お味噌汁を、一人分。
歳をとると味覚が変わる。僕は大の偏食で、5年くらい前まで魚はまずダメ。薫製や発酵食品の独特のクセも苦手。とある理由から糸を引くとろり系なんてもってのほかだ。徐々に好みは変わってきたけれど、納豆を食べている自分なんて想像もできない。
そんな自分が一番変わったと思うのが、日常的にお味噌汁を摂るようになったことだ。先述の通り、発酵食品のクセが苦手。味噌は、特に麹のプウンと漂ってくるあの匂いがどうも好きになれなかった(香り、と呼ぶにはまだ遠い)。
最初の転機は一人暮らしをした時の初めての冬、自宅で豚汁を食べたくなってみそのパックを近所のダイエーで買ってきた。クックパッド見ながら、みそときなんて無いからお玉でみそをとく。初めて作った豚汁は豚バラの旨味がガツンときいて美味しかったのを覚えているけど、その後しばらくそのみそをどうやって賞味期限のうちに使い切るか苦戦した記憶の方が強い。
自分で味噌料理を作るときは汁物メイン。つくりおきして、数日はそれを食べる生活は、傷みやすい夏には向かない。そんな僕のもとに魔法のような調味料がやってきたのは、去年からスタートした今回の生活からだ。マルコメ・液みそ料亭の味。
大さじいっぱいをお椀に開け、お湯でとけばもうお味噌汁だ。液みそを作る上で出汁でといているためすでに旨味がしっかりついているから、食べたいと思った瞬間にすぐ作れる。冷凍の刻み葱、いりごま、そして岩海苔。パパッと美味しく楽しむための具材も保存が利きやすい。フリーズドライよりもはるかに経済的だ。おかげさまで、毎日とはいかないまでも、お味噌汁を作らない週はたぶんなくなった。
味覚の変化に並行して、手間がかからず一人分を作れるのがおおきいのかもしれない。一人分で済むという発想が、今まで僕はお味噌汁相手に持っていなかった。
肩肘張らなくて作れるおいしいものって、お腹を膨らませる以上に気持ちを楽にしてくれるから、不思議だ。
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