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立ち位置が定まった「2020年」

2020年12月30日、あと1日で今年も終わる。

僕がこうやって比較的落ち着いた気持ちで1年を振り返れるのは、今年の2月頃を振り返れば奇跡なのかもしれない。

僕の仕事は外国籍人材を紹介する人材紹介業だ。キャリアは7年目。この業界では老舗と言われるレベルらしい。

人材紹介業は求人を取ってきて、ふさわしい人材を紹介して、採用が決まれば、手数料として年収の30〜35%をもらえる、とてもわかりやすいビジネスモデルだ。人材紹介業はちゃんとやっていれば、クライアント(採用企業)も人材のリストも実績として蓄積されていくため、前年より売上が下がることはあまり考えられにくい。

2019年は3名程度の人員で約50名の紹介実績が出来たので、2020年は倍増の100名。ある程度求人獲得や人材の獲得で勝ちパターンやノウハウも蓄積されていたため、名実ともに他社を追い抜きトップクラスになろうと意気込んでいた矢先に中国でのコロナウィルスだ。

リーマンショックのときに僕はちょうど新卒での就職活動をしていて、いろんな会社が求人を行わなくなりとても苦労した。それが、今回、一事業者の立場で降り掛かってきたのだ。常時100求人程度はあった求人リストは3分の1以下になり、残った求人も採用決定の難易度は上がってきている。リスティング広告やコンテンツ配信で定期的に獲得できていた問い合わせもほぼゼロになった。売上も当然ながら採用を決められない以上はゼロになる。いよいよ窮地に追い込まれた。

3月の僕の仕事のメインはマスクなど物資の輸入スキーム構築と一部コロナ助成金の申請書類作成だった。幸い僕には輸出入の経験があり、当時日本で入手困難だったマスクをベトナムから数万枚、他医療物資を一部日本の事業者に提供することができた。とはいえ、僕の商品市場の知識が不足していたため、生活費の足しにはなった程度で、大きく成功とはいかなかったし、本業をどうにかしないとという現実にすぐに戻された。

コロナになって加速したのは同業他社からの業務提携の問い合わせである。どこも困ってるんだなあと思いながら、時間はあったので1社1社丁寧に話を聞いてみた。人材業で行われてる業務提携とは、求人と求職者のリストを共有して、マッチングが成立したら手数料をシェアする形である。もし双方のレベル感・課題・リソースが合えばという前提であるが、手数料は半分になるものの、理論上売上機会は2倍程度に伸びるのだ。

ただこれが上手くいった試しが非常に少ないのが現実だ。当社も50社程度業務提携をしているが、実際にアクティブに稼働し、実績が残せているのは3社程度である。残りは業務提携書面を交わしているものの、実態はもぬけの殻なのだ。

日本人の人材紹介も当然ながら低迷しているが、日本人対象の求人は一定の月額を支払えば購入できるシステムが存在している。僕が知っている中でも3社ほどのベンダーが存在しているが、彼らが収益性の低い外国人向けにあえてサービス展開することはないだろうし、やりたくても、ノウハウがないので出来ないと感じていた。つまり日本人の人材紹介は人材のリストを持っていて、有料職業紹介の免許を持っていれば、いろんな求人を扱える、つまり不動産業界のようなインフラがある程度出来ている。

ただ、外国人はそうはいかない。求人も求職者は各事業者のもとに点在し、それを統括するシステムもなかった。現状を放置していると、この業界はコロナショックで終焉を迎えることは目に見えていた。

終焉モデルは下記の通りである。

外国人人材紹介には「求人企業」「求職者」「エージェント(紹介会社)」の3者が存在している。求人企業は外国人支援事業者が多すぎるので、外国人社員を採用したい場合は、とりあえず付き合いのあるエージェントに求人を問い合わせする。

ただ、エージェントからすると紹介できる外国人求職者は当然ながら得意・苦手とする領域があり、苦手とする領域の求人を頼まれた場合、紹介できませんと回答をするか、放置するのか、ミスマッチとも思える人材をゴリ押しする。

