『洋館』(掌編小説/ホラー)
母からは絶対に近づいてはいけないと言われていた。
突き当たりにある門構えの立派な古い洋館は、かなり前から誰も住んでいる気配はなかった。近所では誰も近寄ろうとはしなかったが、好奇心旺盛な子供たちの興味をひくには十分すぎるほどの存在感があった。
その洋館には、真偽が定かでない様々な噂が飛び交っていた。母は「あそこには一家心中した家族の幽霊が出る」と言い、父は「150歳のお爺さんが住んでいる」と言い、クラスメイトの田中君は「吸血鬼が住んでいる」と言い、小学校の3年2組の先