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教員3年目のはなし

教員3年目に突入した私は、前の年に持った学年をそのまま持ち上がって、2年生普通科理系の担任を持ちます。この年に最も力を入れたのは授業改革です。これまでは、英語の授業で英語を教えることが仕事で、そこにしか注目してきませんでしたが、ある時、同僚の先生方と、Most Likely to Succeedという教育のドキュメンタリー映画を見ます。この映画をご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、もし見たことが無かったら、是非見てみてほしいです。アメリカのサンディエゴにあるHigh Tech Highという比較的経済的にも恵まれていない地域にある公立の学校が教育改革をして、驚異的な成果を上げています。その教育内容はこれまでの古典的なカリキュラムではなく、生徒の創造性を引き出し、実社会により則した、Project Basedな学びを学校単位で実現した学校と、その教員たちについて描いたドキュメンタリー映画です。これを見て、8割以上の高校生が、大学入学試験・卒業試験を終えた1ヶ月後に同じテストをしたら、半分もスコア取れないというデータ、つまり、高校での詰込み学習による学びのほとんどは、無駄になってしまうということを知って、確かに自分が高校生の頃を振り返ってもそうだなと納得しつつ、自分が今実践している教育や、教えていることは、生徒の未来にどれだけ残るのだろうか、本当に為になっているのだろうかということを本気で考えさせられました。そこである種自分の中で腑に落ちた結論が、

「生徒の記憶に残る授業をしよう。」

です。また、我々教員は、教科担当である前に、1人の教師です。各教科の授業を通して、社会の様々な事象や課題に対しての見方・考え方を教えなければなりません。特に英語科に課せられている資質能力は、コミュニケーション能力であり、英語教師はこのコミュニケーションについて深く研究し、理解したエキスパートである必要があります。それと、教師の色や経験を掛け合わせて、生徒に生き方を伝えていく。これが、私が目指す授業となりました。

校内研修での発表

校内での前例はあまりない中での授業実践でしたが、とりあえずやってみようというマインドセットで、校内の教育魅力化コーディネーターと協力して授業づくりを行いました。またいつかこれらの授業実践についても細かく書いてみたいと思いますが、簡単に紹介すると、英語の教科書で商品開発についての英文を学ぶ章がありました。そこで、英語の授業では最終ゴールとして「商品開発の髄を知って、実際にターゲットを意識してプロダクトデザインをする」という単元の目標を立てました。単元の目標がより、実生活に則すことで、英文をただ読むだけでなく、読んで考える意義付けがなされ、より深いやり取りのある授業となりました。そして単元末では、実際に一流企業で商品開発をしている方をお招きして2日間にわたり、講義とワークショップを行いました。実際に生徒は発案した商品のプロトタイプから完成品まで作成し、ターゲットとして選んだ先生への聞き取り、そしてその先生にプロダクトをプレゼントするところまでたどり着きました。普通の授業では決して起こりえない、生徒の創造性と刺激したPBLの実践ができた良い例だったと思います。この他にも、教科書でスポーツマンシップについて学ぶ章では、地元のメインスポーツであるラグビーのスポーツマンシップ、そして当時話題だったONETEAMについて考える単元を行い、最終的に地元のプロチームのコーチと現役選手をお招きして、講義と、ONETEAMを実感するトレーニングを行いました。これも間違いなく、記憶に残る授業だったと思います。
もちろん、このような授業実践には批判もありました。英語の授業なのに英語と関係ないじゃないかとか、意味はあるのかとか。しかし、もちろん案オーソドックスな授業であったことは確かだし、改良の余地はありますが、教科の呪縛に囚われた授業展開から離れて、生徒に伝えたい大切なことを大事にしたこの授業展開を教員生活3年目に行うことができて、自分の授業に関する感性がすごく磨かれましたし、生徒にとっても記憶に残る授業であったことは間違いないと思います。
また、英語文法の授業では、1年間の文法学習の最終ゴールとして学級として短編小説集を作る授業を行いました。このクラスは習熟度別で行った文系クラスの上位クラスだったので、非常にハイクオリティーなものが出来上がり、最後に地域の方も招いた発表会では多くの方に生徒の作品を楽しんでもらえました。このことについてもまた紹介したいと思います。(これはかなりやりがいがあって、自信のある授業展開です。)

ほとんど授業について書きましたが、他にもいろいろあった3年目でした。これ以上書くと徹夜になりそうなので、このくらいで終わりにします。
いよいよ次回は、3年担任をした教員4年目です。


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