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夏、伊藤園のウーロン茶

夏が苦手だ。嫌いと言ってもいい。
暑いのが嫌いなのだ。冬でもちょっとした暑さを感じる瞬間が嫌いなのだ。
汗をかくのが嫌いだからだ。
汗をかくのが嫌いなのは風呂に入るのが嫌いだからかも知れない。
その話はまた改めてすることにする。

そんな私にもちゃんと夏の思い出があったりする。
やはり夏と言えば夏休みなのだろう。
熱狂的なたぎり屋ファンの方なら(そんなものあるのかどうか知らないが)ご存知かと思うが、最近夏の歌が充実しつつある。
今まであまり歌詞に季節感を乗せたくなかったのだが、いやそれは今もだが、宙に浮かんでいる言葉の音を掴んでそのまま歌詞にする私のようなスタイルでは全てコントロールできるものではなく。
気がつけばがっつり夏の歌になっていました、という塩梅だ。
『THE夏』というメロディが自分の中にあって、それができた時は夏の歌にするしか方法はないのだ。
リール動画に上げた

たぎり屋 ナヤヨシタカ on Instagram: "Pink Sofa Session 【君の8月の風景が僕にこだまする】 昨日(7/17)できたばかりの新曲です。 たぎり屋ステージではあんまり披露することはないかもw なんか自分にとって夏ってこういうイメージなんだよなぁ 君の8月の風景が僕にこだまする 古いアルバムのような赤茶けた思い出 君の8月の純粋が僕を嘘つきにする 水色のTシャツ汗ばんだあの日の最高気温 君の8月の足音はadidas至上主義 ピンと跳ねた左の毛先は手ぐしでは直らない 水しぶき舞い上がる 子どもたちはしゃぐ声 僕は覚えている 君のかき氷の色 君の8月の横顔は近くて遠かった やっと座れたカウンター席 生ビールは碧かった 伝えたいことがある 昨日まではたしかに もしもまた会えたなら あのね… 君の8月が今年も 電車であの駅に着く 自動販売機のスタメンはほとんど変わっていた 君の8月の背中がアスファルトに溶けてゆく あの日雨が降っていたなら僕ら今も" 11 likes, 0 comments - tagiriya_naya on July 18, 2024: "Pink www.instagram.com
たぎり屋 ナヤヨシタカ on Instagram: "Silver Jet Session 【神社にて】 あんまりやらないけど個人的にめちゃくちゃ好きな曲なんです。(一番かも?) はじめて『夏』を上手に表現できた。 前回上げた新曲【君の8月の風景が僕にこだまする】はコレの弟分って感じ。 間奏の「NaNaNaNa〜」のメロディがすでに僕の中では夏の終わり、9月を表している。 つまり淋しいイメージなんですな、僕にとって夏はw 2022.08.02. 夏が通り過ぎて 僕は取り残されて 甘い夢見るかわり 目眩 ただ目眩 ふらり 目眩 誰も見ない ほろり 夏蝉押し退けて 歌うツクツクボウシ 僕は木の下で ぽろり 蝉がぽろり 絶命 ぽろり 傘差す僕 ほろり やることがあったはずで 変わらぬまま9月が来て 秋雨に怯えるだけ…また いつも通りの僕がいる 今年もどこかの 高校が優勝した 僕はひとり神社で 目眩 ふわり目眩 危ない 目眩 ちょっとポカリ ごくり やり方があったはずで わからぬまま9月が来て 気がつけばまたひとり…だった 逃げ水に立つ君を見てる こんな日は神社で お賽銭、奮発して その分大きく叩いて 目眩 やはり目眩 バチ? ぽろり 僕もぽろり ここで 座り、ちょっと寝たり…ダメ? Summer is over 英語で言えば #gretsth #silverjet #summersong #夏の歌" 15 likes, 0 comments - tagiriya_naya on July 19, 2024: "Silve www.instagram.com

これらがそれに当たるわけだが。

夏は嫌いとはっきり言ったが、夏をテーマにした作品は好きなのだ。
パッと思いつくのが、

これまさに夏の歌。メロディ、質感。
スチャダラパーは大好きだがその中でもこの曲が群を抜いて一番好きだ。
私のイメージする夏。
気だるさと希望がある。それが夏休みのイメージ。
他は

