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「立つために座るイス」開発日記

はじめまして。
大邦機電(たいほうきでん)のタナアミと申します。

大邦機電は段差解消機という福祉機器を
製作している福祉機器メーカーです。
たった3人(父・娘・エンジニア)の小さな会社で、一点一点、オーダーメイドで福祉機器を作っています。

段差解消機ってなに?
という方がほとんどだと思うので、
簡単に説明します。

シンプルに言ってしまえば、
段差を乗り越えることが困難な方が乗る
段差を垂直移動する台(装置)です。

コンサートでアーティストがステージの下から上がってくる装置をイメージしてもらえると分かりやすいかと思います。あの装置は段差解消機とは違いますが、構造的にはとても似ています。

大邦機電は、約40年程前に家庭用の段差解消機を日本で初めて商品化しました。それ以来、ずっと段差解消機を作り続けています。

そんな弊社ですが、この度、「立つために座るイス」の開発をスタートさせました。


立つために座るイス
って書くとなんか不思議な椅子ですね。

椅子は本来、座るためにあるものです。
しかし、私たちが造ろうとしている椅子は、
立ち上がるために使う椅子です。

福祉機器の世界では、
「昇降椅子」「昇降座椅子」「起立介助椅子」
なんて言われたりもしています。
座面部分が昇降し、立ち上がりをサポートしてくれる椅子です。

実は40年程前に弊社でも、
立ち上がり補助の昇降椅子・昇降便座を
開発・商品化していましたが、
市場規模と価格帯の関係で製作を中止している状況でした。

そんな中再び、
昇降便座(昇降椅子のトイレ版)の
開発をさせていただく機会があり、その際に
「市販されている商品よりも高く上がる椅子」
という要望を多くいただいたため、
この度改めて開発を進める決意をいたしました。

今はコロナの影響でユーザーの皆さんとお会いすることもできず、HCR(国際福祉機器展)も中止となってしまったので、オンライン上でアンケ―トを作成し、ユーザーとなり得る方たちに声を寄せていただくことにしました。

アンケートの展開先は、
以前、昇降便座を購入いただいたユーザーのTさんに相談し、Tさんが所属されている患者団体(顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの方たち)や情報交換コミュニティに展開していただいています。

アンケートの次なるステップとしては、
アンケートの回答結果を元に、オンラインで障害者当事者とご家族の方のコミュニティにて座談会を開催し、皆様の要望やご意見を伺う予定です。



ユーザーの声から製品を開発するということは、簡単なようでとても難しく、覚悟が必要だと改めて感じています。

期待を裏切ることになったらどうしよう。
自分たちの技術が追い付かなかったら・・・
開発費だけがかかり、売れなかったら・・・


そんな臆病な私をよそに、
父は毎日楽しそうにドラフターで設計図を書いています。
エンジニアと日々議論を交わしています。
私には、技術も知識もありません。
ただ、私にやれることは、大邦機電と世の中を繋ぐことです。

私がその使命をしっかり果たすためにも、
開発までの記録を発信していきますので、
見守っていただけますと幸いです。

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