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起業家は、死なない。代理店をやめて、もう一度スタートアップします。

2022年5月22日、今日で32歳になったPien代表の森泰輝です。

大学生で起業したとき、30歳をすぎたら、日本を代表する起業家になっていると思っていました。

ただ、理想と現実は程遠く、現在は小さな会社を経営する起業家です。お世辞にも「日本を代表する起業家」とは言えません。

かつてはそうした未来が見えたように思えたこともありましたが、実力不足で理想を現実にできませんでした。

約束の30歳からもう2年が過ぎてしまい、自分に対して情けない気持ちがあるのは事実です。

ただ、今日もこうして文章をかけているのは、僕のやるべきこと、やりたいことが、少しずつクリアになってきたから。

誕生日という節目に、VAZの代表を退任してからどんなことをやってきたのか、これからどんな未来をつくっていくのかを、ぜひみなさんに語らせてください。

創業まもなく、倒産の二文字


VAZの代表を退任してから、少しのあいだ抜け殻のようになっていましたが、もう一度だけ挑戦しようと、TikTok運用に特化したマーケティングエージェンシー・Pienを立ち上げました。

一度は長尺動画プラットフォームのYouTubeに完敗した短尺動画プラットフォームですが、TikTokというモンスターアプリの登場により、その構図が大きく崩れる。そんな未来が見えたので、このチャンスをものにしようと考えたのです。

このとき、VAZでの経験を踏まえ、「スタートアップの経営をしない」と決めました。

「世の中に新しい価値を提供できている」という自負を持ち、IPOを視野に入れた夢のある経営ができていたのですが、僕の実力不足で計画が頓挫してしまったからです。

記憶に残っている人が少なからずいると思いますが、炎上騒動やタレントとの契約解消など、みなさんにご心配をおかけする事態を何度も招いてしまいました。

ひとえに僕の実力不足が原因だったので、これからはメンバーや投資家の方々に迷惑をかけず、それでいて社会に価値を生み出せるスタイルを貫こうと決めました。その結論が、代理店としてコツコツと売り上げを積み上げる、地に足のついた経営です。

Pienは創業して間もない段階で、いくつかの大手企業様から依頼をいただくことができました。経営をしながら、「このまま成果を上げ続ければ、クライアントとメンバー、そして社会にとって“三方よし”の会社になるぞ」という感覚を持つこともできていました。


……ただ、またうまくいきませんでした。会社を共同創業したメンバーとのトラブルが発生してしまったり、自分自身がプレイヤーとして事業にタッチしすぎてしまったりしたせいで、さっそく赤字経営になってしまったのです。

これがスタートアップなら仕方のないことですが、Pienは「地に足をつけた経営を目指している広告代理店」だったので、致命的な問題です。

創業して一年も経たないうちに、「半年後には倒産する」というところまでいってしまいました。

そのときの絶望感といったら……。僕を支配していたのは、「潰れるかもしれない」という恐怖感ではなく、「スタイルを変えても失敗するのか」という悔しさと情けなさです。

次のアクションによっては倒産が確定してしまう状況だったので、最小限のチームで動かなければならず、Pienは僕と社員ひとりだけの会社になりました。苦渋の選択でした。

どうせ倒れるなら、前に倒れよう


創業まもないPienを倒産寸前のところまで追いやってしまい、しかもVAZでの失敗経験を踏まえたうえでのことだったので、自分は天才ではないことを痛いほど実感しました。

でも、まだ諦めたくないとも思いました。

ただ、すぐさま直すには、あまりにも自信と勇気が傷ついていました。

はやる気持ちを抑え、一度立ち止まって考えなければいけない。そしてもう一度、自信と勇気を取り戻さなければいけない——。

頭を捻り続けた結果、たどり着いた答えは、「自分が得意なことにリソースを集中する」というシンプルなものでした。

僕は過去に一度だけ、書籍を書いた経験があります。VAZの立ち上げから退任まで、その過程で気が付いた「配られたカードで勝負すべきだ」という人生哲学をつぎ込んだ本です。

