DS発売から早15年、衝撃再び!7/23先行発売「岩田さん」読後レビュー
こんばんは、ひつじはね太です。
今年1月ごろに何本か記事を書いたものの、そこからひたすら放置した結果、半年ぶりの更新となります。初めまして令和、さようなら平成。
さて、タイトルの通りほぼ日ブックスから7月23日に発売した「岩田さん」という本を読んだので、半年ぶりにキーボードをかたかたと叩こうと思いたちました。あまりにも久しぶりに書いているので、かなり苦労しながら書いているのですが、お付き合いください。
書籍「岩田さん」について
「岩田さん」はほぼ日ブックスから7月23日に発売された、任天堂元代表取締役社長の岩田聡さんについての書籍です。TOBICHIでの発売日が7月23日、一般書店発売日は7月30日なので、本日から書店で買えるはずです。
内容としては、ほぼ日刊イトイ新聞や任天堂公式ページに掲載された「社長が訊く」シリーズからの抜粋を、一人語りのかたちに再構成したものが主なので、岩田ウォッチャーの方からすると、特に真新しい情報はないかもしれません。
任天堂の宮本茂さんとほぼ日の糸井重里さんが、岩田さんについて語る特別インタビューはこの本のための企画ということで、その点はウォッチャーでも楽しめるやも。
かく言う私は、任天堂ゲームのファンとしてゲームは日々嗜んでいるものの、岩田さんについては多少知っている程度でしたので、終始面白く読ませてもらいました。
DS・Wii世代として、ひたすら感動の第5章
この本はいろいろなインタビューを、「岩田さんが社長になるまで」「岩田さんのリーダーシップ」とテーマごとに再構成しているのですが、第5章のタイトルが「岩田さんの目指すゲーム」。
もちろん岩田さんの経営やクリエイティブに対しての考え方も面白かったのですが、何よりもこの章がDSやWiiが発売された当時ちょうど小中学生だった自分としてはリアルに感じられる内容でした。
いくつか引用してみます。
わたしたちが目指すものは、もっと日常的に触れてもらえるテレビゲーム機です。ゲームで毎日遊ぶ、というよりも、日常にゲーム機が溶け込んでいるような姿が理想です。(p.141)
自分がインタラクティブに関わっていく遊びであれば、従来のテレビゲームのようなものでなくても構わないと思っています。扱うジャンルやテーマにしても、やっぱり、これまでと違う切り口のものがないと、興味を持つ人の絶対数って増えないと思うんですよ。だから、ニンテンドーDSのときは「ゲーム人口の拡大」を目指して、過去にゲームが扱ってこなかったテーマを積極的に取り上げて行きました。(p.144)
ここで取り上げられているような思想は、私にはとても納得感があります。
例えば、「日常にゲームが溶け込んでいるような姿」とありますが、
当時DSでは「どうぶつの森」や「ラブプラス」「nintendogs」など、24時間対応のゲームソフトが増えていました。
それらのゲームはぼくらの生活の一部として、同じ時間軸を刻んでいて、ある種ルーティン的にゲームを起動して遊ぶ習慣ができたわけです。
また「脳を鍛える大人のDSトレーニング」や「漢検DS」といった、知育ソフトが出始めたのもこのころです。これまでドラクエやポケモン、スマブラを遊んでいた身としては、ゲームをしながら勉強をする、という発想自体が新しかったことを今でも覚えています。
何よりの変化は、テレビゲームを嫌っていた母親が毎日のように「脳トレ」を始めたことでした。脳トレには、「細菌撲滅」という、ドクターマリオ的なゲームがついており、母親がひたすらにハマっていたのを思い出します。そのあたりから、我が家にはDSの台数が増え始め、ゲームは子どもが遊ぶものから、みんなのものに変わってきました。まさに我が家において、「ゲーム人口が拡大」したわけです。
なぜWiiのコントローラーは「リモコン」なのか
少し長くなっているのは承知のうえで、もう一つ。
第2章、「岩田さんのリーダーシップ」という章で、「成功した集団が変わることの難しさ」と題した節があります。
そこでは、「現状は正しいのか」を常に自問自答し改革をしていく姿勢を持ちながらも、「現状を否定はしない」ことの重要性が説かれています。
