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『梅雨』/少年と少女

「梅雨」

股ぐらの繁みの憂さや梅雨なれば

物言えず膝に喰い込む爪灼くる

マスクして各々俯く暑き部屋

暑気ちらし髪をむしりて精神科

短夜や薬の効きかぬ夜半3時

タバコ取る職員の指待つ涼気

この土に堕ちて生きよと夏嵐

今いくたび耳を塞ぐな荒梅雨に

顔上げて灼くる空見るガラス越し

子らの声刺さりて背なを潰す梅雨

夕立に切り刻まれてペダル漕ぐ

「虹が…」消えぬのだ保護室の中

病だれ鉄格子掴む片かげり

夕焼けて今日また一人いなくなる

投げた石頭蓋に当たりさみだるる

薄衣や刺青のある母の人

ガラス戸に少女の自慰を見る日陰

少年の寂しきものを灼く少女

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