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適材適所の大切さ(インタビューnote)

(このnoteは約4,000字です)


今回、京都府で農家をされている方に農業体験をさせていただきました。
次の転職先の候補として、農業に関わるサービスを考えているため、一度、農家さんに直接話が聞きたいと思い、今回の体験をお願いしました。
友人の紹介で教えていただいた方でしたが、聞いていた通り、こだわりを持っていて、良い意味で癖のある方でした。
また、ルーツや考え方に共感する部分もあったので、体験を経た学びを整理したいと思います。

※以下、「農業体験を終えて」までは農家さんが主語となっていますのでご注意ください。

なぜ農家になったのか?

自分がやらないといけない仕事なのかなって思ったんです。この仕事(飛行機の製造)はセンスが必要な仕事だし、説明書通りやればある意味誰にでもできる代替の効く仕事でした。上司から、「お前の代わりなんていくらでもいるんだぞ」って言われて、「そうだよな、俺じゃなくてもいいよな」って思ったのがきっかけです。上司はたぶん、ハッパをかけたつもりだったんでしょうけど、僕にはそれが後押しになっちゃいました。笑

自分にしかできない仕事で、しかも人の役に立つ仕事がしたかったんです。飛行機も多くの人の役に立つ仕事かもしれない。でも、その実感があまり持てなかったってのもあります。飛行機って別になくても大丈夫なものじゃないですか。遠くに行きたいから必要なだけであって、別になくなったからって死ぬわけじゃない。そういうものには、あまり魅力を感じませんでした。それより、人の生活に根ざした必要不可欠なものを提供して役に立ちたいと思ったんです。

 人の生活に根ざした必要不可欠なものを考えたときに、まず浮かんだのが衣食住の三つでした。衣食住ってどれがいいかなって考えた時に、欠かせないものって"食"だなって思ったんです。衣も住もたしかに欠かせないけど、なかったら死ぬのかって言われたらそうじゃないなと。極論ですけど笑
でも"食"は違う。ないと絶対にダメなわけじゃないですか。当たり前ですけど死んじゃいますから不可欠なわけです。その"食"について自分にしかできないことがあるんじゃないかと思いました。

無肥料農業との出会い


ある時農家さんのところに行く機会があったんです。そのときに、食べた野菜が本当に美味しくて。「買わせてください!」って言ったんですけど、「そんなに大量に作れないから無理。うちの畑の手伝いをしてくれるなら分けてあげるよ」と言われました。でも、当時はまだ整備工をしていたので、畑を手伝える余裕はありませんでした。だから、一念発起して農家の道に進もうと決めました。

なんでそのときの野菜が美味しかったのかって言うと、無農薬で育てていたからだそうです。そんなことでこんなに差が出るのかと思い、自分で勉強してみたら、なんか肥料を与えなくても育つらしいということを知りました。 
試しに育ててみたら、本当に育ちました笑

確かに肥料を使い、農薬を使っているものに比べて大きさもできるスピードも落ちます。でも、自然の仕組みをそのまま利用して作っているのでたくましい野菜になるんですね。生存本能が野菜を美味しくするんです。

肥料や農薬を与えて育てている野菜は必要以上の栄養を与えられているので、外的にもろくなるんです。温室育ちでメタボの子供より、自然に触れながら育ったことの方がたくましいじゃないですか。あれと同じです。

それに、野菜は太陽からのエネルギーから光合成を行い、糖を合成しているので甘くなっています。また、形を維持するための細胞壁をつくるために窒素を使用しているんですが、肥料などで育てると窒素が必要以上に短期間で与えられてしまうことになるんですね。

それだと、周りは強くなっても、結局、中身はあまり育たない状態で甘くならないんです。無農薬の野菜は大きさは小ぶりですが中身がしっかりしているので、みずみずしさや甘さが強く感じられます。

また、化学肥料を使って育ちが早すぎる状態を意図的に作り出しているので、虫からすれば「ん?なんかあの大根、育ちが異常に早いな」と異常に気付くわけです。そこで、自然淘汰が働く。だから、肥料を使わずに育てると、使った場合に比べてほとんど虫が来ません。
農薬と肥料っていうのはセットなので、どちらかを使えば、もう片方も使わないと成り立ちません。

あと、スーパーに並んでる野菜って、どれも同じですよね。あれって、ああいうものしかできないように作っているんです。いわゆる、第一種と呼ばれる種だけを使っているので、優性の法則で全部白の大根とか、オレンジの人参になるわけです。

この第一種と肥料・農薬の組み合わせは大量生産としては非常に優れた仕組みです。
戦後、高度経済成長期に爆発的に増加する人口を食べさせていくにはこの仕組みが適していたんです。

でも、今は違う。今は、人口減少化という問題やいろんな食べ物が選べる時代になってきていてものが飽和している時代です。こういう時代だと、あんまりこの生産は求められなくなってきてるんですね。

だから、よりおいしいとか、より安全な野菜を求める人が増えてきている。ただの大根や人参じゃなくて、無農薬やおいしいといった付加価値を求める人が増えてきてるんだと思います。

持続可能な社会を目指す

じゃあ、美味しい野菜を作ってそれを届けるだけじゃ、別に農薬を使っても美味しければ良いんじゃないのと思いますよね。でも、無農薬農業にはもっと重要なポイントがあります。それは、土壌を守ることです。今まで私達を支えてきた農薬栽培は、いわば土を媒体として、栄養を与え害虫をはねのけ成長のサイクルを早く回すことで大量生産を可能にしてきました。
しかし、土壌は有機物であり、農薬使用によって土壌内のバクテリアが死滅していくと、土壌はただの砂になっていっちゃうんです。
いわゆる、"痩せてしまう"というやつです。
こうなると、もうそこは砂漠のようになっていってしまいます。それでは、いくら肥料を与えようと作物は育ちません。

