見出し画像

21世紀へ #04

 試用をして、わかったのだが、
想わぬ不具合が発生したのだった。

「まず、僕が先に試してみるから。
おしっこでね」
 トイレに入って、着替えた。
パンツを脱いで、おむつを付けた。
 27歳のいい若者が、オムツをし
ている。傍から見ると、不格好に
違いない。上にズボンを履いて、
トイレを出た。

 トイレのドアの前で彼女が待っ
ていた。
「いま、オムツを付けているから。
これから、小の方をしてみるよ」
 彼女は僕のズボンの前の膨らみ
を好奇心いっぱいで凝視している。

「そんなに、僕の股間をみつめな
いでくれる?」
「あ、ごめんなさい」
と、彼女が目を逸らした隙に、お
しっこをした。

 瞬間に、オムツが吸い付いてき
た。ここまでは、未来の世界の、
日常生活で何回も体験しているの
で、予想通りの動作状況だ。

「いま、おしっこをしたけど、
うまく動作しているよ」
 彼女は、ふたたび、僕の股間を
見詰めた。
「いま。したの?」
「うん」
「気持ち悪くない?」
「ぜんぜん。快適だよ」

 ここまでは、予想通りだったが、
おしっこを分子レベルに分解した
後も、オムツは吸い付いたままで、
離れてくれない。

 オムツの中は真空状態で、僕の
秘部に吸い付いている。
「あれ?おかしいな?離れない」
思わず、言ってしまった。
慌てた僕は、彼女の眼の前で、
ズボンを脱ぎ、オムツを脱ごうと
した。

「きゃっ!」彼女は驚いて、僕か
ら、目を逸らした。

「どうしたんですか?」
「おかしい。オムツが吸い付いた
ままなんだ」
「ええー? オムツが吸いつくん
ですか?」
「オムツが吸いついたままで、脱
げない!」
 いくら、脱ごうとしても、脱げ
ない。

 そうこうしているうちに、僕の
息子は、親の意に反して、大きく
成りだした。
 親の言うことを一向に聞かない
道楽息子だ。
 大きくなった息子の膨らみが、
ハッキリ分かるほど、オムツがピッ
タリ張り付いている。

「やだー、社長。何、大きくして
るんですか? いやらしい」
 彼女は軽蔑のまなざしで、僕を
見ている。
「い、いや。違うんだ。これは、
男の生理現象で……」

 脱ごうとしても、いっこうに
脱げない。
 そうこうしているうちに、遂
に、その瞬間がやって来た。
「あっ!」 僕は、おもわず声
を上げた。
 すると、オムツはやっと、緩
んだ。

 僕は、急いでトイレに駆け込
んで、オムツを脱いで、中を調
べてみた。
 オムツの中はキレイなままだっ
た。

 ひと安心して、着替えて、ト
イレから出た。
 彼女に、その一部始終を見ら
れていたので、何とも気まづかっ
た。

「社長。 オムツが吸い付くなん
て、聞いてませんよ」
 彼女は、僕が手にしているオム
ツを見て、呆れているようだ。
「いや。これは、ものを分解する
過程で必要な機能なんだ。今回は
分解した後も、吸い付いたままに
成ってしまった」

「社長。大丈夫ですよ。失敗は成
功のもとです。 不具合を直せば、
問題なしです」
 意気消沈している僕を見て、可
哀そうに思ったのだろう。
 慰めてくれるのか。いい子だな。

「そうだな。次回はきっと、成功
するよ。さっそく、問題を検証し
て、不具合を修正するよ」

 数日後、不具合を修正し、バー
ジョンアップしたオムツを再び、
試してみた。

つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?