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マーケティング戦略 #25

今回は、マーケティングについて考えてみたいと思います。マーケティングは知れば知るほど奥が深く、人の心理にも作用するので、とても興味深い領域です。

1.マーケティングとは

P.F ドラッカーは、「マーケティングの理想は、販売を不要にすること」だと言いました。「マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることである。」というのがその趣旨です。

「売り込む」のではなく、「顧客の方から買ってくれる」という感じでしょうか。

出典:「マネジメント」 P.F.ドラッカー

なぜ、「顧客」が対価を払って買ってくれるかというと、商品・サービスに「価値」を感じるからです。したがって、商品・サービスが「顧客」にとって価値あるものであることが大前提になります。

一方で、それだけでは「顧客」は商品・サービスを買ってくれません。それが自分にとって「価値」あるものであることを知っていないといけないですし、必要な時に手に入るものでなければなりません。その状態を作ることがまさにマーケティングの使命です。

言うなれば、マーケティングはビジネスモデル(誰に、何を、どのように+利益モデル)そのものです。経営全体を指すと言っても過言ではないと思います。このような文脈で語られるマーケティングを「戦略的マーケティング」と言ったりすることがあります。

マーケティングの歴史を紐解けば、いろいろな段階を経ていることが分かりますが、現代の主流は、いわゆる「ターゲット・マーケティング」です。ターゲット顧客を具体的に定めて、そのターゲットに対してマーケティング戦略を展開するということです。

そのポイントは、以下の2点です。

ターゲットを定める
競合を意識する

2.マーケティング戦略の立案

マーケティング戦略立案の流れとしては、概ね以下の通りです。僕はそのフレームワークを「STP+4P」と呼んでいます。「S」はセグメンテーション、「T」はターゲッティング、「P」はポジショニングです。「4P」とはマーケティング・ミックスのことで、商品・サービス(Product)、価格(Price)、流通チャネル(Place)、販促(Promotion)の4つを組み合わせて、マーケティング施策を考えることをいいます。

①環境分析
②セグメンテーション(Segmentation)
③ターゲッティング(Targeting)
④ポジショニング(Positioning)
⑤マーケティング・ミックス(4P)

マーケティング戦略立案で特に重要なのが、

ターゲッティング → 顧客は誰か
ポジショニング → どのように魅力的に見せるか(差別化)

です。

なお、環境分析については、以下をご覧ください。

3.セグメンテーション

セグメンテーションとは、市場の中で共通のニーズを持ち、商品・サービスの認識の仕方、価値観、使用方法、購買行動などが似ている同質の顧客集団に細分化することをいいます。このセグメンテーションに用いる変数のことを、セグメンテーション変数といいます。

主なセグメンテーション変数には以下のものがあります。

地理的変数(GeographicVariables)
人口動態変数(DemographicVariables)
心理的変数(PsychographicVariables)
行動変数(BehavioralVariables)

顧客をセグメントした上でそれぞれのニーズの詳細を把握していきますが、その際には、市場における顧客の満たされていないニーズ(KBF、KSF)を考えていくことが大切です。

「ニーズの把握 」がマーケターの最も重要な仕事と言っても良いと思います。「ニーズの把握 」にはいくつか段階があります。カメラを例にすると、以下の通りです。

ウォンツ → カメラをください
顕在ニーズ → 写真を撮りたい
潜在ニーズ → 思い出、証拠、趣味

特に潜在ニーズを捉えることが大事です。それにより、競合が意識されます。潜在ニーズを意識することで、カメラの競合はカメラメーカーだけではないということが認識されます。

ニーズを考える際のヒントとなる有名な言葉があります。セオドア・レビット(Theodore Levitt、元ハーバード・ビジネス・スクール名誉教授)が1969年にその著書「マーケティング発想法」の中で「1/4インチのドリルが100万個売れた」という事象に対して言及したものですが、以下のような内容です。

人は1/4インチの穴を買うのであって、1/4インチのドリルを買うのではない。これこそがマーケティングの視点なのだ。

結局「ニーズの把握」とは、顧客の視点に立って、顧客の課題を考え、顧客の求める価値を訴求していくこと、ということになります。

4.ターゲッティング

ターゲッティングは、セグメントした顧客集団の中から、自社の狙う顧客集団を明確に定めることです。

ターゲッティングのポイントは、3C分析で整理すると分かりやすいです。

市場:規模、成長性
競合:競合の強さ
自社:やれる?やりたい?

また、その際には、6Rのフレームワークを活用するとよいと思います。6Rとは、Realistic scale(有効な規模)、Rate of growth(成長率)、Rival(競合)、Rank(優先順位) 、Reach(到達可能性)、Response(測定可能性)の6つを指すします。

6R(6つの視点)
・規模は十分?(Realistic scale)
・成長性は?(Rate of growth)
・競合状況は?(Rival)
・顧客の優先順位は?(Rank)
・(顧客への)到達は可能か?(Reach)
・(顧客の)反応は測定可能か?(Response)

ターゲット顧客を選定する際には、波及効果も考慮すると今後の展開に活かせます。例えば、以下のような感じです。

シーブリーズの例 → 女子高生世代を取り込み、そのお母さん世代へ波及させていく

5.ポジショニング

ポジショニングとは、ターゲット顧客に自社の商品・サービスがどのように魅力的であるかを認知させることです。◯◯って何?と聞かれて、そのイメージが答えられるものがいいポジショニングです。

ポジショニング成功の4か条は、

(利用シーンをイメージして)誰に?
訴求する価値は?
分かりやすいか?
競合との違いは?

