見出し画像

アメリカに4ヶ月駐在して学んだ10のこと。

気づけばアメリカに来て4ヶ月、突拍子もなく事業会社への赴任の話をいただいてからは8ヶ月、半年以上が経ってしまった。

「商社という管理会社ではなく、実際にお金を稼いでいる事業会社で働きたい。」と甘々な希望を吐き続けて2年、ひょんなことから1年半ではあるがアメリカ中西部の事業会社に赴任するチャンスを頂いた(運良すぎ笑)。業務は一言で言うと穀物業界における事業開発。規模は小さいが営業、拠点の売却買収、新規案件の調査から拠点の掃除(マジで)までやらせてもらっている。

充実している一方、世界一周をした時とはまた別で、”自分は何でメシを食っているのか”という危機感をとても感じる。「自立した人間になる」という個人的な目標のためにも感じたことは残しておこうと思う。ということで某ヒット記事の真似をしてみた。

①別にアメリカだからすごいとか、無い

「シリコンバレーで働いたことがある」

「アメリカでMBAを取得した。」

「アメリカの事業会社でトレード5年やってた。」

アメリカ、を他の国や地域に置き換えてみてほしい。本質的には同じことをしていても、個人的にはアメリカの方が若干パワーワードな気がしている。正直アメリカへのなんとも言えない屈している感や、漠然としたアメリカへの憧れも実際0ではなかった。
また”アメリカ・駐在”などとググると「成長する意思がないと生きていけない」とか、「アメリカ式の学び方を取り入れた方がいい」とか、アメリカの方が良い国という記事がたくさん出てくる。

シリコンバレー
(元わいのアメリカのイメージ笑)

だが決して「アメリカ"だから"すごい」「アメリカが優れている」わけではない。

(こんな都会に住んでないが)インフラは整っているものの、生活水準は日本の方が圧倒的に高い。後述するが日本におけるサービスや製品はほぼ全て割安なので、職業を得さえすればとても生きいやすいと感じている。人の面でも日本もアメリカも本質は変わらない。考えてる人は考えてるし、考えていない人は永遠に考えない。アメリカ人にも話が長い人はいるし、自己主張しない人もいる。
アメリカだから経済の中心で、自由の国で、意見を言って生活を大切にする文化があって、無駄な忖度もなくて何かすごいヒントがある、というわけではない。当然だが結局その人がどう考え何をしているか、でしかない。
改めて待っていても始まらないし、環境で人が変わるのではなく、自分で変えていくしかないことを実感している。

②職種がはっきりしていて上下関係がない

業務範囲が明確で一人一人が何をすべきか、何が目標かはっきりしている。
裏返しだが「自分の職種は何か」を定義できないとクソの役にも立たない。どんなアウトプットが出せるかわからないから、皆コミュニケーションが取れないのだ。(もちろん日本の総合職という概念は理解してもらえない笑)

毎日突きつけられる

部長だから”偉い”、年齢が上だから”偉い”という日本の文化も一切存在しない。加えて日本のような「年上だから」「年次が」という無駄な気遣いは一切ない。もちろん昇進のために社長と仲良くしておく、などは人間社会なので存在する。が、日本のように極端ではない。

他方、学生時代にしっかり勉強して、インターンで経験も積んでいないとそもそも職にありつけないのだろうと思う。新卒スタート時点で仕上がりが違いすぎるのだ。実力があるからこその職種定義と効率化、無駄な忖度のない職場になっている気がする。(日本が世界で勝てない理由はここにある気がする。)

③度を超えた仕事をしない

業務が明確な分、過度な責任感?というのだろうか、「これもやっといた方が良いかな」がない。

身近なところではカフェの回転率も悪い笑。「私たちのキャパこれくらいなんだから、それより来るなら待ってよね」という感じ。過度なサービスをする空気は一切なく、サービス残業もなくロジカルでなければ絶対に動いてくれない。本当に仕事をする理由があるのか、を大切にしている気がする。コンサル的に言うと、イシューでないことはしない、という感じだろうか。

「労働力に適切な価値評価がされている」と言える気もする。過度なサービスがない=支払われた対価に見合うサービスを提供している。(この辺りはこの先考えていきたいと思っている。)

ちなみに今日ランチでサーブしてくれたウェイトレスは、「私ランチブレイクとるから、他の人がサーブするね!」と言って颯爽とバックヤードに帰っていった笑。

近くのレストラン。働いている人もフレンドリー。

④物価が適正。日本が安すぎる

た、食べたい。。。

日本はセブンのうどんが400円、牛丼400円とか正直頭おかしい笑。ここオレゴンの外食では、知る限り一番安くてカフェのベーグルで$2.5(約280円)だ。
スーパーのサンドイッチ類も軒並み$5-6するし、美味しくないラーメン屋でも$13、ランチを外で食べようと思ったら$15くらいは覚悟しないといけない。あんなに美味しい牛丼が$3.5て、、、。日本最高(笑)。

日本は割安(そのものに対して実際より安い値段がついている)で、アメリカは適正もしくは割高(そのものに対して実際より高い値段がついている)なのではないかと感じる。最近やっと物価が上がったみたいだが、消費者物価指数も気持ち悪いくらいにずーっと横ばい、なんなら下がっていた。

(エコノミストオンラインより拝借 
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20210824/se1/00m/020/041000c)

物価が上がらないので賃金も上がらない、転職がまだ一般でないため転職してキャリアアップもできず給与も上がらない、、、。日本の閉塞感の根源を見た気がする。

少し脱線するが日本の割安評価は労働市場においても同様のことが起きている気がする。保育士の給料なんか割安の極みだろう。(逆に総合商社なんかは割高評価給与の極みだが笑)この辺りは別の記事で書こうと思う。

