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うつ病の人の「仕事復帰」は通過点であり、本当の目標は「体調を崩さず働き続けること」

無収入であれば、誰だって仕事復帰を焦るもの。うつ病の療養中で寛解の見通しが立たないなら、その気持ちはなおさらかもしれません。

“少しでも収入が欲しい”“休んでばかりいては申し訳ない”といった考えがあると、1日でも早く働きに出たくなるものです。となれば、当面の目標は仕事復帰ということになるのでしょうが、、、

僕は、「仕事復帰」を目標とすることに疑問を感じています。

仕事復帰できても再発してしまったら元も子もない

うつ病は、再発する病気です。また、はじめてうつ病になった時と同じような状況に陥った時に再発しやすい、と言われています。

一度うつ病になった人は、同じような状況におちいったときに再発しやすく、また初期症状も同じような形であらわれることが多い

坪井 康次|患者のための最新医学 うつ病

これは、僕の愛読書に書かれている心療内科医の言葉です。要するに、うつ病が回復しても初発時と同じことをくり返せば、再発してしまう可能性が高いのです。

もしも再発して、再び長い療養が必要になってしまうと、無職・無収入に逆戻りで、何のために仕事復帰したのかわかりませんよね。

健常者でさえしんどい職業生活

うつ病の回復途中で仕事復帰するということは、働く上で大きなハンディキャップがあります。

・意欲が湧きにくい
・集中力が続かない
・疲れやすい、疲れが抜けにくい
・ストレスがかかるとひどく落ち込みやすい
など

いずれにしても、症状が残っているのであれば、健常者(または健常な頃)と同じように働くのは結構難しい話です。なぜなら、そもそも仕事や職業生活に強いストレスを感じている健常者が少なくないからです。

厚生労働省は、会社で働く人の仕事や職業生活に関するストレス状況を毎年調査しています(労働安全衛生調査(実態調査))。令和3年の調査結果によれば、会社で働く人(正社員)の57.1%が仕事や職業生活に強いストレスを感じている状況でした。

【就業形態別】強いストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合
(※厚生労働省|令和3年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況に基づく )

もちろん、仕事をする条件や環境により働きやすさ・働きにくさは変わってくるでしょう。ただひとつはっきりしているのは、「現代社会で働くのは病気や障がいがなくてもしんどい」ということです。

当事者の目標は「働く」よりも「働き続ける」こと

健常者でさえしんどいのあれば、うつ病の人にとってはなおさらしんどいはずです。とりあえず仕事復帰できても、すぐに体調を崩して働けなくなってしまうという事態も十分あり得るでしょう。

そうした事情を踏まえて、僕は、当事者にとって「仕事復帰」は通過点であり、本当の目標は「体調を崩さず働き続けること」にあると考えているのです。

例えば、働く日数や時間数を減らしたり、責任が軽い仕事に就いたり。あるいは、対人コミュニケーションが少ない仕事にするなど。仕事の負荷やストレスを減らして、体調を崩しにくくするには、はじめてうつ病になった時と違う働き方を選ぶことが大切です。

もちろん、仕事をセーブすればその分収入が減ってしまいますが、「再発して自宅療養に逆戻り」という事態さえ防げれば収入もゼロにはなりません。それに、徐々に仕事を増やしていくやり方のほうが、療養生活から仕事をする生活へと、自分のライフスタイルをゆっくり移行していきやすいです。

過去と比べず“いまの自分”に合う働き方を

これまでずっと正社員やフルタイムだった人にとっては、「働く」と言えば、そうした働き方のイメージが強いかもしれません。けれども、うつ病になり以前と心身の状況が違っているのなら、それに合わせて働き方も変えていく必要がありますよね。

無理して一時的にまとまったお金を得ようとするよりも、少額でも体調を崩さず働き続けられたほうが、長い目で見た時に収入を得たり、生活を楽しんだりしやすいものです。

まずは体調を崩さないように働き、回復するにつれて、自分の理想とする働き方を目指しギアをあげていければ良いのではないでしょうか?

これから働くことを検討されているのであれば、「いまの自分」に合う働き方を選んでくださいね。

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