「便秘」をあなどってはいけない
1. なぜ「便秘」になるのかは意外とはっきりしていない
「便秘」で悩まされた経験のある方は多いかもしれません。
私自身は「便秘」で悩まされた経験は一度もありませんが、
医者として診療の場面にいると「便秘」で悩む患者さん達とよく遭遇します。
「便秘」はなぜか女性に多いと言われています。
その理由ははっきりとはしていません。男性よりも筋肉量が少ないことが腸の動かしにくさと関係しているかもしれませんが、
それにしても女性のデフォルト状態の筋肉が便を送り出すのに不十分だとも思えませんので、いまいち納得しきれません。
食物繊維が足りないからだという声も聞きます。
しかしどちらかと言えば男性の方が食物繊維が少ない食生活を送っていそうなので、これも納得ができません。
2. パーキンソン病から考える「便秘」の本質
「便秘」を考える上でヒントとなるのは、「パーキンソン病の患者には難治の便秘が多い」という事実です。
パーキンソン病というのは神経難病の一種で、ドーパミンという物質が徐々に作らなくなることで身体の動きが固くなり、自由に身体が動かせなくなっていく病気のことです。
なぜドーパミンが作れなくなっていくのかという原因がわかっていないが故に「難病」とされているのですが、
一般的な「便秘」の話に特殊な「難病」の話を持ち出してくるのは、少し変に感じられるかもしれません。
しかし私はそのように「パーキンソン病は特別だ」と捉える視点が、ものごとの本質を見失ってしまう落とし穴だと思っています。
実はパーキンソン病になる人の平均年齢は60代以上が多いのですが、
そのようなドーパミンが問題となる20年も30年も前からある症状に悩まされているという方が多いことがわかっています。
それが「便秘」です。そしてパーキンソン病の患者さんには非常に重度の自律神経の問題があります。
そしてパーキンソン病の患者さん達に接していて感じるのは、ものごとに対して内側でストレスを抱え込んでしまう人が多いです。
なぜわかるかというと、一見して人当たりがよくて誰からも好かれ頼りにされてきた過去のある人であるにも関わらず、
ストレスに関連する症状がいろいろと現れてきているからです。
具体的には悪夢とか動悸とか、手の震えや足のすくみなどです。考えてみればドーパミンもストレスがかかった時にそれに対抗しようと分泌されるストレスホルモンの一種であったりもします。
そう考えると、パーキンソン病の人が最も早く経験する症状の一つである「便秘」に関しても、
ストレスを抱え込み過ぎて自律神経が乱れた結果として起こってきているものだという見方も成り立つのではないでしょうか。
その目線で女性には男性よりストレスがかかっているのかと考えてみますと、そうかもしれないとも思えてきます。
名ばかりの男女平等社会もしかり、毎月来る生理もしかり、そもそも出産というイベントも一人の人間にかかるストレスとしてはとても大きな部類に入るように思います。
3. 「便秘」を解消するためのシンプルな方法
「でも私は食べ物を変えるだけで便秘を治した。ストレスは関係ない。」という方もおられるかもしれません。
ただ、ストレスというのは必ずしも精神的なものばかりではありません。
食べ物の量や質を取り扱うのに、「細胞」が受けるストレスという物理的なものもあるのです。
単純に食べすぎることも、腸に炎症を起こす添加物まみれの食品を食べることも、腸の細胞にとってはストレスです。
ということは、精神的なストレスに対処することも大切ではありますが、
便秘を解消するのに最も効果的かつ誰にでも行うことのできるシンプルな方法が一つあります。
それは「食べないこと」です。
「食べないこと」は消化管にかかる食べ物によるストレスを最小化することができるからです。
「食べない」と栄養が入らないから余計便秘になるのではないかと思われる方もいるかもしれません。
しかし何も一生食べないのではなく、一時的に消化管を休ませてあげるのです。
その休息の間は、蓄えた脂肪などからエネルギーが調達されるので栄養面は大丈夫です。
一方でやせていて切り崩すだけの脂肪がないという人は食べているのに太らないというその状態にまず問題意識を覚えましょう。
それこそがまさに消化管を休ませる必要があるという典型的な症状であるからです。
消化管を休ませれば消化吸収能力が回復します。だから食べないことで一時的にやせたとしても、
再び食べる時にはより効率的に栄養が吸収できるようになっているのでこれまた大丈夫です。
事実、断食道場などでは断食中に宿便という便塊が食べていないのに出てくることがよく知られていますし、
断食でやせたとしても普段の食事に戻せばあっという間に元の体重に戻ります。
少なくとも自主的に断食した人の中で、断食によって減った体重が普段の食事に戻して断食前の体重に戻らなかった人を私は知りません。
もしも「便秘」で苦しんでいる人は、この話を参考に対処してもらえればと思います。
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