見出し画像

第3回:M&Aコンサルタントの選定 《連続起業・事業承継・資本提携》「はじめての」M&A講座

こんにちは。
T&Aフィナンシャルマネジメントのさいとうです。
本連載では、連続起業や事業承継、資本提携の際に直面する、自社や事業の「売り」に注目してM&Aの基本的な事項から留意点などを連載形式でお伝えしています。

今回は、M&Aの際のパートナーとなるM&Aコンサルタントの選定についてお話します。

昨今、M&Aの方法は多様化しており、ひと昔前のような、投資銀行やM&Aブティックに依頼するだけではなくなってきています。
M&Aマッチングサイトの出現や、いわゆる「両手」の仲介事業者の台頭など、多様化しているM&Aの進め方についてもご説明したいと思います。

≪T&Aフィナンシャルマネジメント≫
T&Aフィナンシャルマネジメントはベンチャー企業に特化した経営財務支援、クライアント目線に立った中小規模M&Aのご支援をしております。
また、上場企業をはじめとする大企業~中堅企業の経営企画をはじめとする経営管理部門のサポートなど、幅広なご支援をご提供しております。

多様化するM&Aのフロー

以前はM&Aといえば、売買金額が数百億円や数千億円といった、新聞紙上を賑わすような巨大規模案件がメインでした。
しかし、昨今、事業承継ができないことによる廃業を阻止する取り組みが国や地方自治体でも行われるようになり、官民一体で小規模M&Aの推進に取り組んでいます。
結果、昨今の事業承継の文脈や、連続起業家によるエグジットのニーズ出現などで、案件規模が以前と比べて小規模でもM&Aによる売却が可能となってきました。

ここではまず、M&Aを取り巻くプレーヤーの種類についてみてみたいと思います。

まず挙げられるのは伝統的な投資銀行やM&Aブティックと呼ばれる、売り手か買い手のどちらかに雇われ、案件を進めてゆくアドバイザー集団です。
彼らは売り手、買い手のどちらかの利益を最大限とすべく動き、売り手サイドのアドバイザーであれば、買い手候補の選定から案件の進捗管理などを推進します。

着手金やリテーナーフィーと呼ばれる案件の成就に関らず受け取る手数料もありますが、基本的には成功報酬がメインの収入源で、●●億円~●●億円の場合は売却金額の▲▲%の成功報酬、などといった、レーマン方式と呼ばれる段階的な手数料体系を適用します。

伝統的なアドバイザー集団は、売り手、買い手の一方、いわば「片手」の手数料収受を目指すわけなので、基本的には大型の案件を取り扱うことが多いです。
そうしないと、なかなか複数の専門家集団に高い給料を支払い続けることが難しいからです。

代表的なプレーヤーは、ゴールドマンサックスのような外資系投資銀行や、野村證券などの国内証券、そして経営共創基盤フロンティアマネジメントといった国内系のM&Aブティックの存在が挙げられます。

次に、昨今台頭しているのが、日本M&AセンターストライクM&Aキャピタルパートナーズといった、M&Aの仲介事業者です。
彼らは独自のマッチング方法により、売り手と買い手をマッチングさせ、双方にM&Aの推進をアドバイスしながら案件を進めてゆきます。

伝統的なM&Aアドバイザーが「片手」の手数料を収受していたのに対し、仲介事業者は売り手、買い手双方から手数料を収受する「両手」のプレーヤーです。

基本的には売り手は1円でも高く売りたいですし、そして買い手は1円でも安く買いたいので、利益相反の発生が指摘されることもありますが、しかし激増する事業承継案件などの担い手としての彼らの存在感は日増しに増加してきています。
彼らが取り扱う案件は、伝統的な投資銀行などよりも小規模です。
というのも、売り手、買い手双方から「両手」で手数料が収受できるため、1案件から相当程度の「稼ぎ」を得ることができるため、フットワークよく案件をこなしてゆくことを目的としています。

最後に最近目立つのが、M&Aマッチングプラットフォームの存在です。
トランビM&Aクラウドといったマッチングサイトが存在しますが、これらは売り手と買い手をネット上でマッチングさせ、案件進捗に必要なアドバイザーなどを別途紹介するなどしてM&Aの活性化を図っています。

