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“ 業 界 ”って、美しかったかもよ

個人と企業の集合体からなる特異なコミュニティ、“業界”。そこには魑魅魍魎が巣くい、黒いマナーと漂白されたルールが弱者を支配している。
ある日、世界が静止した。業界の未来が、アーティストに託される。

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太一(映画家):アーティスト業界情報局
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日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、
監督がスタジオから発する生存の記
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『 最近のはなし: 』

眠い。まぁ眠い。

幼少期の虚弱体質から体内時計だけカリフォルニア時間なわたしは結果、ショートスリーパーな生活に順応してきた。本質的なことは判らないが、電車のひと駅爆睡で、8時間は生きられる。

はずだった。
それが、このワーク フロム ホームの弊害にやられている。

みなさん立派な社会人なので対面会議と同様、しっかりした圧と身だしなみで対応してくれているのだが、明らかに“快適”が溢れている。家庭の幸福だったり、彼女とのワクワクだったり、スタートアップの不安だったりが、モニターから溢れ出してくる。

わたしは“感情の機微”を扱う系アーティストなので、その“快適”を感じてしまう。すると、まるでアクビがうつったかのように、心地良くなってしまう。まぁ、幸せを別けて頂いて結果、眠くなってしまう。

会議終わりと共に、スタジオの床で動けなくなる。眠る。とび起きてカメラに向かい、閉じて眠る。にも関わらず作業は進み、体調がよく、気分が晴れやかで、仲間たちから溢れ出した快適がうつった生活に、順応している。

共感力が引き起こす心理作用であり科学的には、
アクビがうつる根拠など無いにも関わらず。
なお、“好ましく想わない相手”のアクビはうつらないことも、
イタリア ピサ大学の研究で実証されている。

さて、はじめよう。

『 犯罪者は、正直者 』

企業に属するクリエイターたちから、フリー転身への相談が多い。わたしの答えはシンプルで、「諦めろ」一択だ。理由は、消去法に過ぎない。
企業でキャリアを積んできた業界人はその時点で、フリーの資格が無い。

その人は、企業に依存してキャリアを積んできたわけだ。
会社の看板で積んできたキャリアは、その人の実力ではない。
その看板で仕事を獲ろうと目論んで独立する人は、ズルい。

一般的なキャリア構築だ、という声があるかもしれないが、その通りだ。
一般人は、ズルい。とても利己的で、“見栄という嘘”に罪悪感がない。
わたしもそうだったから、断言できる。一般人は、嘘つきだ。

一方、
業界からも社会からも避けられる、The犯罪者が存在する。
彼らは、損得バランスよりも自身の欲望を優先した利己主義のエリート。
犯罪後に逃げ倒した雑魚は論外としても、現行犯で捕まる奴は、正直者だ。

見栄っ張りなフリーよりわたしは、犯罪者を信じる。
良いか悪いか、そんな話はしない。
どれだけ検証を重ねても、その答えは出せないからだ。

『 業界人と、業界に属する人の違い 』

貴方は、“業界人”だろうか。どこかの業界に属してはいるだろうが、“業界人という意識”があるかどうか、だ。

これは最近ロンドンの映画界で流行っている、便利な問い。
一番多いのが、「業界に属してはいるが、業界人ではない」という返答。
現役戦士と、業界看板で生きた嘘つきを区分する為のプロセスだ。

小さなロンドンの街にはいま、世界屈指の映画プロジェクトが集結している。肌感覚では、ハリウッドの倍。実に、日本の20倍の量、400倍スケールの企画が息づいている事になる。

そんな中では、古き映画産業界のしがらみを引き摺る人々は、邪魔者だ。なにしろ、企画開発から撮影、仕上げ、マーケティング、興業、販売、すべてのプロセスにおいて、旧態依然の業界技術の活用場所がないから、だ。

補足しておくが、“歴戦の老兵”は変わらず、我らが信奉する神である。彼らは業界を駆け抜け、その先で笑む。

では、企業の中には現代に相応しい戦士はいないのだろうか。
むしろ企業の中にこそ、リーダーは存在している。そのスキルは、経済だ。

『 業界を生きるのは、まだ早い 』

業界を形成するのは性質上、作業員ばかりになる。
一方そこには必ず、指揮者がいる。

業界は有象無象と魑魅魍魎で構成されているが、指揮者によって、活かされている。世界が静止した今、指揮者たちもまた、活動を始めている。業界は、滅ぶだろう。

新たな情熱が集結して時代を築くのは、いまからもう少し先のこと。あらたな業界はいずれ、誕生する。業界に頼らず、業界の外で生き、業界の終焉を見届け、業界を結成し、時代を生きる日が来る。今は群れず、走るときだ。

業界を生きるのは、まだ早い。

あぁ、ところで。
まだ日本に入っていないニュースをお知らせしておこう。

■ 最新国際News:メディアは企業の人事部ではない:ハリウッドは悪行を報道される前に対処すべき

“メディアはハリウッドの人事部なのか?” THE Hollywood REPORTERとL.A.TIMESに掲載された記事とコラムが被害者の声を引き出し、激動を生んでいる。ハリウッドには、人事部という組織は従業員ではなく、企業を護るために機能する、という公然の秘密があった。何年にもわたるいじめや嫌がらせに多くの被害が拡大した結果、受賞やキャリア、仕事契約への努力は失われてきた。ハリウッドと企業は薄っぺらい言い訳を駆使して、虐待の文化を永続させてきた歴史がある。常習的なパワハラを告発された超大物映画プロデューサーのスコット ルーディンの悪事が露呈したが、その裏には巨大な50人の悪意が潜んでいる。彼らが、ルーディンやモンスターたちを生み出したのだ。これは、私たちがまだ話し始めたばかりのハリウッド文化である。この いじめ文化を乗り越える力をもつことはハリウッドを生き抜くためには、高校卒業資格と同じ程度の必須条件である。ハリウッドは数十年間にわたりそれを、誇りにすらしてきた。「ハリウッドとは、ビジネスである」として、虐待する者を神と崇め、厳しい現実を無視する習慣があった。ビジネスのために、人間性を奪うことは許されない。今回、ハリウッド激動の数週間で何かが証明されたとすれば、それは、一般業界人は護られていない、という事実である。スコット ルーディンと、彼のような振る舞いをする者は神では無く、不安定なだけのアホである。調査によると、サポートスタッフのコミュニティの77%が、労働環境のせいで不安が増大したと報告し、49%がうつ状態になったと報告している。企業がサポートスタッフを標的としてではなく、貴重な従業員として扱っていれば、これらの割合ははるかに低くなることがわかっている。ハリウッドは、人々が変化していることに気付かねばならない。人々は、声を上げはじめた。 - MAY 12, 2021 THE Hollywood REPORTER -

『 編集後記:』

縦型社会の倒壊と、映画帝国の崩壊。
社会基盤の再編成がはじまっている、という記事だ。

世界が停止したこの状況において人々は、経済社会の脆弱性を目の当たりにしている。ヒーローなど存在せず、企業は従業員を護れない、とも。
企業にとっても同じなわけで、業界は護ってくれず、産業は護ってくれずしかし、時間は待ってくれない。

われわれは自ら、声を上げ、行動し、真の自立に必要な選択ができるようになった。誰かの決定に従うではなく、“真の自己責任”を覚悟している。

そう断言するためにその場で咲くべく、我らが映画製作の現場へ帰るとしよう。では、また明日。

■ 太一(映画家):アーティスト業界情報局 × 日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、 監督がスタジオから発する生存の記