見出し画像

Jリーグマッチレビュー⑩J1第7節 FC東京vs神戸【新生東京のポジショナルプレーを堪能せよ】

さて、本日は味の素スタジアムでのJ1第7節、FC東京vsヴィッセル神戸のマッチレビュー書いていきます。
友人に東京サポーターが多いこともあり割とFC東京も見に行く機会が多いが、今年はこれが初観戦。アルベル監督が就任し、「ポジショナルプレー」という新たなスタイルに挑むFC東京。今のところは短期間で割とフィットは早いかな、という感じがしている。
一方の神戸はまさかの大不振。三浦淳寛監督が交代してリュイス監督になって2試合目となる。そろそろリーグ戦での勝利がほしいところ。
今節から100%収容になった味の素スタジアム。平日の夜からどんな熱狂が届けられるのか。

写真では伝わりにくいが、平日にも関わらず、13000人越えの味スタ
毎年進化を続けるFC東京の選手紹介映像。今年は映像を撮る為だけの小屋を作ってやったとか
2020年2月のゼロックス以来の2度目のイニエスタ

今日の私の観戦ユニフォーム

2021年 3rdユニフォーム(④渡辺剛)

今回のユニフォームは昨シーズンのFC東京史上初の3rdユニフォーム。50年以上にわたって日本で最も高い建造物であった東京タワー、そして現在最も高い建造物である東京スカイツリーからインスピレーションを得たデザイン。夏の夜をイメージしたブラックのカラーリングに、ライトアップされた東京タワーや東京スカイツリーを彷彿とさせる大胆なグラフィックを中央に配し、クラブカラーの青と赤が、クラシックなデザインにモダンなひねりを加えている。
昨シーズンのアウェイの神戸戦ではこのユニフォームで勝利。その縁起をかついでホームですがこのユニフォームで挑む。

両チームのメンバーと見どころ

FC東京

予想フォーメーションは4-3-3。
変更点は最終ラインで前節は右SBだった長友佑都が左へ回り、右には渡邊凌磨が。中盤の3枚の顔ぶれは前節退場で今節は欠場となる松木玖生に替えて東慶悟が入った。3トップは右の位置に紺野和也に替えて永井謙佑が開幕戦以来のスタメン。アダイウトンとの両翼のスピードは抜群だ。
ベンチ入りメンバーには松木の出場停止によって高萩洋次郎が入った以外は、前節のベンチ入りメンバーもしくはスタメンだった選手のターンオーバーとなった。

前節、昨シーズン8-0と屈辱の大敗を喫した因縁の日産スタジアムで迎えた横浜FM戦は、先制されるものの4分後に安部柊斗が決めて追いつく。しかし後半開始早々に勝ち越されると、後半30分には松木が2枚目の🟨で退場。判定にも見放され悔しい敗戦となった。
今季初の平日のナイターのリーグ戦で不振の神戸戦で連敗だけは避けたいところ。

注目選手は永井謙佑。開幕戦以来のスタメンで持ち味のスピードと献身性が攻守に発揮されるか。そして今季初ゴールにも期待がかかる。守備に不安のある神戸には脅威になりそうだ。

ヴィッセル神戸

予想フォーメーションは4-2-3-1。
前節との変更点はGKが飯倉大樹に替えて前川黛也が4節以来の先発復帰。最終ラインは左SBが小林友希に替えて、前節は右SBだった酒井高徳が入り、右SBには山川哲史が入り、強力なFC東京の両翼に守備に定評がある二人で挑む。中盤の顔ぶれは2列目のボージャン・クルキッチが左サイドから右に周り、左サイドには汰木康也が入った。
リザーブのメンバーは中坂勇哉とリンコンが外れ、扇原貴宏と電撃加入の橋本拳人がベンチ入り。FWは一人もベンチ入りしていない。

前節の関西対決となり、リュイス監督の初陣となった京都戦は初瀬亮のJ1リーグ初ゴールで先制するものの、6分後に同点、さらにその3分後に逆転ゴールを許す展開。ATにも駄目を押され、未だ勝ちなし継続中と苦しい戦いが続いている。特にリーグ最多失点の守備の改善は急務だ。

注目選手はやはり、加入初戦が慣れ親しんだかつてのホーム・味の素スタジアムでの古巣対決となった橋本拳人だろう。様々な思いを抱えたサポーターが見守る前でのプレーとなるが、本来の良さを発揮して救世主となれるのか。

前半

立ち上がりにペースを握ったのは神戸。相変わらずの針の穴を通すようなパスを繰り出すアンドレス・イニエスタを中心に大迫勇也の強さと汰木康也のドリブルなどでもチャンスを作っていく。すると前半11分。大迫が上手く渡邊凌磨をかわして前線へスルーパスを送ると、汰木が抜け出してシュート。これはFC東京の守護神ヤクブ・スウォビィクのファインセーブに阻まれるも、こぼれた浮き玉のボールを長友佑都がクリアミス。そこに詰めていた山口蛍がプッシュし先制点。神戸にとっては勢いのつく、FC東京にとってはもったいない1点目となった。