あとは

とか。
あら全部奥田民生が関わっている。
いやでも上記2曲ユニコーンの作品は両方手島いさむ氏の作詞作曲。
天才てっしー。

いや、この辺にすごく私が共感するのは、私が高校生の夏休みくらいに激しくユニコーンにハマっていたから、と言うのもある。
ノスタルジーとは曖昧なもので、ひとによって違う。
私たち世代は、少し前の時代のアルバムを聴いたりして(後追いってヤツ)、その時代に想いを馳せたりしたものだが、今の学生にもあるものなのだろうか?
漫画なら今でも往々にしてありそうだが。
まあ、それもまた別の話。

映画で言えばやはり有名どころは【となりのトトロ】か。
夏まっしぐらな世界観だと思う。
魔物と遭遇するのは夏休み限定であって欲しい。
映画【君がいた夏】も夏休み的なものか。

ハメ外すのも夏休み特有なのだ。
そして夏休みは終わるからまた無性に感傷的であるのだ。

フィッシュマンズの佐藤くんがライブ映像のMCで
「人生は長いぜ〜
夏休みは長いぜ〜」
って叫んでたのもなんか妙に印象的だな。
フィッシュマンズの話もまたここでちゃんとしないと、だな。

そう言えば初期のフィッシュマンズの歌詞もちょっと夏休みっぽいな。

夏をちゃんと充実させられてる人たちはこの感覚はないのかも知れない。
上手に毎年サーフボード持って海へ山へ(山にもサーフボード持っていくのか⁉︎)と繰り出す人たちはもっと夏を充実させた歌を作るのかも知れない。
「あーーーっ!なっつやっすみーっ‼️‼️💢」
となるのだ。
私のようなものにとって夏はもっと気だるいものなのだ。
そして学生たちのもの、だと思う。

このCMがとてつもなく好きなのだ。

おそらくだが夏休みのクラブ活動、あるいは登校日の帰りにこの練習をしたんだと思う。
演劇部である可能性も高いが、どちらかというと9月の文化祭に向けての稽古なのではないだろうか。

私は小学3年生から中学3年まで、学校とは別の場所で野球チームに入って活動して来たので、夏休みの学校の思い出というものが少ない。だから数少ないそういう思い出に愛しさを感じるのだろうか。
確かに高校では初めて学校の野球部に入ったので、そういう思い出が多い。

その中学時代、私は硬式野球チームに籍を置きながら学校では陸上部に所属していた。
少し離れた地域の野球チームに入っていたので(大阪阪南支部というのは野球のメッカで、強い野球チームが多く、また有名なプロ野球選手も多数輩出している。阪南支部で優勝することはほぼほぼ全国大会で優勝したのと同じこと、と言われていた)、土日は野球、平日は陸上部で足腰を鍛える、という策をとったのだ。
とはいえやはり試合に出るにはチームにアピールが必要なので、平日も開放されている『自主練場』と言われる場所に赴くため、中学2年になる頃には陸上部をやめた。
今日の話はその中学1年の頃のもの。
普段どつかれながら(そういう時代だった)練習する野球チームに比べて、学校のクラブ活動はそれはそれは、私にとってはぬるま湯のようなものだった。
私は走り幅跳びを選択していたのだが(走るのが目的で入部したくせに)、先輩より記録が良かったり、野球ではなかなか抜きん出ることは難しい中、陸上部では英雄になれたわけだ。