僕は起業家になる以前、あらゆることができないダメ人間でした(今もできないことは減っておらず、むしろ増えているくらいで、引き続きダメ人間です)。

かつてはダメな自分を克服しようと躍起になったこともありましたが、どれだけ頑張っても無理でした。だから、諦めたんです。「好きで得意なことだけをしよう」って。

これが、僕の人生の転機でした。

実務作業が苦手で、言われたことを実行できず、自分なりの方法論ばかり考えてしまうくらいなら、いっそサラリーマンは諦めよう。でも、コンセプトを考えたり、それを伝えることで未来に期待してもらったりするのは得意だから、起業家にならなれるんじゃないか?

そう考えて方向性をシフトしたら、年商14億円の会社をつくることができました。コンビニバイトをクビになった僕が、です。

いまこのタイミングで、人生を形作ってきた原点に立ち返れば、なにか光が見えるかもしれない——。

そんな一抹の期待を持ちながら、藁にもすがる思いで課題と改善策を考え続けた結果、僕は「自分が苦手なことで頑張っている」ということに気が付きました。

本を書いておいて、本当に皮肉な話です。

天才ではない僕は、「新しい概念や方法論を打ち出す」以外の能力を持ち合わせていません。組織をつくる統率力もなければ、既存のビジネスでコツコツと売上をつくる商才もありません。

それにもかかわらず、VAZの失敗で臆病になり、スタートアップの経営を諦め、手堅いビジネスをしようとしていたのです。できっこないのに。

また、「VAZの創業者の森泰輝」という肩書きで仕事をしたこともまずかった。固執しているわけではありませんが、その肩書きがあってもらえている仕事があったのは事実です。

もう数年もすれば、VAZを立ち上げたことなんか、誰もが忘れているはず。だから、いますぐにでも、過去を武器にしない生き方をしなければいけませんでした。

現状を客観視できたことで、状況をガラリと変えるための一手を探す決心がつきました。

本当は人に会いたくなかったし、経営がうまくいっていない話をしたくはなかったけれど、動かなければなにも始まりません。

黙っていても、どうせ会社は潰れます。だから、どうせ倒れるなら、前に倒れようと思いました。

起業家の魂に火を付けた、ひとりの女性と出会い


「森くん最近どう?うまくいってる?」という質問に苦笑いをしながら、毎日毎日、とにかく人に会い続けました。

温めたいくつかの事業プランを相談し、人を紹介してもらいながら、苦境を打破するチャンスを探し続けました。

すると、ひとりの女性に出会うことになります。女性の健康をサポートする漢方整体サロン「りんどう」のオーナー・よし子先生です。

漢方領域で事業を立ち上げるというのも一つのプランだったので、よし子先生にサポートをいただき、彼女にもなんらかのメリットを提供できればという気持ちで、最初は話をしていました。

ただ、すぐに僕の気持ちは変わりました。よし子先生が社会に与えている価値が、あまりにもすさまじいものだったからです。

「りんどう」では、女性の妊娠をサポートするサービスを提供しています。よし子先生は知る人ぞ知る妊活アドバイザーであり、これまで不妊に苦しむ何人もの女性の妊娠をサポートしてきました。

日本は、2022年4月から不妊治療の保険適用が開始されました。ただ、これまで、数えきれない女性たちが不妊に苦しみ、多額のお金を投資して、心がボロボロになっていたと聞きます。

しかし、よし子先生のサロンに通っていた女性たちは、一度は「もう妊娠できない」と覚悟したところから、奇跡的に子どもを授かっているというのです。

僕にはその理由が分かりません。でも、よし子先生の存在が世に知れ渡れば、悲しみから救われる女性が、そのパートナーが、たくさんいることだけは分かります。

次に挑戦する場所は、ここにありました。

よし子先生に、そして「りんどう」に、僕がずっと携わってきたショート動画の力で、大丸福岡の店舗を飛び出してもらおう。そして、不妊に悩むすべての人を、苦しみから救い出そう。

