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【 国際メジャーの企画開発 ④ 】:その企画の価値、デカくできる

自己啓発ではない。勝つための具体だけを提示する、
【 国際メジャーの企画開発 】の第4回をはじめてみよう。

  第①回では、「企画書というウソ」を解いてみた。
  第②回では、「リスクというチャンス」を確認した。
  第③回では、「集めるお金の正体」を晒してみた。

  第④回では、「価値の最大化」を求めてみよう。

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太一(映画家):アーティスト業界情報局
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日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、
監督がスタジオから発する生存の記
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『 企業が社内でつくる企画書は、ただの紙束 』

多くの企画者はその価値を証明するために、企画書を練り上げてしまう。
このチャネルを通読している皆さんはもう、一般的な企画書が無価値なウソであることを知っている。“一般的な企画書”とは、企業が机上で生み出す紙の束のことだ。多くの場合それはただのファンタジーであり、実現性が低く、再現性がなくそして、「拡張性」が未検証なのである。

企画の創始者たち(ファーストポジション)から社外のパートナーを除外して、自社内だけで生み出す企画は間違いなく、その企業にとっての利を最優先に設計されており、守秘義務を課す開発期間中に、輝きを失っていく。ようやく公表されるころには見せかけだけは立派な、魂の抜けた髪の束になっている。そんなモノを、企画とは呼べない。当然、そこに集う者たちはパートナーの資質は持っていない。そのため、企画のスケールはローンチまでにシュリンクし、当初の価値は減衰していく。拡張性など、ありはしない。ローンチのクライマックスに、「そして未来へ!」などと寒々しく濁すのが定説だ。現実的には、以後の拡張性は初期ロットへの予約注文次第。企画の拡張性は、追い広告費次第なのだ。

『 企画の価値 』

企画には、最初から “価値” が決まっているものだ。
目標値であれ課題であれど、価値のスケールは決まっている。当然だと想った方は、人生をあがった昭和世代の成功者なのかも知れない残念ながらもう、そんな世界は消え失せた。考えてみて欲しい。最初から決まっていた価値が一度でも、そのスケールを超えたことがあるだろうか。わたしは500作品の地上波メジャーCMに参画して400社の大企業と接してきたが、初期想定価値を超えた企画を知らない。企画の価値は完成までに必ず、下がっていた。

では、それは不可逆的な現実なのだろうか。
60年間もの「広告」という呪縛から解き放たれた企業製企画には現在、「プロセス エコノミー」に代表される、新たなマーケットが開かれている。SNSとコンテンツのシェア プラットフォームでは企業も個人も、対等に戦える。現状ではむしろ大手企業に対して、一部の個人が圧勝している状況だ。企業の敗因はシンプル。「広告」への逆風。個人の優位性は、「小回りの即応力」だ。

余談だがしかし、「広告」を不要だと考えるのは実に危険だ。
広告業界出身のわたしが申し上げるのはなかなかの厚顔だが、国際マーケットに精通している立場から、断言させていただく。

この地球上には現在のところ、
“日本広告界を超えるデザイン クオリティー” は、存在していない。
「グラフィック」「動画」どちらにおいても、ライバルはいない。
日本の広告界の天才たちを、あらゆる場面で起用すべきだ。
それが、“世界の最上デザイン” なのだから。


『 価値の拡張性 』

「プロセスエコノミー」とは、
成果物や最終的なアウトプットそのものだけではなく「プロセス」、つまり何かしらを製作、実行する際の過程自体をビジネスにするという概念。成果物やアウトプット自体をビジネスにする「アウトプットエコノミー」に対して、プロダクトの差別化としてプロセス重要になってきた、という考えだとされる。

つまり、企画は作品や製品を完成させるまでの“プロセス”をも発表、または販売し続けることで、当初の想定価値を、拡張することが可能なのだ。

やがては、今まで“商品”だとされてきた作品や製品が無料にし、そこにたどり着くまでの“体験”でマネタイズする、「フリーミアム2.0」に向かうのだろう。それはまだ少しだけ、先の話ではある。映画館での鑑賞が全て無料になり、会場としての映画館が再び、“オンサイト再会”での交流場所になることを夢見ている。そうでなければ、映画館は存続できないだろう。いずれどこかの大手が始めるであろう“映画館サブスクリプション”はどうせ、高額が原因で失敗する。そんなことより、「映画館ゼロ円」を徹底して、プロセスエコノミーに注力して欲しいのだ。

企画とは、
発足し次第全面開示し、
有力なパートナーを集めて、
共に開発を完成させ、
その過程をも公表するエンタメ化で、
本来の価値スケールを拡張し、
「価値の最大化」を求めるアクションである。

あぁ、ところで。
まだ日本に入っていないニュースをお知らせしておこう。

■ 最新国際News:有名人とファンを繋ぐプラットフォーム「cameo」、評価額1,100億円へ。110億円を追加調達。

有名人とファンをつなぐプラットフォームの「cameo」は、グローバルに拡大している。新たに110億円を追加調達し、より大きなB2Bビジネス、ファンクラブなどの新製品を計画している。cameoのCEO スティーヴン ガラニス氏「パンデミックは、社会の不安定なビジネスモデルに更なるストレスをかけました。その結果、著名人や企業の認知緯度に大幅な変化を与え、ファンという存在の在り方に新しい基盤を生みました。世界中の才能が多くのファンと繋がりたがっています。ファンは、尊敬する彼らと、今まで以上のつながりを求めているのです。」同社の新しい投資ラウンドには、Google、Amazon、SoftBankらが参加している。- MARCH 30, 2021 THE Hollywood REPORTER -

『 編集後記:』

世界には、“芸能プロダクション”が無い。スターの誰もが個人事業者であり、ユニオンに属することで“業界”という力と対等に生きる。しかし、日本のスターたちはみな、事務所所属が一般的だ。芸能プロダクションが悪いというのではない、“細分化”が惜しい、という話なのだ。
俳優を筆頭に、日本芸能人たちはとても頑張り屋で、不平不満など聞くこともない。これは事実で、35年間の映像業界人生において、怒鳴り散らすような芸能人とはただの一度も、遭遇したことがない。あぁ、246沿いにあったNOBU-tokyoのBarラウンジで内田裕也さんから人違いで殴られたくらいのものだ。
もう“ファンクラブ”などという、客囲い型の“閉塞ビジネス”は流行らない。ならばこそ事務所、業界の垣根を越えて、スターたちがファンとつながり、ファンは直接スターを支援できる事業モデルを導入して貰いたいものだ。

真っ直ぐな魂をもつ俳優たちとの美しい撮影を想い、映画製作の現場へ帰るとしよう。


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