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人類は3種類の人間に分かれた #04


 明日からは、実世界の坂上ケン
タだ。心機一転、実世界でのし上
がってやる。

 目覚めると、カプセルの中にい
た。自分の手を見るといつもの見
慣れた手ではなかった。体は手術
着のようなものを着ている。

 自分の入っているカプセルを覗
き込んでいる、二人の人間がいる。
 一人は、原口で、もう一人は見
知らぬ人間だ。

 カプセルのフタが自動的に開い
た。僕は半身を起こした。あらた
めて自分の体を確認すると、いつ
もの見慣れた体ではなかった。

「やあ、目覚めたか」原口が僕に
向かって言った。
「これが、僕の体なのか?」
「そうだ。見てみろ」原口が鏡を
僕に手渡した。

 鏡を受け取り、見てみると、鏡
の中には見知らぬ顔が映っている。
 以前の自分よりも、なかなかの
男前だ。年恰好は同じくらいだ。

「なんか、変な感じだ」僕が顔を
しかめて云うと、「まあ。そのう
ち慣れるさ」と原口は言った。
 原口は一緒にいた男を僕に紹介
した。

「こちらは、脳医学博士の前田先
生だ。君の脳を電脳世界から移植
したんだ」

「電脳世界からやって来た人間は
これで、三人目だ。めったにある
事じゃない。おめでとう。君は今
日から、この世界の選ばれた人間
の一員に成ったわけだ」そういう
と、博士は僕に握手をしてきた。

「あのう? 本当に、僕で三人め
なんですか?」

「本当だ。この地上世界で暮らせ
る人間は選ばれた人間だけなんだ。
 君はその選ばれた人間の一人と
いうわけだよ」

「ありがとうございます……」

 僕は前田博士に礼を言った。
 それから、三人は別の部屋へと
移動した。「そこの椅子に座って
くれたまえ」前田博士は、椅子を
指さした。

 僕が椅子に座ると、前田博士は
僕の頭にヘッドギアのような物を
被せた。

「いまから、この世界で暮らすの
に必要な知識を、君の頭脳にダウ
ンロードする。痛くは無いので、
安心したまえ。すぐ終わる」

「ダウンロード開始せよ」と博士
がいうと、僕の頭の中に、走馬灯
のように知識が流れこんできた。
もの凄い情報量だ。めまいがする。

時間にすると、ほんの数分だった
のだろうが、僕には数時間が経っ
たような気がした。

「これで、ダウンロードは完了だ。
君はすぐにでも、この世界で暮ら
せるはずだ。ダウンロードしたの
は生活に必要な最低限の情報のみ
だ。後は、少しづつ、必要な情報
をダウンロードしてくれたまえ」
と、博士は満足げに言った。

「良かったな。坂上」原口は僕に
笑顔を向けた。

 なぜか、この世界の事が理解で
きた。ヘッドギアを被る前は、こ
の世界がどういう世界なのかも、
分からなかったのに、今は理解し
ていた。

 俄然、外の世界が見たくなった。
「ちょっと、外に出たいのだが、
良いか?」と聞くと、原口は許可
してくれた。

 博士に礼を言った後、着替えて、
原口と外へ出ることにした。

「君の住まいも用意してある。
案内してやろう」
 原口と一緒に、もといた建屋を
出て、これから僕の住む家へと向
かった。
 通りへ出ると、何人かの人間が
歩いていた。

 その服装をよく見ると、何かへ
んだ。

つづく

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