これが、苦境に立ち竦んでいた僕の起死回生の一手、「専門家インフルエンサー事業」です。

世界は情報で溢れかえっていますが、本当に信頼できる情報は一握りです。それを見つけ出し、社会に浸透させ、なおかつビジネスとしてスケールさせられれば、会社を設立した当初よりも、もっと“三方よし”の世界を実現できます。

この構想をよし子先生に打ち明けたところ、僕を信頼して、一緒に事業をつくってくれる決意をしてくれました。

SNSの運用やLPの設計といったマーケティング、ECサイトシステムの立ち上げ、カスタマーサポート……事業をDXし、設計から運用までをすべてPienが行っています。僕らがやるべきことは、いわば、オンライン上で店舗を完全再現することです。

よし子先生のアカウントは、運用から一ヶ月間で500万再生を記録しました。SNS集客を起点とするECサイトの売上も、店舗単体の売上を超える勢いで急成長しています。

そして、よし子先生に届く「ありがとう」の声が、どんどん増えている。これほど、自分の能力が、社会の役に立っていると感じたことはありません。

令和のスターは、SNSから生まれる


振り返ってみると、僕が得意なことは、「まだ世の中が知らない天才を見つけ出し、スターにする」ことでした。

ショート動画で人気を獲得していたスカイピースや、YouTuber出身で初めて雑誌モデルになったねおちゃん。VAZの中にプロダクションを結成したNEXT STAGE。

彼らが彼らの実力でスターになったのは疑いようのない事実ですが、彼らがスターになるための後押しはずっとしてきました。

プロダクションというビジネスモデルをスケールさせ続けることはできませんでしたが、「まだ見つけられていない天才を見つけ、スターにする」という“得意”は、他にも接続先があります。

僕は唯一といっても過言ではない、人に誇れる“得意”を、いったん「専門家インフルエンサー事業」につぎ込むことに決めました。

飛び抜けた能力とは言えないけれど、事業創造も苦手なことではありません。これを得意にかけ算して、クライアントとPienを成長させながら、目の前の苦しみを遠ざけられずにいる人たちを救い出します。

現在はもちろん、よし子先生以外にも、専門家のインフルエンサー化を進めています。例えば、なかなか人に相談できない女性器の悩みを解決する「銀座あゆみクリニック医院長」のあゆみ先生。

「りんどう」同様、こちらも事業提携から数ヶ月で実績が出始めています。YouTubeのチャンネル登録者を増やしたり、それによってリーチを増やしたりするだけでなく、リスクを共有して事業そのものを成長させていくつもりです。

ここでご紹介した2名のほかにも、価値を届けるべき専門家の方をプロデュースさせていただくことが決まっています。今月中には発表できそうで、いまから楽しみです。

ダメな自分でも、武器なる


まだまだ事業規模は小さく、VAZを経営していた頃に比べれば、売上は微々たるものです。

しかし、自分が経営する事業に大きな社会意義を感じており、なおかつ今後スケールする未来も鮮明に描くことができました。

詳細は時間を空けてお伝えしますが、これから大きな動きがある予定です。これからの数年間は、曲がりになりにもシリアルアントレプレナーとして、本気の勝負をしていきます。

そして最後に、このnoteを最後まで読んでくれたみなさんに伝えたいことがあります。もしかすると、VAZを経営していた頃から、ずっとnoteを読んでくれていた人がいるかもしれません。

更新が滞ってしまったので、「経営がうまくいっていないのではないか」と心配させてしまったかもしれません。

ただ、森泰輝は元気です。これから「専門家インフルエンサー事業」を大きく飛躍させ、あなたの悩み困りごとを解決するために、起業家としての人生を使っていきます。

人生に空白期間ができてしまいましたが、それでも立ち直れたのは、ダメな自分を受け入れ、苦手の克服を諦め、得意なことにすべてを注ぐ覚悟ができたから。

ダメな自分でも、武器になるんです。


編集協力:オバラ ミツフミ


Misfitsの森泰輝です!誰もがSNSのパワーを享受できる未来に向けて事業を創っています。書いてほしい記事のリクエストがあれば教えてください!