そんな中、1年生にとっては初めてとなる大会が、陸上競技場で催された。
学校以外の場所で競争するのも初めてであったし、私はこれに出たいと思った。
当然野球をするための陸上部だったので、優先すべきは野球の方だったのだが、その日は試合はなく練習だったこともあり、陸上部の大会に出ることにした。
「買い食い禁止!」「寄り道禁止!」
指定のシューズに指定の鞄。
校則に縛られた中で初めて家と学校以外の往復をした。
夏休みだった。
交通費と弁当を持って、たしか部員同士で駅に待ち合わせて競技場に向かったのだったかな。
同じ体操服に同じ学校指定のナップサック。
夏休みでひとは少なく、しかも毎週の野球から解放された自由さが私の中にはあった。
水筒代わりに1.5ℓのペットボトルを2本持っていた。
これは野球チームの規定でもあった。
陸上部員たちのほとんどは魔法瓶の水筒を持っていたと思うが私はいつものくせでペットボトルだった。
野球チームの規定ではペットボトルにお茶。
冷蔵庫で冷やしても良いが、凍らせて持って来てはいけない、というものだった。量は自由だった。
※ちなみに弁当は白むすびに梅干し、めざししか許されていなかった。

いつもとは違う彩りのある弁当をバッグに詰めて、いつもとは違う道を辿り。
予備のペットボトルがちょうどなくなっていたのだろう、母は未開封の烏龍茶を2本用意してくれていた。
なかなか見かけない黒いパッケージは伊藤園のウーロン茶だった。
競技場は観覧席が設置されており立派な場所だった。
4校から5校くらい集まったのだろうか、私はすんなりと走り幅跳びで優勝し、先輩たちの出る競技を応援するだけだった。
自分の競技を終えた1年生たちは日陰もない観覧席に座りジリジリと肌を焼きながら競技が進むのを観ていた。
ふととなりを見れば女子部員が冷たそうな缶ジュースを飲んでいる。
買い食い禁止なのだ。
買い食いが見つかればクラブは全体停止となり、清掃活動をさせられるルールだった。
それを指摘すると、女子生徒が
「先生が良いって言ってんもん。ここで飲む分には良いって」
今考えればそれはそうだ。炎天下で飲み物もない状態では危険すぎる。ただ陸上部の顧問というのは、ある先輩生徒が学校にお菓子を持ってきたのを見つかって、クラブが止まり清掃活動を強いられた時に、その生徒の横っ面を張ったひとだった。
俄かには信じられなかったが、そういうものなのかと思った。
何名か同じように自動販売機に走る生徒も居たが、私は買わなかった。
黒いパッケージの伊藤園のウーロン茶がまだまだ残っていたからだ。
確かに合計3ℓはそう簡単になくなる量ではなく。
冷たくて美味しそうな缶ジュースを飲む仲間たちを眺めながら、私はぬるさを通り越して熱くなっているウーロン茶を啜った。
競技が終わり、帰り道。
数名の同級生と談笑しながら歩いているとキャプテンの3年生、N氏が缶ジュースを飲んでいた。
それはれっきとした買い食いだった。
つまり校章も付けている状態で街の自販機で買ったジュースを飲んでいた。
N氏はマジメを絵に描いたようなひとだった。
その人の買い食いは信じ難かった。
我々に気づいたキャプテンはバツが悪そうな顔をして、引き攣った笑顔で後輩たちにこう言った。
「お前らも買い食いせえよー」

ただなんてことはない一場面。
私は夏の思い出を考えた時、件の南アルプスの天然水のCMを観た時、決まってこの場面を思い出すのだ。
私にとって夏の思い出はこの日なのだ。
他にもたくさんあると思う。
思い出せばいくらでも出てくるはずだ。
もっと笑った日もあるだろうし、もっと濃い日もあったと思う。

何がそう作用してるのか知れないが、この日の風景をやたら思い出す。この時いた生徒の顔も数名思い出せるが、その人たち誰も憶えてはいないのではないか、と思う。
私にとって陸上競技大会に出場したのはこの日一日だけだった、というのもあるのかも知れない。
野球がメインの私にとって、この日は自分がちょっと借り物の姿だったような気分も味わえたのだ。
普段は使わない駅、初めて見たパッケージのウーロン茶。
それらが妙に私をノスタルジーへといざなう。

南アルプスの天然水のCMの彼女たちにとってもただ何気ない一日だったと思うのだ。
つまり私のイメージする『THE夏』とはそういう日なのかも知れない。

あれ以来伊藤園のウーロン茶、飲んでない気がするなぁ。

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