マッチングサイトで取引される案件は小粒なものが多く、投資銀行や仲介事業者にとって採算性が高くないと判断される案件がメインとなっています。
しかし、先ほどもご説明の通り、事業承継案件などの増加により、小粒なM&A案件が増加してきていることから、このようなマッチングサイトの存在感も増してきています。

専門家

M&Aの実行には専門家のアドバイスが必須

基本的にM&Aは日常茶飯事発生する者ではないので、案件を進めるためにはチームを編成し、専門家の力を借りることが一般的です。
ただ、中には年間数件ものM&A案件を取り扱っている事業会社もあり、社内に専門チームを抱えている会社は独自に案件を進めることもあるようですが、一般的には専門家チームを編成します。

基本的にはM&Aアドバイザーを中心に、弁護士、会計士(税理士)のチームが編成され、買い手においては特殊な売り手企業の技術力を判断するために、コンサルタントを起用することもあるようです。
チーム編成に決まりはありませんが、売り手目線で見たときは、最低限、M&Aアドバイザーと弁護士の存在は必須だと思っています。

なぜなら、M&A案件の進捗を主導するM&Aコンサルタントと、諸々の契約書を詰めてゆく目的で、最低限弁護士からのアドバイスは必要だと思います。

先ほどの仲介事業者に仲介を依頼する場合、双方の代理となってしまうことを嫌がる売り手、買い手は各々自分たちサイドに立って考えてくれるアドバイザーを別途雇うこともありますが、各々に支払う手数料もバカにならないので、費用対効果で慎重に検討することが必要です。

案件規模(難易度)に応じたアドバイザー選定が必要

専門家集団はプロ集団なので、多くの専門家を起用して、様々な角度からアドバイスをもらう方が確かに安心です。
ただ、案件規模対比、というより難易度に応じた専門家起用を行わないと、費用対効果でムダなコストが発生してしまうことになります。
あまり考えずにアドバイザーを雇ってしまうと、売却金額の半分くらい手数料として支払わなくてはならない状況にもなり、コストがあまりにかさんでしまう結果となります。

売り手サイドにとっては最低限、M&Aアドバイザーと弁護士が必要と先ほどご説明しましたが、本連載の別の回でご説明するデューデリジェンス対応の際、会計・税務で不利な条件とならないために売り手サイドも会計士や税理士をチームに加えることもあります。

それらを踏まえると、売却金額と専門家その他に支払うコストを天秤にかけ、売り手として許容できる手数料の範囲を事前に考えて案件を進めてゆくことが肝要かと思われます。

ただ、「安かろう、悪かろう」の原則はM&Aにおいても存在し、目に見えない専門家へのコストをケチったばかりに、納得のゆかないM&Aを経験せざるを得ない売り手を多数みてきました。
したがって、自身の納得のゆくフォーメーションを、極度にコスト低減の意識を持たずに柔軟な発想で構築してゆくことが必要と思われます。

専門家②

まとめ

今回は、M&Aを進めるに当たってはアドバイザーの起用が必須であること、そして、専門家のフォーメーションは案件規模(難易度)に応じて柔軟に検討することが必要ということをご説明しました。

なかなか100%納得できるM&A案件の進め方というものは存在しませんが、特に売り手にとっては自身が手塩にかけて育ててきた会社や事業を売却する、一生に一度のイベントとなることも多いことから、可能な限りよい専門家を探し、少しでも納得できる案件をすすめるように努力することが必要といえます。

【≪連続起業・事業承継・資本提携≫「はじめての」M&A講座】
第1回:はじめて自社売却(M&A)を検討するタイミング
第2回:基本的なM&Aの流れ
第3回:M&Aコンサルタントの選定
第4回:M&A売却戦略策定の注意ポイント
第5回:M&AにおけるNDA締結のポイント
第6回:M&Aにおける基本合意締結のポイント
第7回:M&Aにおけるデューデリジェンス(DD)のポイント
第8回:M&Aにおkる最終条件交渉のポイント
第9回:M&Aにおける最終契約締結のポイント
第10回:M&Aにおける自社売却後のポイント

いいなと思ったら応援しよう!