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精神科の主治医にフリーランスとして働くことを相談した時の話

うつ病の人が元の職場に復職したり、新たな会社に就職したりする場合は、主治医に相談するのが一般的です。これは、患者が働けるかどうかを医師が医学的な観点から判断するためです。

では、フリーランスとして仕事復帰する場合はどうでしょうか?おそらく、どのような本・ウェブサイトを見ても、フリーランスとして仕事復帰する患者と主治医との連携について知ることはできません。というのも、そうしたメディアは、患者が一般企業に復職・就職することを前提に情報を掲載しているからです。

そこで今回は、フリーランスとして仕事復帰した経験をもとに、主治医に相談した体験談とそれから得られた教訓を紹介します

フリーランスとして働くことを決意するまで

僕は、もともとサラリーマンをしていました。うつ病を発症し、会社を退職したのが5年前です。

退職後は、精神科に通院しつつ自宅で療養していました。療養するなかで少しずつ働く意欲が湧いてきたため、それから徐々に仕事復帰を考えるようになったんです。

ところが、僕は、就職する気持ちにはなれませんでした。理由は、毎日の通勤・労働に耐えられるほど体調が安定していなかったのと、「会社」という複雑な人間関係のなかに入っていくのが恐怖に感じられたからです。

それで、就職を断念し、フリーランスとして働くことにしたんです。

フリーランスとして働くことを主治医に伝える

うつ病になってからの5年間、僕は、ずっと同じ精神科クリニックに通院しています。主治医はクリニックの院長で、60代くらいの女性です。話し方・動き方がゆったりとしており、終始穏やか。基本的に患者の話をひたすら聞くタイプの先生です。

僕は、フリーランスとして働くことを決意してから、そのことを主治医に伝えました。

たぐ:『どうしても就職する気持ちになれないので、インターネットを使って個人で働くことにしました』

主治医:「それは…どんな風に仕事をするんですか?仕事のもらい方というか…」

たぐ:『企業や個人の方がインターネット上で求人を出しているんですね。例えば、ホームページやブログに載せる文章を書いてほしいとか。そういうのに応募して、在宅ワークをしていこうと思うんです。』

主治医:「ホームページとかの。…あぁ…そうですか。ふ~ん…。」

たぐ:『収入になるかはわからないんですが。いまの自分でも働ける方法があるならやってみようかと思って。』

主治医:「そうですね。」

たしか、主治医とのやり取りはこんな感じだったと思います。

僕は、主治医に「個人で働く方法があること」「インターネットを使えば在宅ワークができること」を説明し、医師相手にフリーランスとして働く方法を教授しました。

いままでこのタイプの患者がいなかったからでしょうか?主治医はというと、耳慣れない話にやや動揺しつつ、肯定も否定もせずただただ僕の話を聞いていました。

第三者に話すことで自分の状態を整理できた

正直なところ、主治医に話しても、働くための有益なアドバイスをもらうことはできませんでした。しかしながら、全く無益だったかというとそうでもなかったんです。

収入を得られるかわからないこと、個人で働ける方法にチャレンジしたいことなど。仕事復帰に対する不安や焦りだったり、意欲だったりは、主治医に話すことではじめて現状を客観視できたように感じます。

また、フリーランスとして働き始めてからも診察を通して自分の状態を整理できることが多かったです。例えば、主治医に「集中力が続かず仕事がはかどらない」と打ち明けた時には、自分が仕事で精神的に追い詰められていることに気づけました。また、「在宅ワークだと家事と仕事を両立しなければならないから大変」とぼやいた時には、それだけ自分の体調が回復していることにも気づけました。

主治医を活用して体調をモニタリングする

フリーランスには、体調の悩みや問題を共有できる仕事仲間がいません。また、在宅ワークできる職種を選べば寝る間を惜しまず働くことができます。それから、デスクワークが長くなれば体を動かす機会が少なくなります。このように、働き方の自由度が高い反面、体調を崩す要素がそろっているのもフリーランスの特徴です。

それだけに、主治医というのは、うつ病持ちのフリーランスにとって結構貴重な存在です。ストレスを溜めすぎていないか、仕事を頑張りすぎていないか、体調を崩していないかなど。こういったことは、自分ひとりで考えていても現状を冷静に把握できません。それを正確にできるなら、きっとうつ病になっていないですよね。

体調の相談ができる仕事仲間がいないからこそ、主治医には自分の現状をありのまま話すことが大切です。主治医との会話を通して、自分の状態を定期的にモニタリングしていければ、フリーランスとして働きつつ、体調管理もしっかりしていけるでしょう。

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