【憧れの眉毛】…小学生

男に生まれたからにはカッコよくなりたいと思っても何も不思議ではない。

7歳離れた兄の影響で、僕は小学生の頃から少しませていた。
当時大流行したドラマ『池袋ウェストゲートパーク』の影響から全身黒ずくめの格好をしたり、ダボダボのネルシャツを着ていた。
友達がBAD BOYやPIKOを着てる時に僕はChampion、Ralph Laurenを身につけ《みんなわかってないな》と思っていた。

そんな格好をしながらきちんとランドセルを背負って近所の子達と集団登校をしていたのだから、逆にダサい気もするが、その時の僕にとって、その服装は最高にカッコよかったのだ。

小学5年生になりさらにカッコよくなりたかった僕は眉毛をいじってみることにした。
自分の顔のどこがウェストゲートパークの住人たちと違うのか考えた結果、眉毛の鋭さが違ったからだ。
右手に毛抜きをセットしひたすら抜いていった。一心不乱に無我夢中で僕は眉毛を抜いた。
両方の眉毛をイメージ通りに抜き終え、僕は初めて鏡を見た。
そう。僕は眉毛を抜いてる間、一度も鏡を見ていなかったのである。
夢中で抜いていたので鏡を見るなんて考えてなかったのだ。
結果、僕の眉毛はガタガタの細い一本線として、ミミズが這ったような波線を描いて生えていた。
雑魚ヤンキー長船くんの誕生である。

母が帰ってきて
「あんた何してんの!?」
と言ってきたが僕は
「うん?」
とシラを切った。
何のことかわからないふりをしておけば母も気にしないだろうと思ったのだ。

「その眉毛だよ。何それ」
作戦は失敗だった。
怒るというよりは呆れていた。バカなことをしても、度を越すと怒られる心配はないのだ。

次の日僕は雑魚ヤンキー眉毛のまま登校した。
周りの友達からの反応は特になかった。が家に帰ると母が
「先生から、たいしくんの眉毛どうしたの?って電話があったよ」
とまた呆れていた。2日連続で呆れていて疲れているみたいだった。
先生も生徒が髪の毛を染めたりして心配することはあっても、変な眉毛にしてきて心配するのは初めてだったと思う。

次の日から眉毛が生えてくるまでの間、母は僕の眉毛を油性マジックで書き足してきた。
僕はカッコよくなりたかっただけなのに、雑魚ヤンキーから太眉おてもやんになってしまった。
悲劇は続いた。眉毛が生えそろわないまま2泊3日の移動教室に行くことになった。
毎朝眉毛を書き込んでくれる母がいないので、僕は大事な卒業アルバムにも雑魚ヤンキーの情けない眉毛で写り込んでしまった。
Championのパーカーのフードをしっかりと被り、少しでもウェストゲートパークのキャラに似せたのだが、眉毛がショボすぎたのでなんの効果もなかった。

わかっていなかったのは僕の方だった。
カッコよくなるためにはどうしたらいいのか未だにわからないけれど、一つはっきりしたことは、心機一転、自分を変える時はそのあとのスケジュールをきちんと確認してからするべきだということだ。

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