南インド「マンナラーサラ・ナーガラージャ寺院」
「サー、寺院は17:30にはクローズするんですよ」
前日のプージャの送り迎えから、ずっと運転を担当してくれているドライバーさんが、少し困ったような顔で話しかけてきます。
「だってツアーデスクの人は間に合いますって、言ったじゃない」
前回訪れた、南インド・ケララ州のコーチン市内から車で1時間ほどのところにある「マンナラーサラ・ナーガラージャ寺院」。
今回も予定は詰まっていましたが、どうしても再度訪れたくて、この日の朝、ホテルのツアーデスクに確認をして、夕方16時のスケジュールで車を用意してくれたのですが、
ドライバーさんいわく、現地に到着する頃には寺院はもう閉まっているとのこと。
加えて、最近は途中の鉄道駅の周辺で、学校や勤務先からの帰宅ラッシュで相当混雑するらしく、夕方の時間に寺院に向かうと1時間半以上はかかると。
確かに、前日にツアーデスクで問い合わせをした折、「夕方は17:30に寺院は閉まるので、寺院訪問は午前中しか行えない」と言われたやり取りが思い返されます。
「まあ、寺院が閉まっていても、周辺のお土産屋さんでも立ち寄れたらいいじゃない」
と相方がフォローを入れますが、
「マダム、テンプルがクローズしたら、スーベニア・ショップもクローズします」
いっそう、申し訳なさそうにドライバーさん。
「じゃあ、なんで行くのっ!?」
このやり取り、車が走り始めて30分以上経ったところで行われた会話にて、引き返すにしても既に相当距離を走っています。
今更戻るのか、それとも閉まっていても寺院を訪れるのか。
「これが初めてのインドの洗礼かも」と苦笑いしつつ、
せっかくここまで来たのだから閉まっていても現地を訪れてみようと、とにかく寺院のある「ハリパッド」の街に向かうことに。
途中、ドライバーさんの説明通り、大変な渋滞に巻き込まれ、結局到着までに2時間以上かかり、現地に着いたのは18:00過ぎ。
「こりゃ・・・入れませんね」
ドライバーさんも諦めて、もう寺院に向かわず、まだ開いているお土産屋さんでもないかしらと、周囲を見回しはじめたとき、
「サー、開いてますっ!!開いてますっ!!」
と、助手席にいたガイドさんが、歓喜の声。
これは・・・クローズ時間が17:30ではなかったのか?
それともツーリストが入れる時間が17:30だったのか?
とにかくも、ガイドさん、慌てて車から降り、入口近くの寺院の警備員さんに、わざわざ遠い日本から来たんだと説明すると、警備員さんも快く入口まで案内してくれます。
いや、警備員さん、心から感謝です(笑)
そして、途中ブツブツも言いましたが(苦笑)、ドライバーさんにもガイドさんにも感謝感謝(笑)
・ ・ ・ ・
「マンナラーサラ・ナーガラージャ寺院」
ナーガラージャと言われるだけに、こちらは蛇/ナーガラージャを信仰されているヒンドゥー寺院です。
ジャングルの中に佇む寺院の境内には、ナーガラージャを象徴する蛇が住む神聖な森が広がり、寺院の敷地に一歩足を踏み入れると、独特な空気が漂います。
また、この寺院はヒンドゥー寺院では珍しく、女性のヒンドゥー司祭/アンマがいらっしゃることでも有名です。
(Mannarasala Amma)
http://www.mannarasala.org/dynamic.php?page=mannarasalaAmma
以前、「世界ふしき発見」で紹介された折、こちらの寺院とアンマのお姿も放映されていて、
「いつかアンマに会えたらいいね~(笑)」
「まあ、スリランカ・インドにきてるのに、いつもこんな弾丸ツアーやってたら無理だろうけどね(汗)」
さきほどまでの雰囲気は一転、こんな軽口が出るまでに和みながら、夕闇が迫り、かえって参拝者も少なくなった寺院の境内をゆっくりと歩きながら参詣させていただくことができました。
・ ・ ・ ・
と、寺院の裏手まで歩いたところで、建物の前に何人かのインド人が集まっています。
何があるのかと、ガイドさんが走っていってみてくると、
「サー、アナタなんて運がいいんでしょうっ!!」
「アンマに拝謁することができますよっ!!」
どうやら建物は、アンマが信者の方に拝謁される場所らしく、今ちょうど、アンマが出て来られているところだとか。
びっくりしつつも、外国人だから無理なのではと思っていると、建物前にいる寺院の僧侶の方が、私達に近くに来るよう手招きします。
「早くっ!!早くっ!!」
興奮したガイドさんに背中を押されて、謁見の間に入ると、なんと「マンナラーサラ・アンマ」が、目の前にお座りになられています!!
あまりに突然のことで、私も相方もアタマ真っ白。
僧侶の方に促され、アンマの前に進み出ますが、気の利いたご挨拶も思いつかないまま、ただひたすらナマスカーラをさせて頂くことで精一杯(汗)
謁見の間を出た後も、しばらくは嬉しいサプライズに言葉も出ません。。
ガイドさんによれば、このアンマの謁見は18:00前後の短い時間だけ行われたとのこと。
もし、ツアーデスクが、寺院の17:30クローズ(ツーリストだけか?)というのを考慮して、それまでに寺院を出るようなスケジュールを組んでいたら、アンマには会えなかった、と話します。
・ ・ ・ ・
インドを訪れるたび、こうした不思議なタイミングを経験する場面が少なくないように思います。
なるべくニュートラルな立場で情報発信する立場としては、あまりスピリチュアルなことは考えないようにしていますが、今回は何か感じるところも多少あり。
「インドが呼ばなければ、誰もインドに来ることは出来ない」
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マンナラーサラ・ナーガラージャ寺院に到着した時点で、参道の全てのお土産屋さんがクローズしていた中、アンマの謁見の間を出てすぐのところあった境内の購買所だけが開いていて、お土産も無事に購入することができ、小さなバングルを求めました。
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「サーは運がいい!!」とやや興奮気味のガイドさんの提案で、最後にムルガン神(スブラマニア神)の寺院も訪れることに。
車で10分程で寺院に到着すると、
こちらもまさに「アーラティ(炎の礼拝)」のタイミング(笑)
御本尊のムルガン神が祀られている神殿奥に至るまでの全ての通路に、オイルランプの火が灯され、大勢の信者の方々が熱心に祈りを捧げています。
神殿外の行列の後方からそっと眺めていると、突然、横にいたインド人のおじさんが背中を押してきました。
すると、他のおじさん方の何人かも、どんどん背中を押してこられ、気付くと、ひとり神殿入口の正面に。
オイルランプの灯りに照らされて、幻想的な雰囲気の寺院の光景に、あらためて感動を覚えます。
炎の通路の先には、ムルガン神の像も静かに鎮座まします。
「また来年も、ケララを訪れることができますように」
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