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Region Worksという社名

2014年に創業して約4年半、「●● Works」という幾つかの会社と縁ができ、「何故、後藤さんは『リージョン・ワークスという社名にしたのですか?」と何度か問われた。

都度、適当に答えていたのだが、この社名の背景を文章化することで、私の基本的な考え方を紹介できるように思うので、あらためて整理してみる。

ポートランドの広域統治 = Regional Governance

もう20年以上前、1997年~1998年に米国オレゴン州ポートランドの都市圏政府Metroに勤務した当時、「リージョン」という言葉を日常的に使っていた。都市圏政府= Metropolitan Governmentにおける、3郡23市の成長管理政策の作成チームの一員として、地域骨格計画=Regional Framework Planの草稿を作成、満場議決いただいた。

この計画は、以下の点で、現時点でも最先端のものだと思う:

1. 持続可能性=sustainabilityを担保するため、地理的範囲を自治体ではなく広域=regionとしたこと
2. 事前確定型のマスタープランではなく、地域を経営するツールとして骨格=frameworkと評価=measurementを導入したこと
3. 24市3郡の基礎自治体との協議・調整はもちろん、市街地が一体化しているワシントン州クラーク郡との調整も行ったこと

とりわけ、1. 持続可能性 の担保においては、地理的範囲として基礎自治体では小さ過ぎるが州政府では広過ぎ、広域都市圏こそが合理的だった。そして、社会生活圏、環境生態圏、実態地域経済圏にかかわる様々な事業や活動を包含した民主的な広域統治に、研究ではなく実務で関われた経験は、今でも自分の血肉となっている。

人生は完璧ではない = Life is not perfect

今では日本で賞賛されているポートランドのまちづくり。当時は(おそらく今も)、現場は「順調に課題だらけ」であった。そして、議会上程期限に追われる中で、草稿執筆、統計分析、幾つかの自治体調整を任された自分は、かなりのプレッシャーを感じていた。

政府内で唯一の外国人として言葉の壁に負けないよう、そして成長管理局の職員24人の中で唯一のアジア系(他はアフリカ系黒人が1人)として、少数派(マイノリティ)の視点を反映しようとも頑張った。

そんな自分に、昨年に早世した当時の上司 John Fregonese は、こう暖かい励ましの声をかけ続けてくれた:

"Life is not perfect. You are doing a great job, Taichi. Take it easy!"
人生は完璧ではないさ。君はよくやっているよ。何とかなるさ!

John Fregonese, 1951 - 2018 (photo 1997)

Johnはアルゼンチン人の映画監督と女優の息子として生まれ、ローマとハリウッドで育った、魅力溢れる教養人(教養=色気)。さらには、オレゴン州南部の田舎町Ashlandの都市計画担当者からポートランドに抜擢された苦労人であり、偉大なシティ・マネージャー(政治任用される地域支配人)でもあった。

そんな彼の言葉は、生真面目だが未熟だった自分が、楽観的かつ真剣なプロフェッショナルを目指すきっかけとなった。彼が地域骨格計画の議決を置き土産としてメトロを辞職し、自分の都市計画事務所 Fregonese Associates を創業した時に、追随して事務所の立上げを手伝ったことも、私の会社設立と経営に繋がっている。

先例を積上げた上で社会の仕組みの革新へ

日本では広域統治の制度は整っていない。統計データも限られており、証拠に基づく政策 = evidence-based policy making の実践は容易ではない。

しかし、人生は完璧ではない。

現状に立ち竦むことなく、街区・地区・基礎自治体・都道府県など、完璧では無いが現実的な地理的単位での試行錯誤が各地で行われている。そして、この20年で地域分権は相当に進んだ。テクノロジーの進化も手伝って、多様な事業を連携させて相乗効果を高め、地域統治の革新に繋がる事例も出てきている。

これらを特例で終わらせずに先例として制度化していくには、事例を積上げた上で国の政策にしていく必要がある。

そんな情勢の中、私たちは、地域 = regionを意識した社会の仕組みの革新 = societal innovationを構想しつつ、そこに繋がる小さな一歩を踏み出す仕事 = worksに集中していきたい。

Σ (region x works) → societal innovation


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