先制点を取られたFC東京だったが、そこからは慌てずにペースをうまく握ることに成功。一方の神戸は3〜4人のDFラインがうまくブロックを形成し、なんとか耐えていく展開。お互いがやろうとしていることははっきりと見えていた。
しかし決定的なチャンスが多かったのはFC東京。前半27分には東慶悟のスルーパスに抜け出したディエゴ・オリヴェイラがゴール正面から左足でコントロールショットを狙うも枠外へ。38分には最終ラインの木本恭生が早い縦パスを渡邊凌磨へ。渡邊は早いタイミングで低めのアーリークロスを入れるとゴール前で永井謙佑がダイレクトで合わせるも、神戸GK前川黛也がファインセーブ。FC東京は攻め続けながらも前半のうちには追いつけず。それでも攻守はしっかりと連動していた。
神戸の攻撃は徐々に立ち上がりのようなパスが渡らなくなっていき、大迫などもFC東京の最終ラインに封じられていく。
前半は0-1、神戸1点リードで折り返す。

後半

後半立ち上がりも流れはFC東京。特に右サイドの渡邊と永井のコンビネーションが強さを増していく。後半4分にはルーズボールをペナルティエリア前で拾った青木拓矢のスルーパスに永井が抜け出し、折り返したところにSBの渡邊が飛び込んでいくも僅かに右。アルベル監督が目指す「ポジショナルプレー」の理想的な形が生まれる。そしてこの流れが完全に伏線であったことが証明される瞬間が訪れた。
その流れから5分後。右サイドでボール持った渡邊が、エリア内のスペースに持ち味のスピードで抜け出した永井にスルーパスを通す。永井は落ち着いて優しい浮き球のクロスを上げると左サイドの大外にフリーで残っていたアダイウトンがスピードを上げて突っ込みヘディングシュート。FC東京が同点に追いつく。

さらにそれから3分後。FC東京はCKのこぼれ球を拾い、長友→安部とつなぎ、CKキッカーでまだ左サイドに残っていた渡邊へ。渡邊はイニエスタ相手に股抜きでドリブル突破を敢行すると、前線の永井へパスを通す。そこから永井のヒールパス→アダイウトン→ディエゴ・オリヴェイラと中央へパスを繋ぐと、CKの上がりで残っていたキャプテン・森重真人がそこにいた。迷わず振り抜いた右足ミドルがゴール左下へ。実に美しいパスワーク。あっという間にFC東京が試合をひっくり返した。
そして神戸はここで、イニエスタに替えて橋本拳人を投入してきた。

それでも押せ押せムードのFC東京は止まらない。FKのクイックリスタートの流れから安部→東→安部→青木→長友と繋ぐと、長友はダイレクトでヒールでフリック。これは神戸DF菊池流帆に当たるも、菊池が焦ってうまく処理できず、かかとに当たってこぼれてしまう。そこに詰めていたディエゴ・オリヴェイラが先ほど外した左足で今度は確実に仕留め、決定的な3点目が生まれた。神戸は12分間で3失点とここまでの悪癖がまたしても顔をのぞかせてしまった。

神戸は反撃のチャンスを前線の大迫を中心に伺うものの、セットプレーでは高さとリーチの長さを活かしたヤクブ・スウォビィクが的確なパンチングで弾き出し、FC東京のカウンターに繋げていく。
FC東京は終了間際に35分に投入された山下敬大が、こちらも途中出場の三田啓貴のクロスに合わせてネットを揺らして移籍後初ゴール、かと思いきやVARの判定の結果、微妙なハンドでノーゴールに。移籍後初ゴールはお預けとなったが、少ない時間でアピールするぶんには十分なプレーであった。
追加点とはならずも、そのまま3-1でFC東京が勝利。平日ながら13.814人を集めたホーム味の素スタジアムで質の高いゲームを見せた。

ざっくり感想

FC東京
決して立ち上がりは良くなかった。初勝利をあげたい神戸の攻めに押されなかなかチャンスを作れなかったが、先制点を奪われてから攻め続けた圧巻の逆転劇だった。
光っていたのは後半の項目でも触れた右サイド。渡邊凌磨が最終ラインから前線に顔を出し、前半はなかなかボールを受けられなかった永井謙佑も後半はスピードとコンビネーションが光りアシストも記録。守備での追い回しも確実に脅威となっていた。
松木を欠いた中盤も、安部柊斗や青木拓矢の豊富な運動量でのボール奪取やパスから再三チャンスが生まれる流れが多数。パスに関しては最終ラインの森重と木本の鋭いパスも素晴らしかった。
「ポジショナルプレー」の浸透度は極めて高く、先制されても動じず、攻守の連動が絶え間なく続いたところに強さを感じさせた。