「いまよいとされているやり方は、ほんとうにただしいのか」ということを、わたしだけでなく会社中の人が疑ってかかって、変わっていく周囲の物事に敏感であるように仕向けていかないといけない、と考えています。(p.50)
といっても、成功を体験した集団を、現状否定して改革すべきではないと思います。(中略)世の中のありとあらゆる改革は現状否定から入ってしまいがちですが、そうするとすごくアンハッピーになる人もたくさんいると思うんです。(p.50)
ここから、岩田さんは成功を積み重ねた先ではなく、「非連続な変化を伴う決断ができるかどうか」という話につながります。成功を積み重ねて得た「いまよいとされているやり方」ではないことに、挑戦することが重要だと考えるわけです
そして章は少し変わりますが、Wiiのリモコンの話が出てきます。
Wiiのコントローラーの正式名称を「リモコン」にしようというのはわたしの強い要望でした。(p.155)
「なぜテレビのリモコンは家族みんなが触るのにゲーム機のコントローラーは触らないのか」というのは、Wiiを開発するうえでの大事なコンセプトでしたから。(p.155)
いま、十字ボタンとABボタンというインターフェースに誰も疑問を持たないですよね。でも、20年以上前には、多くの人が「これでゲームするの?」って疑問に思ったんです。ですから、ぼくらがこれからやるべきこととをしっかりやったら、いま、すごく変わったかたちに見えているものが、新しいスタンダードになっていくんじゃないかと思うんです。(p.155)
当時Wiiを初めて見たときの衝撃を思い出します。
Wiiの前にDSを見て、そもそも二画面の意味不明さに子供ながらに驚いたわけですが、Wiiではリモコンが縦長でよくわからないけど振って使ったりもするらしいと。画面に向けて操作したりもするらしい。もう衝撃でした。
今になれば、Switchのコントローラーでも同じことができるわけですが、Switchで驚かれたのは「携帯ゲーム機としてもテレビゲーム機としても使えること」であって、コントローラーが振れることではありませんでした。
VRゲームが増え始め、むしろ片手で握る形のコントローラーは増えてきています。最早Wiiのリモコンは「新しいスタンダード」になってきていると言えます。岩田さん、ほんとうにすごい。
しかもこのコントローラーは、それこそ「現状を全否定」していないわけです。いまあるコントローラーを、そのままでよいかを問い直した結果、「コントローラーいらない」ではなく、より身近に、より拡張した形にアップデートしたと考えられます。
片手で持つから、コントローラーは「振れるもの」になったし、「ジャイロで画面を指すもの」になり、結果的に遊び方自体も拡張されていきました。途中、宮本さんの言葉として
「アイデアというのは、複数の問題を一気に解決するものである」(p.104)
が紹介されていますが、Wiiのリモコンはまさにそんなアイデアだったのだろうと思います。
まとめ、任天堂の末恐ろしさ
さて、昔はゲームソフトの最近の傾向から、ものがたり受難の時代について書いたりもしたわけですが、今回はハード面で熱くなりました。
「日常的にふれてもらえるゲーム機」として、そして「ゲーム人口の拡大」を志向して作られたからこそ、「これまでによいとされているやり方」を乗り越えて「新たなスタンダード」を生むことができたのだろうと思います。これだけの流れが、机上の空論ではなく実体験として感じることができる、というのが任天堂の末恐ろしいところです。
この本、WiiやDSにハマった世代には最高に面白い本だと思いますので、ぜひ読んでみてください。
今年は本を50冊読むぞ!と意気込んでいるものの読書メーターにひたすら記録しているだけなので、たまにはレビューを書いてみようと思い立ち書き始めたら早1時間。久しぶりの投稿でしたが楽しんでいただけていれば嬉しいです。
オンライン読書会の話
実は本日7月23日に、恐らく日本最速の「岩田さん」についてのオンライン読書会に参加したので、そのことについて話したかったのですが、書いているうちに全然違う方向に。主催者の高橋さんが、イベントレポを書くそうなので、公開され次第リンクを貼ります。