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「パーパス経営」と「ビジョナリー・カンパニー」 #69

昨今、企業経営における「パーパス(=私たち企業は何をするために存在しているのか)」の重要性が指摘されています。

21世紀に入り多くの先進国が成熟社会となり、物やサービスが溢れ、一部の人々を除き、多くの人に物やサービスが行き渡るようになりました。人々の生活水準が上がり、物やサービスの購入目的も変化する中で、新たな生活様式や価値観への対応が多くの企業に求められるようになっています。

一方で、IT等の技術革新の進展は、変化の激しい時代をもたらしており、現代は「VUCA」の時代とも言われています。

「VUCA」とは、社会あるいはビジネスにおいて、不確実性が高く将来の予測が困難な状況であることを示す造語です。

VUCAは、

「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」

の頭文字を並べたものです。

そして、このような時代背景が、サステナブルな経営を志向する企業に、改めて自らの「存在意義」を問い直す必要性を求めています。

さて、このパーパスを重視する経営は「パーパス経営」と言われます。

「パーパス経営」とは、

自分たちの組織は何をするために存在しているのか。その組織の「価値観」と「社会的意義」を明確にし、それをすべての企業活動の軸とする経営手法

と定義されています(「パーパス経営」名和高司著)。

ところで、四半世紀前の本ですが、今やビジネス書の古典的名著ともいえる「ビジョナリー・カンパニー〜時代を超える生存の法則〜」(ジェームズ・C・コリンズ/ジェリー・I・ボラス著)という本があります。

この本では、様々な企業分析から、「ビジョナリー・カンパニー(時代を超えて繁栄している業界で卓越した企業)」の特徴を導き出していますが、そのエッセンスは、次の3点に集約できます。

①基本理念(基本的価値観+目的)が明示的であり、それを何より大切にしている
②基本理念に沿った基本的なプロセス、基礎になるダイナミクスが組織に深く根強いている(「時を告げる」ことよりも、「時計を作る」ことを重視している)
③基本理念を維持しながら、進歩を促している(基本理念は大事に維持し、基本理念を表す具体的行動はいつでも変更し、発展させている)

そして、「進歩」を促すには、

2つの相反する考え方を同時に受け入れながら、それぞれの機能を発揮させる能力(相反するAとBの両方を手に入れる方法を見つけ出す能力)

が求められるとしています。

「パーパス経営」の定義と「ビジョナリー・カンパニー」の特徴を見比べると、企業の持続的成長にとって大切な普遍的共通点が見えてきます。

それは、「パーパス経営」でいう『組織の「価値観」と「社会的意義」』であり、「ビジョナリー・カンパニー」でいう『基本理念(基本的価値観+目的)』です。

この両者は表現は違えど、本質的には同じことを指していると思います。その企業の持つ「価値観」であり、その企業の「存在意義」です。

つまり、昨今の「パーパス経営」は、決して新しい概念ではなく、「ビジョナリー・カンパニー」であるための重要な要素としてこれまで指摘されてきたことの「再確認」だと言えるのだと思います。

「ビジョナリー・カンパニー」の一丁目一番地である『基本理念(基本的価値観+目的)』は、現代の「VUCA」の時代にも通じる、まさに

"時代を超える"


ものなのです。

ちなみに、「ビジョナリー・カンパニー」の「進歩を促すための能力」は、「イノベーション力」と言い換えることもできると思います。

「基本理念」と「イノベーション」はいつの時代も企業の繁栄に欠くことのできないものなのです。


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