アダイウトンの同点ゴールの直後。永井がよくサイドを見ていた
森重の逆転ゴール→膝すべりでスタジアムのボルテージは最高潮に。今年見たゴールの中で一番パスの流れが美しいゴールだった
ディエゴ・オリヴェイラが相手のミスの隙を見逃さず3点目。失点に絡んだ長友の汚名返上ともいえる、意表を突くフリックも見事

ヴィッセル神戸
立ち上がりは悪くなかったものの、前半の顔と後半の顔は全くの別物。特に後半の課題である守備の同点→逆転の失点の流れは前節の京都戦と全く同じ経過時間とパターン。これでは苦しい。FC東京の選手のコメントからも、アダイウトンのゴールは右サイド、森重のゴールは中央とぽっかり空いているところを上手くつかれてしまった。
数少ない光明を上げるとすればボランチか。先制ゴールの山口蛍、そして後半から投入された橋本拳人はともに及第点は与えられる。橋本のフィット次第では中盤での狩りどころとしては最高のコンビになり得る。

MOM

渡邊凌磨(FC東京MF)

「ポジショナルプレー」を最も体現し、縦横無尽に顔を出していた渡邊凌磨をMOMに。先制点の起点となった大迫の突破は止められなかったものの、その後は当たり負けせず食らいつき、徐々に右サイドの高い位置へ上がっての突破とクロスで貢献。後半はシュートを放つ場面も増えた。極めつけは森重の勝ち越しゴールに繋がったイニエスタ相手の見事な股抜き突破。点には繋がらずもCKのキッカーも務め、ユーティリティプレーヤーの本領を十二分に発揮した。

「無事でよかった」
晴れて一つになった試合後の味スタの幸せな空気感

勝利の余韻が醒めぬFC東京サポーターのゴール裏に、一人の男が向かおうとしていた。

橋本拳人。FC東京ユース育ちでトップ昇格し、熊本のレンタル移籍も経験しながらのし上がり、石川直宏(現FC東京クラブコミュニケーター)が背負った18番も背負ったボランチ。2019年には2位と躍進したチームでフル代表にも選ばれ、翌年の中断明けにロシアのロストフへとFC東京サポーターの期待を背負い旅立った。ロストフでも欠かせない戦力となり、FC東京時代にはさほどあるわけではなかった得点力も身につけた。

ところが…世間を騒がせているロシアのウクライナ侵攻により、ロシアの国内リーグ、代表チームの実質的なW杯予選除外の制裁など、明らかにサッカーに集中できる環境ではないことは明らかだった。当然、橋本もその一人。国内に帰ってくるか、それとも他リーグに移籍するか。

彼の結論は日本復帰。
しかし、袖を通したユニフォームは慣れ親しんだFC東京のものではなく、神戸のユニフォームだった。

かつて18番というFC東京の中でも特別な番号を背負ったこと、大きく羽ばたいてまたいつかそれを背負ってほしいという願いがあった中での神戸移籍。心中穏やかではないサポーターも少なくないはずだ。私はそこまで怒りとかはないが、そう思うサポーターの気持ちは理解できる。

ただ、彼の気持ちになったとき。
大好きなサッカーを奪われて、すぐにでもサッカーができる環境を用意してくれるチームが、慣れ親しんだ古巣でなくても声をかけてくれればそちらに傾くこと。同じ立場ならいくらFC東京への愛があっても、声をかけたクラブに行かないなんて、簡単には決断できないと思う。

そんななか迎えた、神様のいたずらのような日本復帰初戦の古巣対決のあと。
試合前の選手紹介でも拍手は上がっていたが、改めて橋本がFC東京のゴール裏へ挨拶に向かう。サポーターは声は出せずとも、かつてのチャントの太鼓のリズムで橋本を迎えた。
そして、「無事でよかった!頑張れ拳人!」の横断幕。シンプルだが、一番伝えたいことがこもっていて、とても良かった。
サッカーより大切な命。無事に帰ってきたこと。まずはそれが何よりだろう。他のごちゃごちゃした複雑な気持ちなどいらない。古巣を選ばなかった憎しみなどそんなものはあのスタジアムの温かな空気感には存在しなかった。

彼もきっと複雑なサポーターの声は嫌でも耳に入って来るはずで、ゴール裏に来るのは迷ったはずだ。それでも涙を見せながらやってきてくれたことには感謝したいし、その勇気にはしっかりとした拍手で返すことが何よりの行動だと思った。

余談ではあるが、挨拶に来たときのスパイクの色は青赤だった。他のサポーターの方も触れていたが。
彼はまだ若い。長友や三田のように、いずれ帰ってくること、18番を背負うことを諦めたわけではない。まずは神戸で活躍することが第一だが、また青赤のユニフォームを身にまとう姿を楽しみに待ちたい。

頭を深々と下げる橋本拳人。
見守るドロンパの温かさもいい味出してる

試合結果

FC東京3-1神戸
得点
【FC東京】アダイウトン(後半9分)、森重真人(後半12分)、ディエゴ・オリヴェイラ(後半21分)
【神戸】山口蛍(前半11分)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?