美子さんの点数、松本人志さんの点数、、みたいな。笑
そういういろんな基準点が他にもいっぱいあるって感じ。

あとはマニアックな話になるけど、ブーケを作った時に、全体的に散ってしまったら、俺的にはダメで、中心はぎゅってしているけど、何本かは点在していて、質感がいい、というようなこだわりもあるかな。

ーその基準点は何で設けたり、高めたりしていますか?

海外の作品をよく見たりしてるかな。そこからインスピレーションを受けていて、どんどんブラッシュアップしていってるよ。

ー海外の作品を見られてるんですね!
STAYFLOWERってよく町やSNSで見かけるようなお花屋さんと少しブーケのデザインとかが違う気がします。
他のお店との差別ポイントとしては、何を意識していますか?

気をてらった感じではほんまにないんやけど、スタッフ含め、自分らが思う、”今、これよくね?”みたいなのを大切にしてる。

ー流行らせたい!とか狙ってやってるとかじゃなく?

“これやったら、バズるかも。”とかはほんまに思っていないかな。
花屋をやり始めの1,2年目の時はそういう気持ちもあったけど。

ー狙っていないのに、STAYFLOWERファン界隈で、”文化を作ってる感”を感じます。STAYFLOWERが取り入れてるから、みんなが可愛いって思ったり興味持ち始めたり。

嬉しい。でも、ほんまにいいと思ったものをやっているだけ
そのいいと思う基準は、自分が見たもので蓄積されてできているから、文化を作っているかどうかはわからないけど、こういうスタイルにしよう、とかSTAYFLOWERっぽくしよう、とかは、全く思ってないかも。

ーそう言われると、STAYFLOWERっぽさって何ですかね?

難しいよね!
花のセレクトや花の使い方とかは、こだわってて、基準があるけど。

ーその基準は、スタッフにも共有しますか?

最低限のブーケの作り方は伝えるんやけど、あとは自由に任せているかな。

ーそれでいうと、かんやさんとスタッフさんのスタイルや"今、これいいな"っていうのはあまり大きく違ったりはしていないイメージです。

いや、好みの部分で言うと、違う部分ももちろんあると思う。
60点(合格点)はお互い同じものであったとしても、それが上回った時にお互いの個性が出てくるって感じかな。
でもそこを矯正するとかはしてなくて、個人の個性に委ねてます

ー個人の個性となると、特に得意な分野というのも生まれてきますか?それはどんなものですか?

ブーケを作る、大きいもの(会場装飾など)を作る、逆に小さく作るものなど、それぞれあると思う。
スタッフのあやめちゃんはラッピングが上手いな、と感じることがあって、あ〜そうやってすると良いんかって、盗んでる。笑
自分にない細かさとかを持っているなと思うところがあって、学ばせてもらってるよ。

今後、スタッフが増えていくと、そういう相乗効果は大きくなっていくのかなって思う。

ー確かに!今後も楽しみですね・・・!

インプットとアウトプットのバランス

ー先ほどの"今、これいいな"はどうやって見つけ出しているのですか?

インプットの方法はいくつもあって、本、映画、インスタ、Pintarestとか、普通にみんなと同じものを見てるよ。
アートブックもやし、活字の本も読むのが好きで、そういったインプットしたものが形を変えて、アウトプットされているのかもって思う。
例えば、さくらももこさんのちょけた感じは、抜け感につながったりとか!

ーへぇ。活字の本からもヒントを得ているんですね!
ーインプットは、取り入れよう!と思って、取り入れていますか?それとも、仕事オフモードの時にインプットしたものが、知らず知らずのうちにインスピレーションの元になっている感じですか?

最近はオフ、と思って色々なカルチャーを取り入れているかな。
前は、時間をとって、インプットの時間!と思ってやってみたこともあるけど、それでやると、義務感が出てきてしまって、逆によくないなと思えて来て、今はそういうふうにはしないようにしてる。

あと、インプットが減ってきたら、自分でもわかる。

ーそれはインプットの時間取れてないな〜って思ったりするってことですか?

アウトプットするときに、感じるかな。
お客さんに提案するものが同じものに偏ってしまったり、前もこういう提案しかできやんかったな、みたいな時があって。
もちろんその時はベストの提案を心がけているんだけど。

ちょっとでもそんなふうに思ったら、映画などの作品に触れてみて、(結果的に)インプットの時間を取るようにしているかな。

ー店舗でのポップアップだけでなく、最近はアパレルなどとのコラボなどもあるかと思いますが、そういう向こうの世界観もあるものとのアイデアってどう考えてますか?