です。

ポジショニングは、競合との違いを明確にするもので、差別化が目的です。経営戦略の基本は差別化なので、ポジショニングはとても重要な位置づけになります。

ポジショニングを考える際は、縦横にターゲット顧客に訴求する要素を2つの軸に取ったポジショニング・マップで考えることが一般的です。なぜ2つかというと、経験的に人がその商品・サービスについて強く認識できる特徴は2つまでだからと言われています。

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上記の例では横軸に価格を取っていますが、対競合という意味では価格の軸は違いを出しづらく、また、機能、性能という抽象的な軸では顧客が認知しづらいため、できるだけ価格以外の軸で、誰に、どんなシーンで利用されるのかをイメージしてどのような価値を訴求していくかを具体化していくことが大事です。

DMU(ディシジョン・メイキング・ユニット:意識決定者、財布を握ってる人)までイメージしながら差別化できる軸を意識したいものです。

6.マーケティング・ミックス(4P)

マーケティング・ミックス(4P)は、商品・サービス(Product)、価格(Price)、流通チャネル(Place)、販促(Promotion)を整合的に組み合わせて、「売れる仕組み」を作ることです。マーケティング戦略の具体的施策になります。

商品・サービス(Product)

商品・サービス(Product)は、ターゲット顧客のニーズに訴求し、価値を提供するものでなければなりません。

一方で、商品・サービス(Product)は、そのコアとなる「中核ベネフィット」とパッケージなどの「形態」、アフターサービスなどの「付随機能」で構成されています。もちろん、「中核ベネフィット」が顧客価値の最も重要な訴求要素ですが、差別化という意味ではこれらどの要素も対象となります。これらが一体となって、顧客価値を訴求していきます。

そして、商品・サービス(Product)では、プロダクト・ライフサイクル(PLC)を意識することが大事です。

価格(Price)

価格(Price)設定は、利益に直結します。したがって、これはまさに、トップマネジメントの専権事項です。

価格(Price)設定は、以下の3つの視点のバランスで考える必要があります。

コスト志向の価格設定(コスト+必要利益で算出される金額で、その商品・サービス価格の下限値)
顧客価値志向の価格設定(顧客が払っても良いと考える金額で、その商品・サービス価格の上限値)
競争志向の価格設定(競合他社の価格に対抗する金額)

基本的なイメージは、「顧客価値志向>X:設定価格>コスト志向」の範囲で、競争志向の要素を加えて設定していきます。微妙なバランスの中で決定する必要があるので、「価格設定はアートである」とも言われます。

流通チャネル(Place)

流通チャネル(Place)は、自社の商品・サービスを効率よくターゲット顧客にリーチ(届ける)することを考えます。どんなに良い商品・サービスも顧客が欲しい時に届けられなければ、顧客の購買行動には繋がりません。

流通チャネルを考える視点は、3つあります。

顧客に確実にリーチできるか
顧客の購買を効果的に誘起するか
いかにコスト効率よく購買を推進するか

です。

メーカーの商品(製品)を例にすると、消費者の行動プロセス(AIDMA)を踏まえ、物流、商流、情報流の動きについて、チャネルの幅と長さのメリット、デメリットを考えながらチャネルの組み合わせを考えていくことになります。

メーカー → チャネル → 消費者(物流)
メーカー ← チャネル ← 消費者(商流)
メーカー ←→ チャネル ←→ 消費者(情報流)

現代は、リアル店舗とEC(eコマース)の融合(オムニチャネル)もポイントになると思います。

販促(Promotion)

販促(Promotion)は、言い換えると顧客とのコミュニケーションのことです。

ターゲット顧客の特性、商品・サービスの特性、予算、即効性の観点からプロモーション手段の最適な組み合わせを考えます。このことをプロモーション・ミックスといいます。

プロモーション・ミックスは、主に以下の5つの手段の組み合わせになります。

広告
販売促進
人的販売
パブリシティ(ニュースリリースなど)
クチコミ

伊藤園の「おーいお茶」とキリンビバレッジの「生茶」のコミュニケーション戦略の狙い、提供価値、ターゲットの違いはどのようなものでしょうか。少し古いですが、以下にその例を載せておきます。

「おーいお茶」

「生茶」

7.まとめ

マーケティング戦略のポイントをざっくり箇条書きでまとめます。

マーケティングは経営そのもの
顧客は誰か(ターゲット)を明確にすることの重要性。女性、若年層などの漠然たしたものではダメ。その利用シーンまでイメージするくらい具体的に。
ポジショニングを考えることの重要性。差別化。価値の提供。どのように認識させるか。

そして、

常に競合を意識すること

withコロナ、afterコロナのニューノーマルの世界はまた新たなマーケティングの視点が必要になると思います。

基本を押さえて、時代の変化に対応していきたいものです。

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