見出し画像

一人でも苦にならないおっさんが、フリーランスになってツラかった3つのこと



「人間は何のために生きてんのかな?」

「うーん、何て言うかな。
ほら、ああ、生まれてきてよかったなって
思うことが何べんかあるじゃない、ね。
そのために人間生きてんじゃねえのか」


これは、映画「男はつらいよ 第39作 寅次郎物語」で、甥っ子の満男の問いかけに寅さんが答えるシーンだ。映画「男はつらいよ」を観たことがない人でも、心にグッとこないだろうか。

寅さんのこの言葉、独立して一人でやってる人間の心には特に響くんだ。


糸の切れた凧のように気ままに放浪して生きる寅さんは、ある意味で、私たちフリーランスと似ている。

好きな時に好きな場所で働き、誰かと出会い、そして別れる。それを「自由」とひとことで言うのは簡単なんだけど、寅さんの背中はいつも孤独を背負っているんだよね。映画で毎回描かれるあの後ろ姿に、一人で生きることの意味が詰まっているように思う。

自由には、もれなく孤独・不安・覚悟がセットでついてくる。自由ほど不自由なものはない、っていう言葉もあるよね。だからこそ、その道を選んだ人間は人生について自然とじっくり考えるようになる。一人の時間が長い分、自分との対話時間も長いのだ。フリーランスのような働き方は、時々、人を哲学者にするのかもしれない。

いつも誰かと一緒にいたら、「人は何のために生きるのかな?」なんて答えのない問いに考えを巡らす機会も少ないんじゃないかな。


今、このnoteに興味を持って読んでいるあなたは、きっと「孤独」を大切に抱えて生きている人。そもそもフリーランスに興味がある(すでにフリーランスになっている)時点で、「一人になること」を恐れない人である可能性が高いと思う。

寝る前の布団。湯船。公共交通機関の座席。通い慣れた帰り道。アパートの部屋。一人になれる時間は、会社員時代もあったけれど、フリーランスには基本「一人になれる時間」しかない。

私自身、一人で過ごすのは好きだ。むしろ、一人で過ごす時間は生きる上で必要だと思っている。とはいえ、人と会って話すのは好きだし、前記事にも書いたが、無性に誰かと話したくなる日がたまにある。

独立してからは、自分自身を通して、人間の心の複雑性、そして自分がいかに弱い存在なのかを知ることとなった。

(この記事では「一人」という言葉を強調しているけれど、会社や組織の「トップ」として矢面に立つ経営者も基本的には孤独だと思う)

さて、この記事では、独立して6年目を迎えた私が、フリーランス活動をする中で「つらかったこと」を書き連ねてみようと思う。

ただ、つらいことを並べてはい終わり、とはならないようにする。タイトルは「ツラかった」だが、読後感はさわやかにしたい。自分の書後感(こんな言葉はない)もさわやかにしたい。あさがやしまい。




(1)自分が必要とされないとき


これには2つの意味があって。「仕事依頼の連絡がない状況」と「友人知人からの連絡がない状況」。

「仕事がない」というのは、開店休業状態のことである。

その状況になっているのには明確な理由がある場合が多い。自分の価値(スキル)が社会から必要とされない状況なのか、自分のスキルが足りていないのか、依頼する立場の方々に自分の存在が知られていないのかなど。

そもそも、自分の職業に外注の需要がないとか、職業によってはレッドなオーシャンすぎて先行者が少ないパイを支配しているマーケットの可能性もある。

忙しい時と暇な時の差が激しいのも、フリーランスでよく聞く話。私自身も、バタバタしている時はいいのだけど、予定がぽっかり空いた時期になると、「わしは生きていけるんやろか」などと考え始める。

あ、そうそう。世界的に流行したあの憎きウイルス。あいつは、多くのフリーランスに「仕事がないウイルス」を感染させた。つらい思いをしたフリーランスは、私が知っているだけでもすごく多い。私もその影響でいくつかの仕事が消えた。

クライアントの売上や意向はこちらではコントロールできない。外注業者は容赦なく切り落とされるポジションにある。当然の話ではあるのだが、涙ちょちょぎれまくりの洪水である。

駅前で、パリッとした着こなしで通勤する人たちを見かけると、Tシャツにチョンマゲ頭の自分が情けなくなることがある。置いていかれた感。社会に参加してない感。熱海秘宝館。いろいろな「かん」が頭をよぎるが、そいつらを鼻息で吹き飛ばすのにはもう慣れた。フリーランスとはそういうものである。

「友人知人からの連絡がない」というのは、書くだけで嫌な気分になるが、家でじっと一人で「誰か誘ってくれないかな〜」という心理状況だ。まあでも、待っていても連絡が止まないような超人気者でもない限り、そんな都合よく連絡はこない。

一人で黙々と作業をしてると、しばしば話し相手がほしくなることがある。「こんな仕事があってさ〜大変だったよぉ」「見積ってどれくらいで出してる?」「この業界って未来ないのかなあ?」なんていう、答えのないどうでもいいことを話したくなる。

平日の昼間は会社員の友達は勤め先にいるし、フリーランスの友達は、そういう人恋しい時に限ってみんな忙しくて自分に構う余裕などなかったりするものである。


のりこえ方

フリーランスは「孤独」との戦いなんだけども、見方を変えれば、それって受け身な自分から抜け出せていないっていうパターンも多い。

お前から連絡せんかい、ってことなのである。


これ、誰かが言っていた言葉。

世の中には「待ってる人」と「行く人」がいて、圧倒的に「待っている人」の方が多い。「友達になろうよと言ってくれないかな」「好きですと告白してくれないかな」と。それは、少数派の「行く人」の方が圧倒的に有利で。待ってる人は行く人になろう。

