「サンタさんって、お父さんとお母さんなんでしょ?」と言われて、「うっ・・・」となった話。
先日、タイトルそのままの言葉を、8歳の息子から言われた。
不意打ちだった。
どこの家庭にでもよくある一風景だが、まさかこんなに早くそれを言われるとは思っていなかった。返す言葉は一切用意していなかった。
こんな時、世の優秀なお父さんお母さん連中は何と言って乗り切るのだろうか。できることなら教えてほしい。
「うっ」となって、自分が咄嗟に出すことができた最大限の言葉がこれだった。
「サンタさんは信じる子だけに来るんだよ」
ひどい。もっと気のきいた言葉はなかったのか。どんな言葉が正解だったのか。いや、正解はないのか。
「で、その三年生のお兄さんは、何て言ってたの? 」
「お前知らないの? サンタなんていないよ。親がプレゼント買ってるんだよ、って言われた」
「そ、そうなんだ・・・へえ・・・」
「バカにされた」
「へ、へえ。その子、サンタさんからプレゼントもらえなかったんじゃないのかなあ〜。だからサンタさんいないって言ったんじゃないの〜」
「・・・・」
なんとか煙に巻こうとした。本人は半信半疑だが、まだ何となく信じている様子なのはわかる。
今、息子は、神秘と現実の狭間にいるぞ。
おそらく今年が最後になるだろう。息子が目を輝かせてサンタクロースの話をするのは。
そういえば、昨年までサンタさん宛に「◎◎がほしい」と手紙を書いていたが、今年はそれすらしていない。
・・・そうだ、息子はもう8歳なのだ。もう二年生。来年は三年生だ。
子どもの成長はおそろしいほど早い。いまどきの子どもは、どのタイミングで「12月の真実」を知るんだろうか。
自分の時は三年生くらいだったような記憶がある。はっきり覚えてないけれど、両親が枕元に大きなレゴの箱を置いたのを寝ぼけまなこで見た感じだった。
すくすく成長してほしいのと同時に、サンタクロースを夢見るようなピュアな子どものままでいてほしい。
それって、親のエゴだ。
親はみんな、子どもなんかより、ずっとわがままだ。
働いているから、家事をしているから、育てて“あげて”いるから、世話をして“あげて”いるから。多くの親たちは、子どもに対して、都合のいいことを言う。わがままであっても許されると思っている。
そもそも、子どもは、わがままなのが正常だ。人生経験も短いし、心も成熟してないし、自分をコントロールする力にも乏しい。世界が現実が自分の思い通りにならないつらさを一つひとつ学んでいる途中段階が、子どもという段階だ。
子どもが正しいことを言っても、親は親の価値観の中での正しいことを押しつけがちだ。親のシナリオ通りに子どもは大きくならない。極端に言えば、子どもは勝手に成長していく。
(あれ、なんだか、サンタクロースの話から飛躍しすぎてしまったぞ・・)
もうじきクリスマスがやってくる。
今年も、多くの子どもたちがその成長過程で、12月の魔法から解かれてしまうだろう。幸福感と不思議に満ちた夢のような冬イベントが、人間がつくり出した現実的なイベントになる瞬間がやってくる。
うちの息子も例外ではない。それが虚構の世界だと完全に気付くまでもう時間はない。リアクションを考えておかないと。
「おめでとう。大人に一歩近づいたね」と、成長を祝う言い方にするか。
「誰かを喜ばせたいと思う人はみんな、クリスマスにサンタクロースになれるんだよ」なんて、洒落た言い方にするか。
迷いどころだ。
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