また、仕事に困っている求職者側からすると、エージェントに登録をするが「今あなたに紹介できる仕事はありません」とか「良い仕事あったら紹介しますね」という対応を受けるケースが多く、負担が大きい。

エージェントも提案できる仕事が少なく頭を悩ませた結果は、手数料を大幅に値下げしてまで求人を獲得しようとする有様だ。

このままだと、求人企業・エージェント・求職者いずれも不幸になり、ミスマッチは頻発、世間からも外国人への評判は悪くなり、外国人への価値を毀損し業界全体が終焉へとつながる。

僕が前職商社を3年で辞めた一番の理由だが、市場に将来性がなく、介在価値がないと思ったからである。今回その二の舞にはなりたくないし、まだ市場が出来てないのに終われるか、そして、なんとかして守っていきたい。そして外国人支援に費やした7年間を否定する結果には終わりたくないと。ただ、たかが5名の会社(内:人材紹介従事者2名)で何ができるんだ?

そこで、発想を変えた。

「みんなでやれば良い」と。

そこで各人材紹介会社が求人と求職者を提供してマッチングしたら売上をシェアするビジネスモデルを考えた。理論上は2社参加すれば、2倍の売上機会、20社参加すれば、20倍の売上機会と、参加するエージェントが増えれば増えるほど、みなの売上機会が増えていくモデルなのだ。実態は業務提携を膨大な組み合わせ数で行っていくモデルである。ただ、先述したとおり、業務提携がうまくいくのは50打数3安打程度の低打率。業務提携の成功・失敗要因を分析し、システムに落とし込んだ、そこで誕生したのは"共創型"外国籍人材スカウト・推薦プラットフォーム"Sunrise"である。 

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8月に本格的に稼働させて、60社以上のエージェントにトライアルをお申し込みいただき、現時点で何とかマッチングが10件以上生まれているので上手くいく絵は描けたのでホッとしている。来年は200社以上のユーザーに利用いただき、ガンガン売上を積み上げられるよう、僕はASEAN人材ハンター改め、エージェントのマネタイザーとしても役割を果たしていきたい。

理想は最強のエージェント軍団と一緒に働ける体制を作ることだ。

求人開拓営業に強いエージェントは、外国人対象求人をガンガン取っていただき、それをSunriseに流通させることで、人材開拓に強いエージェントがその求人に適任となる人材を紹介し、マッチングで発生した売上をシェアする。ただでさえ、1社あたりの人数が少ない業態なのだから、無理なコスト負担を強いてまで、1社でマッチングを完結する体制を作るのではなく、自社の強みや個性を極めることで収益性の高い仕事をしてもらうように期待したい。

その結果、求人企業も求職者も、どのエージェントに依頼しても、エージェントが最低限のスキルセットを持っていれば、扱えるリソースが参加社数分増えるため、価値提供できる可能性がとても高くなる。それによってマッチングの質・量ともに増えた結果、外国籍社員がより活躍し、世間からの評価も上がり、外国籍求人数も増え、エージェントの売上機会もさらに増える、そのような好循環を生むことができる。

たしかに、コロナでライバル企業が廃業した結果、収束後には自ずと勝ち抜いた者だけに残存者利益が残るという発想もできるが、そもそも現在は業界全体が生きるか死ぬかの瀬戸際でないかと思っている。

そんな感じで、2021年の僕の立ち位置は、極めてシンプルで、いかに多くの事業者と仕事をし、そしていかに彼らを儲からせるか。

そして来年の今頃には、外国人人材紹介に全てを突っ込んだ7年間を正解だったと言えるようにし、この業界に善良な心を持って関わってくれている皆様とともに業界の日の出 (Sunrise)を眺められる日が来ることを願っている。

2021年は2020年にも増して、公私ともに変化の大きい1年になるだろうと思う。体調には万全に気をつけて、新たなステージを、みなさんと迎えたい。

田上 竜也 (Tagami Tatsuya)

Sunrise : http://sunrisehr.biz/

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