断られてもいいから自分から誘う。新しい出来事は、自分で新しいアクションをしないと起きない。「最近いいことないなあ〜」って言っている人は、だいたい受け身なのである。



(2)慣れないことをするとき


かけ出しのフリーランスが口を揃えて言うのが、「やったことないことだらけ」「知らないことだらけ」である。

請求書を書いたことない。自分のスキルに値段をつけたことない。確定申告したことない。会社以外の名刺を持ったことない。営業をしたことない。

複式簿記って何? カフェ作業のコーヒー代は経費になるの? ふるさと納税って何? イデコって何? 国民年金と厚生年金は何が違うの? 家事按分って何? みんなどうやって仕事とってるの?

会社では部署ごとに役割分担が決まっていて、例えば税金のことなどは経理部がやってくれる。なので、会社員クリエイターなら、自分の職業の業務に集中できる。ああ、なんて恵まれた環境だったのだろう!

何より頭痛の種になるのは、確定申告だ。

私のような「源泉徴収」の意味すらよくわからないままに独立した会計知識ナッシングの者ならば、帳簿に出てくる謎の言葉を理解するだけで3ヶ月以上かかる。借方と貸方という言葉がいまだによくわからない。コピーライター視点からすれば「もっとわかりやすくできるやろ!」である。

なあ、小僧よ。よく覚えておけ。この社会には、難しい謎のカタカナで先行者の特権を強化して初心者への壁を高くする業界もあれば、覚えにくい漢字で初心者を混乱させる業界もあるんだ。せいぜい気をつけるこった。マジすか、先輩、社会って怖いっすね!

オンライン会計ソフトを契約し、わかりやすく解説してくれている書籍を数冊購入して読み漁り、ネットで言葉を検索し、時には税務署に直接電話して質問する。それでもわからないことはリスト化して、税務署が主催している勉強会に参加して講師に質問しまくる。それでもわからないことだらけ。何がわからないのかわからないってのもある。

面倒なら税理士にぜんぶ頼めばいいんだけど、私自身、自分で理解したいんだよね。お金の流れとか、そういうの。せっかく独立したんだから、そういう世の中の仕組みを把握しておきたいっていうか。

確定申告の他にも、勉強しなきゃいけないことは山ほどあって。慣れないことの連続で、本当に疲れる。ふう。


のりこえ方

慣れないことをするのは疲れる。でもね、一つできるようになるたびに、一つ世の中の仕組みが紐解けたってことなんだよね。無駄なんて何一つない。私はそう捉えるようにしている。

捉え方一つで世界は変わる。

初めての面倒なことをやるとき、壁にぶつかる。それは立ち止まっているわけではない。何がわからないかがわかっただけでも進歩。試行錯誤しながら前に進んでいるのだ。それは間違いない。大丈夫。



(3)役所や税務署から封書がきたとき


ああ、またきた〜!
地獄の封書がやってきた〜!
となるのは毎年の春〜初夏である。

国民年金、国民健康保険、住民税の納付書が一気にやってくる。高い。飛び出た目が書類を貫通するくらい高い。息してるだけでも生きてるだけでも金払えってことか(誤解のある表現です)。しかも国民年金は厚生年金よりも将来もらえるお金が少ないときた。わしがいったい何したっていうんや。あんたは鬼や。っていうか、あんたって誰や。

会社員時代は給与から毎月天引きされていたお金。年末調整で還付金が返ってきて喜んでいたあの頃が懐かしい。個人事業主になったら、1年分の金額がまとめて通知される。こんなん、義務の暴力やっ!(個人的感想です)

その前年の収入にもよるが、とにかく「高い!」という印象しかない。フリーランスを何年やっても、封書を開けた時は「たかっ!」というのが第一声である。

やればやるだけ収入が上がる立場ではあるが、フリーランスをやっていると、「えっ、こんなにもらっていいの??」という瞬間も、「10,000円稼ぐだけでこんなに大変なの??」という瞬間もある。そして「えっ、こんなに払わなきゃいけないの??」という瞬間もある。とにかく最後のやつが一番嫌だ。


のりこえ方

歯を食いしばって払う(涙)。

苦虫を食いつぶしたような顔でコンビニ払いすると、店員から怪訝な顔をされるので気を付けよう。

収入が多い年なら、パソコンを買い替えたりして経費をちゃんと使ったり、ふるさと納税したり、小規模企業共済を申し込んだりなど、節税する方法はある。

あと、ウイルスの影響を受けて売上が減った場合、自治体によっては補助金や給付金がある。漏れなくしっかり申請しようね。他にも救済措置はいろいろある。フリーランスという働き方は、情報弱者にはたいへん厳しい世界なのである。



つらいことは他にもまだまだある。フリーランスという職業に付きまとう不安や恐怖や危機感は、思考や行動を真剣にし、グンと成長させてくれる。安心で心穏やかな日々になったら成長は止まるかもしれないよ。



フリーランス(志望者)のあなたに、
愛とエールを。

ではまた!



兄弟記事!
フリーランスになってよかったことをまとめた。


これはかなりの時間をかけて書いた有料記事。
フリーランスの仕事獲得方法をリスト化してまとめてみた。できることなら、フリーランス1年目の迷子の自分に教えてあげたい。



#フリーランス #個人事業主 #独立












読んでもらえるだけで幸せ。スキしてくれたらもっと幸せ。