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中学のブラスバンド部の思い出 #06

                       テール

◆アンサンブルコンテスト

 中学3年のとき、子供音楽コン
クールに出場した。
 子供音楽コンクールの対象者は
小学生と中学生だ。

中学生で、「子供」と言われるの
は、少し抵抗があったが、小学生
も参加しているのだから、しょう
がないかと思った。
この子供音楽コンクールへのアン
サンブルコンテスト部門へ参加し
た。

フルート、クラリネット、トロン
ボーンでの参加だった。
 発表の舞台へ立つのは、何回立っ
ても緊張するものだ。
ましてや、少人数のアンサンブル
コンテストだ。
少しのミスも目立ってしまう。

しかし、この高揚感は筆舌に尽く
し難い。大勢の聴衆の前で演奏す
るために、舞台袖で、自分の演奏
の出番を待つ。

このときが、一番緊張する。
ありきたりの例えだが、心臓が口
から、飛び出しそうだ。
興奮度マックスだ。

そして、自分たちの番が回ってき
て、舞台へ出て演奏をする。

演奏が始まってしまえば、それま
での緊張はどこかへ行ってしまう。
演奏が終わるまで、これまでの練
習の成果を信じて、ただ、無心に
演奏するのみだ。

 演奏が終わった後の達成感はな
んとも言えない。
拍手を浴び、聴衆の前を去る。
この一瞬は達成感と爽快感に溢れ
ている。
 人気歌手がコンサートで、沢山
の聴衆の前で恍惚となる感覚が理解
できる。
人前での、この快感は忘れがたい。

 演奏が終わって、結果発表を待
つ間、一緒に演奏したフルートの
D子が、僕に教えてくれた。
「○○高校の先生が言っていたよ。
トロンボーンの子が、とても良かっ
た。うちに来ないかな? だって」

 それを聞いて、僕はすごく嬉し
かった。なぜなら、その○○高校
は私立の中学・高校の進学校で、
ブラスバンド部は上位に位置する
名門高校だ。

* * *

 中学生になると、小学生のとき
と違って、中間テスト、期末テス
トの成績順位が上位20番(学年は
3クラス120名程度)あたりまで氏
名が廊下に貼りだされる。

 そこではじめて、他人の成績を
知り、自分の実力を再認識するの
だ。
 中学生のときは、人を測るもの
さしが、人格とか、人の良さとか
ではない。勉強が出来ることが一
番えらい。
 勉強のできる奴が一目置かれる。

 1年生の頃の僕の成績は小学生
の頃と変わらず、成績はあい変わ
らず低空飛行だった。

 それが、中学2年の頃から、少
しづつ、変わってきた。
 きっかけは、算数の女の先生の
授業だった。その先生の授業は、
なぜか、すごく良く理解できた。

同じクラスの他の生徒に聞いても、
「あの先生の授業は、よくわかる」
と、評判だった。

 算数の授業が面白くなった。
それに連動して、国語、英語、
理科、社会の授業も面白くなって
来た。

中間テスト、期末テストの成績も
上がって、ベスト10に入ることが
出来た。

 そうすると、まわりの、僕を見
る目が少しづつ、変わってきた。
 それまで、僕を下に見ていた
連中は、距離をおいて近づかなく
なった。
 代わりに、成績優秀な子たちで
集まる、グループの一員になって
いた。

* * *

アンサンブルコンテストで、私立
の進学校の先生に高評価を貰えた
のは嬉しかった。この頃の僕は、
全国模試の成績からも、進学高に
入れる実力は有った。
底辺から這い上がって、進学校へ
行きたかった。

しかし、家は貧乏で、とても私立
の高校や、交通費のかかる遠方の
高校へ、通わせてくれるお金は無
かった。
貧乏な家の子は、どこまでも底辺
を這いずりまわる宿命なのか?と
思った。


        つづく


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