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第2回: ファンド設立か?本体出資か?メリデメ比較 経営企画担当者のためのCVC運営/ベンチャー投資マニュアル

こんにちは。
T&Aフィナンシャルマネジメントのさいとうです。
本連載は、事業会社でのCVC(Corporate Venture Capital)立ち上げからベンチャー企業投資、そして投資育成にいたるまで豊富な経験を持ち、また、M&Aコンサルタントとしても数多くのM&Aのご支援を通じてファイナンスに関する幅広い経験を有する筆者(さいとう)が、事業会社の経営企画担当者に向けて、CVC運営やベンチャー企業投資について、一連のフローをご説明するものです。

今回はCVCの種類についてお話したと思います。
起業のリリースなどでCVC組成を行ったというものをよくみかけますが、大きく分けてそれには2種類存在すると思われます。
1つは、組合(ファンド)を立ち上げたパターン。
もう1つは、CVCとしての投資枠を設定し、本体から出資するパターンです。

CVCをはじめる目的なども含めて、費用対効果、そしてメリデメを検討する必要があります。
今回はその点について少し深掘りしてゆきたいと思います。

≪T&Aフィナンシャルマネジメント≫
T&Aフィナンシャルマネジメントはベンチャー企業に特化した経営財務支援、クライアント目線に立った中小規模M&Aのご支援をしております。
また、上場企業をはじめとする大企業~中堅企業の経営企画をはじめとする経営管理部門のサポートなど、幅広なご支援をご提供しております。

CVCの種類(ファンド設立と本体出資)

先ほどご説明のとおり、CVC設立の背景には2つのパターンが存在します。

組合(ファンド)設立型
投資事業有限責任組合法(通称:ファンド法)に基づく組合か、民法上の組合かいずれの形態での組合(ファンド)を組成し、事業会社本体とは別口で投資を行う方法で、主体となる事業会社以外の出資者を募ることも可能
事業会社本体出資型
組合(ファンド)の形態はとらず、投資枠として一定額を設定し、事業会社本体から投資を行う方法

組合(ファンド)についてご説明します。

1998年に投資事業有限責任組合法(通称:ファンド法)が施行され、ファンドを運用するVCなどは無限責任組合員(GP)とされ、法的に無限責任を負う一方で、一般の出資者は有限責任組合員(LP)とされ、法的責任は出資額の範囲内となりました。

ファンド法に基づく組合は四半期ごとの時価評価が必要となり、決算においては公認会計士の監査が必要となったりと、本格的であるが故、コストもかかる方法といえます。

また、民法上の任意組合の形態をとるファンドも多く存在します(私が在籍した事業会社のCVCも民法上の任意組合の形態をとっていました)。
民法上の任意組合は時価評価が不要で、かつ監査も不要なため、コストを抑えることができるとともに、機動性も高い方法といえます。

組合の形態をとらない事業会社本体出資型についてご説明します。

事業会社によって様々な形態をとりますが、基本的にはベンチャー投資用の投資枠を設定し、決められた枠内であれば投資委員会などの機関で投資実行できる権利を授権した方法が一般的です(本来であれば30百万円以上の投資は取締役会の決議や報告が必要だが、投資枠(例えば300百万円)の範囲内であれば投資委員会の決議で投資実行が可能など)。

事業会社本体出資型は、組合(ファンド)という形態をとらずに事業会社本体で行う者なので、ファンド設立の手間や運営コストはかかりません。
また、一定金額の投資委員会けつぎによる投資実行の権限が授権されていれば、機動的な投資実行ができるものと考えられます。

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ファンド出資と本体出資のメリデメ比較

ファンド出資と本体出資のメリデメをみてゆきます。

ファンド出資の最大の利点は、本体事業と「お財布」を分け、別会計でCVC運営ができること。
そして、組合という形態をとっているため、ベンチャー育成などと志の近い他の出資者を募ることができることといえます。

本体出資においては業績の良い時はドンドン出資しよう!ということになる一方で、少しでも本体の業績が低迷し、外部投資に消極的な姿勢となったとき、CVC出資も気づいたら下火になっているということもよくある話です。

また、一般的には業務執行をする別会社の設立も行うわけなので、本体と兼務の役職員も少なからず存在しますが、ベンチャー投資を専門とする優秀な人材を本体事業会社の賃金体系とは別に、CVCのために採用することもできることが利点といえます。

加えて、「お財布」が別なので、本体の損益とは別にCVCの実績を会計的に明確に確認することができるので、CVCの存在意義などを把握することが容易といえます。

一方でデメリットですが、それはコストが本体出資に比べてかかってしまうということだと思われます。

正直、民法上の組合であれば設立に係るコストも限定的ですし、ファンド法に基づくような公認会計士監査もありません。
ただ、人的リソースを割くことや、業務執行組合員となる別会社の会計コストなど、少なくとも本体出資に比べては追加的なコストがかかることは否めません。

反対に本体出資のメリデメですが、メリットはファンドと反対に始めることや終了することが機動的であり、本体の意向を反映させやすいCVC運営ができることです。
デメリットは組合の箇所でもご説明のとおり、CVCに係る「本気度」がどうしてもその時々の本体事業の状況により左右されてしまうということかもしれません。

いずれの方法もメリデメはありますが、経営陣がしっかりとCVC運営を会社としておこなうということを決め、しっかりとしたルールや方針を策定してゆけば、どちらの方法でもよいとは思っています。

まとめ

今回はCVCのテクニカルな設立の方法論についてみてきました。

組合出資であっても、本体出資であっても、いずれもCVCとして事業会社の色がついていることは間違いないので、各々の長所短所を踏まえて、出資、そして出資後のシナジー発現、投資先育成を行ってゆく必要があります。

自社にとってどのような形態が望ましいのか?
そして、どれだけのコストをかけてCVC運営をおこなってゆくのか?
ついて、CVC設立を検討する段階から真剣に議論しておく必要があるかと思われます。

【経営企画担当者のためのCVC運営/ベンチャー投資マニュアル】
第1回:なぜ今、CVC/ベンチャー投資なのか?
第2回:ファンド設立か?本体投資か?メリデメ比較
第3回:投資先ベンチャー企業の発掘方法
第4回:インナーサークルに有望ベンチャーが眠っている理由
第5回:投資候補先との出資交渉のポイント
第6回:出資検討のポイント(投資委員会を突破せよ!)
第7回:出資実務のノウハウ
第8回:投資育成フェーズ(本体事業とのシナジー発現を目指して)
第9回:四半期ごとの監査法人との評価損をめぐる「戦い」は季節労働者としての恒例行事!
第10回:IPO志向のベンチャー企業育成
第11回:M&A志向のベンチャー企業育成(自社グループへの取り込みを検討する)
第12回:EXIT!CVC/事業投資担当者の晴れ姿!

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