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お店がもつ力

今月あたま、10カ月ぶりに、インドから日本に帰国した。
2週間の自宅での自主隔離を経て、外出できるようになり、先週末は、東京の秋葉原にあるE.本店で働いた。

お洋服の生産をする工場がレストランのキッチンだとしたら、お店は、お客様が座ってお料理を楽しむテーブル。商品にとっての晴れ舞台。
この空間では、商品は圧倒的に輝いていてほしいし、ご来店されるお客様には、店内で最高の時間を過ごしていただきたいと思っている。

本当にありがたいことに、長年ずっと、ブランドと会社を応援してくださる、もはや家族のようにさえ感じるお客様がいらっしゃることが、私個人としての気持ちの支えでもあり、誇りでもある。

先週末は、5年以上にわたって、ずっと私たちのことを応援してくださっているご夫婦が、春以降、久しぶりにお店に来てくださった。

私の母親と同じ世代の、そのお客様は、いつも笑顔で会いに来てくださり、私の婚期が遅れているのを心配してくださる(笑)。
明るく朗らかなオーラに、いつも私のほうが元気をいただいてしまうのだ。

新型コロナの影響から、外出をずっと控えていたそうで、「東京に来るのも半年以上ぶりよ、信じられないでしょう~」と言いながら、店内をまわり、ご自身で気になったお洋服、旦那様が奥様にお似合いになりそうだと選ばれたお洋服など、全身コーディネートを何パターンもご試着してくださった。

そして、最後に「これやっぱり気になるな…」と奥様が手に取られたのが、新作のプリーツスカート。今までスカートはご試着されたことがなかったから、店長と私も、お客様の新たな一面が見られるのではないかと、大興奮でご案内して。試着室から出られたときの、奥様のキラキラした少女のような表情ったら!

開発のとき、本生産のときと、工房でもそのスカートは何度も見ていたのに、そのお客様がまとったスカートは、今まで見ていたよりもずっと可愛く、お似合いで。

私は職人ではないけれど、生産にかかわる者として、こうして最終ユーザーのお客様が自分たちの作ったアイテムで笑顔になられている場面に立ち会うと、これまでの苦労がすべて流れて、「大変だったけれどいい思い出」に一瞬で変わる。

これだけファッションアイテムが世の中にあふれて、オンラインで何でも手に入る中で、お店にわざわざ足を運んでくださり、私の人生までを気にかけてくださるお客様がいらっしゃることが、どれだけ幸せなことか。

オンラインでの発信やウェブショップは、これからも改善していく必要はあるけれど、リアル店舗でお客様の笑顔に直接出会うことは、売上だけでない、あたたかい空気感や、明日もまた頑張ろうと思えるパワーにつながる。

そうか、お店はわたしにとってパワースポットなんだ。

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