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【人道支援パレスチナ】自分が見た海外コロナ集中治療の視点~プローンポジション(腹臥位)は世界を救えるのか~

みなさんこんにちは
人道支援家のtaichirosatoです。

今日はかなり集中治療の医療手技に特化した内容になります。
医療者でない方、かなりわかりにくいと思いますが、興味のある方はこんな世界もあるのかと読んでいただければと思います。

プローンポジション(腹臥位)は世界を救えるのか?

腹臥位。それは、うつ伏せのこと。
うつ伏せが、世界を救う?
当然なんのことか分からないだろう。

自分が経験した様々な国での集中治療室。
そして新型コロナウィルスのアウトブレイク。

各々集中治療といえど、出来ることや持っている医療機材、スタッフのレベルや患者が抱える状況は様々で一概に比べることは出来ない。

しかし、日本で働いている集中治療の医療者をこういった場所にもし連れていったのであれば、何かしら私たちが信じている正解に近づけようとあれやこれやとアプローチを始めるのではないかと想像する。

日本の医療、先進国の医療が正解で、その他の国の医療が間違っている訳では無い。医療、科学は日々進歩していて、根拠に基づいた現時点では限りなくベストに近い選択をしていくことを私たち医療者は求められ、追求し、日々アップデートしているわけだ。

色々な国で活動していて思うことは、医療者教育のシステムや社会的な規範、宗教、経済状況、物流、本当に色んな要素が影響しあってその国の医療が成り立っているということ。

それぞれの地で自分たち海外からの医療者に出来る事は、その時点での患者にとって、そこで働く医療者にとっての根拠に基づいた選択肢を示すことと、ベストだと思われる選択を彼らと共に見つけていくことなのかもしれない。

機材や薬があっても管理ができる人がいなければ患者の命は救えない。
素晴らしい人材がそろっていてもモノや薬がなければ治療には限界がある。

そもそも患者の肺では、何が起こっているのか。

人間の体は立位で上手く呼吸をするようにできており、コロナで入院をして横になっている時間が長くなると、特に背中側の肺が悪くなっていく(空気が入りにくくなる、または入らなくなる)傾向にある。

普段感じるのことの無い私たちだが、確実に重力は体に影響を及ぼしていて、
ベットに横になった状態で、肺の前面の部分(胸の表面付近)には空気(軽い気体)がいきやすく、背中側には血液が滞留しやすい(重く液体)。
空気が沢山入っているところに、たくさん血液を流してあげると、肺からたくさんの酸素が血液中はいり、炭酸ガス(二酸化炭素)が排出される効率が良くなるのだが、コロナ肺炎で長い期間横になっていると、背中側の肺に空気が入りにくくなる、もしくは入らなくなり、血液は空気の入らない背中へ、新鮮な空気は血液の少ない前胸部へと行ってしまいアンバランスな状況になってしまう。
これを難しい言葉で、換気血流比不均衡といい、要するにチグハグな状態になってしまうのだ。
この時、患者に何が起こるかと言うと、呼吸をしても酸素が取り込まれにくくなってしまうため息が苦しくなってしまうわけである。

そこで、プローンポジション(腹臥位)である。
患者をうつ伏せにすると何が起こるのか。

背中側の空気の入りにくくなった悪い肺はうつ伏せになると上になり、より空気が効率よく入っていく。
そして、元々たくさん空気の入っていた良い状態の肺は下側になりより多くの血液に触れる。それにより、効率的に酸素と二酸化炭素の交換が行われ、体に必要な酸素が行くようになるわけである。

難しいことを長々説明したが、要するに、
このような状況の患者をうつ伏せにすると酸素化が良くなることがある。
ただうつ伏せにするだけだ。
特別な機械も手技も要らない。
正確に言うと、集中治療の現場でうつ伏せにすることは、ここで説明しきれるほど簡単なことでは無いのだが、それぞれの国で色々な制約がある中での集中治療でこれを使わない手はない。

今の集中治療のプロジェクトでも、プローンポジション(腹臥位)の理解やトレーニングを進め、現場に浸透しつつある。
少しでも多くの場所で集中治療領域での、うつ伏せ寝、の適応や方法を伝え、厳しい状況の患者たちが苦境を乗切るきっかけになればいいなと思いながら日々奮闘中である。

プローンポジションは世界を救えるか?
コロナ世界の今、少なくとも患者の命を救うひとつのオプションとして活躍しているのは、紛れもない事実である。


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また次回お会いしましょう。
Best,
Tai

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