⑤経済がダイレクトに消費者につながっている

④の背景な気がするが、例えばガソリン価格も、食品価格も、バイトの給料もどんどん値上がりしている。中古車市場もありえないほど堅調(2018年の中古車に$3,000のプレミアムをつけて売っている)で、小売価格が原料価格の高騰に対し瞬時に反応しているイメージ。

我らがクラフトビールはあまり値段上がらないらしい笑

スーパーが仕入れている品数も減っているし、例えばIKEAも品薄で商品がない。展示コーナーに「Caution」のテープだけ貼って片付けていなかったりする。商社に入ってからは世界の経済状況に少し敏感になったが、それ以上に実生活で経済を意識する場面が増えたと思う。

⑥政治が国民にしっかりと監視されている

⑤の影響からか、国民が政治家に対してしっかり意見を反映させようとするし、その分政府も何か問題が起きた時の対応が早い。

NYは南アフリカでのオミクロン株が見つかって数日で緊急事態とするなど、対応の素早さが目立つ。最近だとバイデン大統領の石油備蓄放出などもそうだろう。政治パフォーマンスの面も強いが、それならそれで「パフォーマンスだ」と報道が出てさらに行動を促す。

対応が遅かったり、支持されるものでなければ、すぐに政権が変わるため政治家も緊張感を持って臨んでいる気がする。

⑦異様にホームレスが多い&強そう

コロナの影響で失業者が急増したことが背景だが、異様にホームレスが多い。人数もさることながら、オフィス街をホームレスが闊歩している。日本で例えるなら丸ビルの前、表参道に野営テントが並んでいたり、Weed吸いまくってるやばい奴が歩いているようなイメージ。カオスすぎる笑

徐々に我がアパートに向け北上を続けるテントたち、、、笑

他方高級ピックアップが街を駆け抜け、日曜の朝からテラス席で優雅な朝食を食べている人もいる。日本よりも格差を肌で感じる。
が、面白いのはここからで、中にはイキイキとしているホームレスがいる。iPhoneで動画を見たり、大きなスピーカーで音楽を流したり、ガタイが良かったり、あなた家ないんじゃないの...?笑、という感じだ。彼らは本当に謎である。

⑧フレンドリーで、いわゆる"多様"

日本では考えられないくらい適度にフレンドリーだ(インド並みにフレンドリーだと若干疲れるので適度と書いた笑)。
レストラン、クラフトビール屋、カフェ、オフィス、どこでも相手の意思を聞く空気があるし話も弾む。どのお店も「お客さんと店員」を超えて仲がいい。道端で目が合えば、"How's it going?"と会話が始まる。

近所のビール屋。いくたびに知り合いが増える笑。

この空気感は多様な国だからだろうか。少し見渡すだけで(あえて分けて言うなら)アジア系、アフリカ系、中東系、ヨーロッパ系、ラテンアメリカ系…などなどいろーんなひとがいる。正直”アメリカ人”を定義できない。

バックパックの経験上、入国後しばらくすると「だいたいこんな見た目の人」が大半を占めるのだがそんなことがなかった。どんどん移民を受け入れて国が大きくなってきたことを感じさせる。
ちなみに州によっても考え方や法律が異なるため、内陸に行くとアジア系は減っていくが、それでもフレンドリーなのは変わらない。

ちなみに同性カップルも普通に歩いてるし、そういう意味でも非常に過ごしやすい。(仲のいい同性カップルは、日本で籍は入れていないがこちらではもちろん入れている、し普通。いつまで認められないのか、、、。)
青年の船の時は各々国のアイデンティティがあった上での多様さだったのでこれはこれで新鮮。

⑨駐在は異文化の中とはいえ日本もある

多様さの裏返しなのか、純ジャパにとっては日本人同士の方がコミュニケーションが取りやすく、小日本がある。例えばいわゆる日系駐在員の日本人は(自分含め)、日本人とアメリカ人で会話する時の態度が異なる。アメリカ人に対してはフランクなのに、日本人だとわかると、敬語や上下関係を意識したコミュニケーションになってしまう。

無意識に敬語を使うほどに、良くも悪くも日本文化が自分に刷り込まれているんだなあということを感じる。

余談だが、どこにも属さずに自分でアメリカまで来て働いている人ももちろんいる。ジムで仲良くなった日本人のクリエイターの方は、現地のパートナーと結婚してこちらで仕事を取って生活している。「〇〇会(日系大手駐在員のコミュニティ)なんてあるんだ、へー(笑)」という感じだ。たくましすぎる、かっこいい。

⑩積み重なった伝統に縛られない(そもそもない?)

以前オレゴンシンフォニーのオーケストラコンサートがあった。川沿いの公園だったのだが、ウィーンやオデッサ、ワルシャワで触れたものと同じはずなのに、とてつもない違和感を感じた。

川沿いの公園がライブ会場笑

生活していて既視感が多かったが、"アメリカの伝統"みたいなものがない気がする。他の国で見てきたものが上手いこと組み合わさっているからこそ、全体的に既視感があるのだろうか。
だからこそ新しく作っていく。自分の価値や意見を考える。家族や目の前にいる人たちを大切にする。伝統に縛られない分新たな文化、考えが受け入れられ新しいビジネスが生まれていくのだなと感じた。(伝統を否定しているわけではない。)

ちなみに、来年は数ヶ月オフィスを離れ、実際の現場でのオペレーションに入れてもらう予定です。ちなみにめちゃくちゃど田舎笑
そういえば同期がアメリカに赴任することになり話してて思ったんだが、ビザ取得の流れ、車の買い方、保険のかけ方など記事にしたら需要あるかな?

本当になんもない。世界の食糧庫(笑)

というわけでアディオス!

ありがとうございます!いただいたお金は、書籍代に全額投資するつもりです!