現在の農家の95%がこういった農薬栽培をしており、そういった方たちが人々に大量の野菜を届けてくれているから、私達は自由に好きな範囲で作りたい野菜を育てることができます。
しかし、このままのサイクルを続けてしまうと、やがてすべての畑には作物が育たなくなってしまいます。今の大量生産は持続しないんです。

たぶん、僕たちの世代や君たち(20代)はまだ大丈夫だと思います。
でも、それ以降の世代はわかりません。
だから、自分の子供やその孫の世代になって苦労させるのなんて嫌だなと思ったんです。だったら、自分の力で少しでも変えていこうじゃないかと。

無農薬栽培によってできた野菜の美味しさを知ってもらい、栽培に関する正しい知識を与え続けることが自分にしかできないことなんじゃないかと思っています。


マスじゃなくニッチなことのほうが自分には向いていた

大きな団体や、組織に所属してそういった活動を広げるという選択肢もあります。その方が、思いを伝えられる人数も多いし効率がいいんじゃないかと思いますし、その通りだと思います。でも、僕が今のように無農薬農業をしながらやっていこうと決めたのは、自分にとってその方が合っていたからなんです。

僕は学生時代、人の個性や才能を分析する「個性学」を専攻していました。
それによると、僕は、大きいことじゃなくて小さいことを相手にしている方が向いているそうなんです。

人には適材適所があるので、大きい相手が向いている人はそっちをやればいいし、僕のように小さい相手の方が向いている人はそっちをやって分担したほうがうまくいきます。

アリやハチでさえ、それぞれ役割分担をしてあれだけ大きな社会を作ってるわけです。
より多様性のある私たちが、適材適所をしない方がおかしい気さえしてきます。

前職で言われたんですが、いいビジネスマンっていうのは生産性が高いとかではなくて、自分の与えられた役割に最大限の時間を割ける人、つまり、自分の役割に没頭できる人なんだそうです。だから、僕に与えられた役割は、この小さい相手に対して一生懸命尽くすことだと思います。

「個性学」
一人ひとりが生得的に備わっている(生まれ持った)『特性や能力』を客観的に理解し、それを磨き発揮することで、社会の発展に貢献し自らも幸せになるために確立された《実践学》

食べチョクなどのサービスについては?

いいサービスだとは思うんですが、自分のところでは導入していないですね。作れる量がまだまだ少ないので、それだけの人たちをまだ相手にできないんです。

だから、最近、法人化しました。こういった農業体験を企画しているのも、農業に興味をもって自分と同じような気持ちで活動してくれる人や、一緒に農業をしてくれる人を探すという目的もあります。ゆくゆくは導入したいなと思いますね。

子供達に”本物”を味わってほしい。


人間の舌って、味を感じるだけじゃなくて、その食べ物が体にとって良いものなのか判断している”門”の役割も果たしていると思っています。だから子供の間は、免疫も未熟だから門が厳しくて吐き出すことも多くなってしまう。でも、そのときに”本物”の美味しさを食べてもらうことができたら、それが基準になると思うんです。

自分の子供には、少しでも安全で美味しいものを食べてもらいたい。その後、子どもたちが自分たちの判断で、農薬を使った野菜を選ぶんならそれでも良いんです。ただ、”本物”を知らないまま選択肢を狭めてしまうのは嫌だなと思います。

今後

SDGSなど、持続可能な社会を目指す動きが活発になっていく中で、これから先、ますますこういった無農薬とかへのニーズが高まっていくと思っています。それで少しでも多くの人に”本物”の美味しさを味わってほしい。そう思うだけでやる気に繋がります。

前職をやめるときは、不安でいっぱいでしたが、その後、一回も後悔したことがありません。人生は有限なのでいつ死ぬとなっても後悔しない生活を送りたいと思っています。

だから、しんどいこともありますが、やりたいことができている今が一番楽しいです。
やっぱり自分に与えられた役割はここなんだと思います。

これからも、この気持ちを大切にしながら頑張っていきたいと思います。

農業体験を終えて

 今回、農家さんのこだわりや仕事を肌で感じたいと思い、農業体験をお願いしました。農家さんに直接あって話をさせて貰う機会は今までなかったので、いろんな発見を得ることができました。

作るときのこだわりやその思い、なんでそもそも農家をやろうと思ったのかなど、実際に会って聞いてみないと感じられないことがたくさんありました。物事に真剣に取り組んでいる人の話は説得力もあり、自分になかった考えに触れることができたので本当に良い経験をさせていただきました。
改めて、一次情報の大切さを感じました。
 
自分と同じように、転職という不安を乗り越えていたことや死ぬときに後悔したくないからといった似た価値観を持った方だったというので、余計に話がすんなりと入ってきたのだと思います。

こういった経験は初めてでしたが、自分が本来いるコミュニティ外の人との関わりはそれまでの自分の触れてきたものとは違うものを感じさせてくれるなと思いました。
こういった素敵な出会いを作ってくれた友人に感謝したいと思います。

自分は人見知りで社交的な方ではないと思いますが、人との出会いは本当に面白いなと思いました。
また、機会があれば伺いたいと思います。
 
 

ありがとうございました。

全部本当においしかった!!
農家さん、ありがとうございました!!

・紫 菜の花

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