コラボする時は、担当者さんからコンセプトの提案があったりもして。
そういう時は、そのコンセプトに合ったものを表現するためにどういうものがあるかな?とディグるパターンもあるかな。
普段はインプットからのアウトプットやけど、アウトプットのためにインプットしていくパターンもある。

でも、全てのイメージをコラボ先と合わせるってわけではなくて、あくまで方向性を合わす、というようなイメージでやってるよ。

ー確かにSTAYFLOWERの世界観が好きで、コラボレーションの提案があると思うので、完全に寄せるのは違いそうです。

うん、そうやなぁ。
あとは、実際にコラボ先の店舗にお邪魔させていただいて、その際によく目についた洋服の素材からインスピレーションを受けて生かした、ということもあるよ。

ー現地に行くことってめっちゃ大事ですよね。その場で感じたことでどんどん決まっていく、ということもあると思います。
オンライン文化がコロナ禍で浸透しましたが、”生”で触れる、というのは大事なことじゃないかと私も感じます。

葛藤の中で見えてきた二人の自分との付き合い方

ーその他、何か仕事を続けてきて、アウトプットでも内面でも、何か変化はありますか?

最近思ったことなんやけど、花屋は、経営するという側面と、綺麗なものを作るアーティスト目線の二つの側面が大きく分けてあって、それは同じ方向を向く時もあれば、相反する時もあるってことかな。

具体的にいうと、
金額に見合ったお花の本数のブーケを作った時(それは経営的な側面で)、
でも、あともう1本ここにこの花を入れたら綺麗やのにな、というふうに思う時がある。(それはアーティスト目線)
そこの葛藤は、どのお花屋さんでもあると思う。

その葛藤がそもそもあるということ自体を、これまでは認識できていなくて、悩んだ時期もあったなぁ。

でも最近は、自分の中にそういう二人の自分がいるというふうに捉えるようにしてる。そして、そういう葛藤が生まれた時は、二人を戦わせてる。笑

ーということは、どちらかが勝つ時がある?

結果的には、50:50で決着がつくことが多いけど、自分は今どっちの目線で考えているのか?を客観視できるようになったかな。

例えば、どちらかの自分が勝った時、もう片方の自分の目線で行くと、"負け"になってしまう。
でも、それ自体が悪いのではなく、二人の自分がいて、どっちの自分だったのか、と考えられるようになったから、モヤモヤすることなく腑に落とせるようなって、仕事がうまく行くようになったかも。

ーなるほど。そういう葛藤って、気づけばどんな場面にもありそうです。

そうね。
二面性っていうのは、他のお花屋さんにも共通する部分はあると思っていて、花屋という業種はどうしても、「入りづらい」「とっつきづらい」みたいなイメージを世間一般の方から持たれがちな気がする。

でもそれは、アーティストとしての見せ方にこだわった自分が強すぎる結果なんじゃないかと思っていて、本当はもっとお客さんに良い接客をしたいっていう気持ちもあるっていう葛藤を抱えているとすると、その二者を共存させる事もあってよくて、それが大切なんじゃないか、と思う。

あとは、お客さんから求められる時もこの考え方は応用できて、
例えば、ねぎられるようなことがあった時、
クリエイティブな自分が否定されたと感じる時もあると思う。自分もそう

でもそれは、クリエイティブな自分ではなく、経営的な部分で交渉が発生しただけであるというふうに棲み分けとして持っておくと、全部の自分が否定されているわけでもないと腑に落とせるようになった

ーなるほど〜。確かに、お客さん目線で言うと、費用抑えたいなとかも考えることもあるかもです。
今は作り手の想いとかをこうして聴いて回ってるので、リスペクトの気持ちを込めて、できる限りお互い気持ちよく買ったりしたいなって思うようになってきましたが。

そうよね。
自分もお客さんの立場になった時に、そりゃ安く済ませられるんやったら、と思うこともあるし、だから、歩み寄りながらも、譲れない部分を提示して、会話する、ということをするようになったなぁ。

今話したことが、これまでの花屋としてのジレンマやったけど、考え方が変わってきた、という感じのことです。

ーーーーーーー後編へ続く。

関連リンク🔗
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