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ベルリンの優しさ

ベルリンは冷たい街だ。
誰がどんなことをしていようとも、どんな格好をしていようとも、どんな人種だろうと、誰も気に留めなんかしなかった。

多分この街の人たちは、他人に無関心なんだと思う。
それが旧東ドイツ時代に作られた、無機質な建物と、
一日中小雨が降る冷たく乾燥した空気が充満する気候と相まって、
この街自体が何事にも興味を持っていないのじゃないかという錯覚を持たせる。

でも、’冷たい街’だからこそ、誰かにとってはとても住みやすい街なんだろう。

例えば社会的マイノリティー、もっと広義な言い方をすれば社会のはぐれもの、変わり者だとか。
だって、どんな格好をしても、どんなことをしていても。誰といたって、この街の人たちは何も気にしない。
つまり、多少社会一般で言われている’普通’から外れていたって、誰も文句なんて言わないのだ。
現に、ベルリンは世界一ゲイフリーな街としても知られている。

多分、この街の’冷たさ’というのは’暖かさ’でもあるのだ。
どんな人がいたって気にしないし、どんな人でも受け入れる。

道端で一緒にタバコを吸ったベルリンの若者が私に言った、
’これだけは覚えといてくれ、ベルリンのやつらはみんないいやつだぜ’

’冷たい’と’暖かい’は普段は対極にあるものだ。
でも、何があっても全てを受け入れてしまうこの街では、
’冷たさ’も’暖かさ’も同じ意味になってしまうのだ。

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